渡辺直美、藤原さくら、ジェーン・スー……なぜいま“女性Podcaster”が注目されるのか?
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コロナ禍を経て需要が高まったとされている音声コンテンツ。そんななか、日本国内で本格的なロックダウンなどが実施され始めた2020年の「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2020」では、「ユーザーの半数近くは1年以内にポッドキャストを聴き始め、急増中」と、音声コンテンツのなかでもPodcastの需要が高まっていることが明らかになっている。そして、その翌年に実施された「PODCAST REPORT IN JAPAN ポッドキャスト国内利用実態調査2021」では、Podcastを配信するプラットフォームとして、『Spotify』が『Apple Podcast』を抜いて1位に。Spotifyは、2019年に日本で初めて、優良なPodcastコンテンツを発掘するための「JAPAN PODCAST AWARDS(ジャパンポッドキャストアワード)」を開催するなど、積極的に国内のPodcast市場を盛り上げている。
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そんな『Spotify』では、多くのPodcastプログラムが配信されているが、なかでも、昨今の女性Podcasterの活躍を後押ししている。2018年より同社が実施する次世代ポッドキャストクリエイター育成プログラム「Sound Up」では、女性にフォーカスを当て、女性独自の考えや価値観にフューチャーした。その盛り上がりもあってか、女性Podcasterは昨今注目を浴び、「JAPAN PODCAST AWARDS」でも数多くのプログラムが受賞している。
2020年に、ベストパーソナリティ賞及びリスナーズ・チョイスをW受賞したのは、『ジェーン・スーと堀井美香のOVER THE SUN』(以下、『OVER THE SUN』)。この作品は多くのPodcasterを目指す女性たちにとっての刺激となっている。そして『OVER THE SUN』の見どころといえるのが、女性2人が話す日常の些細な瞬間と、そこへの共感だ。「わかる!」と膝をつくトピックをさりげなく切り取りながら、的確なツッコミでリスナーとの距離を詰める。
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また、NY進出を果たしたお笑い芸人の渡辺直美が全編英語で話すプログラム『Naomi Takes America』も、女性Podcasterが活躍するプログラムだ。毎エピソードごとにゲストを招き、渡辺が勉強中の英語でトークに挑戦している。本人は勉強中と言うものの、会話は流暢。さすが、お笑い芸人として話芸を磨き、海を越えてNYで活躍してきた力が発揮されており、そのトーク内容もかなり面白い。このテンポ、内容の痛快さは語学力があれば出せるというものではないだろう。アメリカのカルチャーを取り上げつつ、自身のエピソードを絡めて「音声」だけで笑わせられる実力に唸らされる。
そんななか、シンガーソングライターの藤原さくらと女優の日高七海が配信するPodcastプログラム『今ファミレスにいるんだけど隣の席の女子が話してる内容がジワジワきてるんだが共有してもいいですか?』(以下、『ファミジワ』)が、まさに“ジワジワ”と人気を集めている。
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このプログラムは、2人がまるでファミレスで話しているようなゆるい温度感と、リアルなトークテーマが持ち味。藤原と日高のスモーキーボイスの心地よさについ耳を傾けていると、突然飛び出す“バチェロレッテ”や“オススメ映画”などの話題の意外性に心が刺さりまくる。まさに今ここで女友達とファミレスにいるかのような気分になれるところが魅力だ。
いわゆる雑談系のジャンルとなる『ファミジワ』は、2人が繰り広げる等身大のトークがタイトル中の“ファミレス”というワードによくマッチしているが、一方で身近なトピックスを飾らない言葉で話すなかで芯を食った発言が飛び出すことも。そのコントラストのなかに生まれる、2人の「自分はこう思う」というはっきりとした意思や発言が、より一層胸に響き、どんどん引き込まれていく。