ポッドキャストシーンに起こっている急激な変化とは? 『JAPAN PODCAST AWARDS』運営のニッポン放送・永井翔&石井玄に聞く
2019年秋に立ち上がった優良なPodcastコンテンツを発掘し応援する日本初の大規模アワード『JAPAN PODCAST AWARDS(ジャパンポッドキャストアワード)』が先日第3回を開催し、Spotifyが独占配信し、テレビ東京が制作している『ハイパーハードボイルドグルメリポート no vision』が大賞を受賞した。
「今、絶対に聴くべきPodcast」「もっと世の中に知られるべきPodcast」を、日本の音声コンテンツプラットフォーマー各社協力のもと発掘する同企画はなぜ立ち上がり、現在の音声コンテンツムーブメントを牽引するに至ったのか。ここ数年間でのシーンの変化やSpotifyなどの音声プラットフォームが台頭してきた背景について、同アワードのディレクターを務める永井翔(ニッポン放送)と、選考委員を務める石井玄(ニッポン放送)に話を聞いた。
ポッドキャストの熱が次第に伝播していった
ーーまず、『JAPAN PODCAST AWARDS』が立ち上がった背景について伺っていければと思います。
石井玄(以下、石井):初回は選考員として携わっていなかったのですが、選考員の中にメチクロさん(SF inc.代表)という方がいて。その方を中心に「ポッドキャスト熱の高まりを、どう形にしていくか」という企画が立ち上がり、結果としてアワードという方法で開催することになったのがきっかけになっています。当初はいわば監修のような立ち位置でアワードに関わっていて、メチクロさんと一緒にポッドキャストをやってみたり、アワードの進行を作ったり、アウトプットの番組のディレクターをやったりしていました。そして、ニッポン放送に入社して2年目から、正式に選考員になったんです。
ーー石井さんは『オールナイトニッポン』のチーフディレクターとして活躍されていましたが、ポッドキャストについてはどのような所感を抱いていたのでしょうか。
石井:そうですね。ポッドキャスト自体は10年以上前からあるもので、最初はラジオの付属品というか、既存のラジオ放送の切り出しやアフタートークなど、あくまで「地上波の番宣」のためにポッドキャストを活用するという認識でした。それが時代とともに、オリジナルコンテンツが出始め、いろんな人がポッドキャスト番組をやり始めるようになった。そのため、ポッドキャストの盛り上がりは知っていて、なんとなく面白そうだなと思っていました。そんななかで、メチクロさんと喋る機会があり、海外の動向やポッドキャストの可能性を知ったことで、ポッドキャストに興味を持ちました。そこからは、ポッドキャストについて勉強しながら知識を深めていったんです。
ーーアワードの1回目をやってみて、ポッドキャストの認知は社内で広がっていったんでしょうか。
石井:ニッポン放送としても、ポッドキャストを本格的に作り出す前にアワードを先に立ち上げたことで、社内のポッドキャストに対する関心が高まりました。デジタルを担当する部署が既存のラジオ番組のポッドキャストを増やしたり、ニッポン放送のオリジナルコンテンツを制作したりと、ポッドキャストの熱が次第に伝播していったと感じています。
ーー永井さんからみて、ポッドキャストのコンテンツや概念はどのように映っていますか。
永井翔(以下、永井):ラジオ番組はプロである放送局しか作れなかったのに対し、ポッドキャストはアマチュアでも簡単に音声コンテンツを作れる先駆けになったと感じています。第3回目のアワードは、初めてオンラインではなく、クリエイターの方を授賞式に呼んで開催させていただいたんですが、クリエイターの皆さまと会話していても、自分のコンテンツへの熱量や愛みたいなのがひしひしと伝わってきましたね。
劇的に変化するポッドキャストシーンでアワードをやる意義
ーーアワードを立ち上げるというのはある種、スターを輩出するというか、これまで日の当たってこなかったクリエイターを見出すわけですが、3年間やってきての手応えや目的の達成具合はいかがでしょうか。
石井:アワードは、ポッドキャストが毎年違う成長フェーズにあることをうかがえるようなものになっていると感じています。初年度は個人でポッドキャストをやっている人を集め、ポッドキャスト自体の認知を広げることが主だったのが、2年目は完全にラジオ放送局が本気で作るようになった。そして、3回目はSpotifyやAmazonといったプラットフォームやテレビ局などを巻き込み、さらに大きなものへと進化していて、アワードの価値が年々上がっているのを実感しています。
ーーポッドキャストのシーンは1年ごとに劇的に変わってきていますよね。こうしたなかでアワードを開催することにより、ニッポン放送が手がけてきたラジオとは違った形で、COTEN RADIOのような新たなクリエイターを発掘できたのは大きかったですか。
石井:ポッドキャストから新たな人気クリエイターが生まれてくれれば、音声コンテンツ全体の市場が活性化し、ラジオにも還元されると思っています。さらにアワードをニッポン放送が開催していることで、ニッポン放送のコンテンツ自体も評価されるわけです。そういう意味では、アワードをやることに意義があると感じていますね。
永井:私自身、第3回目から選考員として関わっていますが、選考プロセスがクリエイターにすごい配慮されていると感じました。回を重ねるごとに改善し、より良いアワードにしようという思いが伝わってくるなと。そう思いながら運営していましたね。
ーーちなみにアワードの第一回目と今とでは、選考員に関してもだいぶラインナップが変わっているようですが、選考の基準はどのように置いているのでしょうか。
石井:第一回目は、最初に佐久間宣行さん(元テレビ東京プロデューサー)に選考員を打診しましたね。そこから“佐久間さんが選考員を務めるアワード”という、箔をつけた形で選考員をピックアップしていった感じです。あとは色々なジャンルから選出するようにバランスを意識していました。個人の好みによってしまうといけないので、そこは3回共通で多様な視点から審査できる人を選んでいると思います。
ーーいい部分だけでなく、改善点なども指摘されていた選考員の方もいて、それはすごくいいなと思っていました。
石井:賞を選ぶうえで、特に3回目になるとノミネート作品は完成度が高いものが多いんです。なので、そこから順位を決めていくには、どうしても粗探し的になってしまうかなと思います。