VTuberをめぐる法律トラブルの難しさとは VTuber法務の専門チームを立ち上げた弁護士に聞く
「VTuberの法務」の難しさ
――もともと法律にそこまでくわしくないベンチャーが運営会社になるケースもかなり多いいと思うのですが、そうした運営会社のマネジメントチームや管理職などへレクチャーしたり、あるいは法務部の立ち上げ自体を支援されるということはモノリス法律事務所であるのでしょうか?
河瀬:VTuber個人か、運営会社の法務部やマネジメントチームに対するコンプライアンス研修はたまにやっています。法律的な話もなのですが、炎上事例についてレクチャーすることがありますね。
最近ですと、収益化を禁止しているとあるゲームの配信では投げ銭をOFFにしつつも、その後の雑談枠で投げ銭をONにして炎上した、という事例がありましたよね。あの件のように、規約上は問題ないけど、過去の炎上事例を踏まえると「これを超えると危ない」という不文律が事実上存在する、というケースもあります。その場合、「過去に炎上した人がいるから気をつけてほしい」というアドバイスは、コンサルティングの立場では絶対にするべきです。
また我々弁護士はみんな法律は分かりますが、YouTuberとかVTuberの仕事をする上では、プラットフォームであるYouTubeの規約にも精通しておく必要があります。SNSの規約もかなりややこしくて、YouTuberであればプレゼント企画が最たる例です。複数のサイトを見比べた上で、「この動線でプレゼントを渡せばOK」といったもの、あるいは景品表示法には違反しなくても、YouTubeやTwitterの規約上こうなっているのでこうするべき……といったアドバイスが必要になって、それは意外と専門性が高いんですよね。
――たしかに、YouTubeもそうですが、TikTokやあらゆるSNS、ゲーム配信まわりのボーダーラインなど、いろいろありますね。法律上ではホワイト寄りのグレーだけど、道義的には「黒よりのグレー」とされることもある……これは確かに専門チームを作った方がよさそうですね。
河瀬:プレイヤーが多く、かつ権利関係がややこしくなりがちで、法律だけでなくプラットフォームの規約なども関わってくる。こうした背景から、VTuberの法務はかなり専門性が高く、弁護士なら誰でもできるわけではない、と私は考えています。そして、そうした知見を特定のチームに蓄積した方が事務所としてはよいなという判断で、今回専門チームの設立に至った次第です。
私自身、もともとITエンジニアであり、企業経営もした経験もあるので、PCやデジタルを活用して大きなことをやっていきたい、という人を応援していきたいという気持ちがあります。複雑な法務の分野について、個人や企業を問わず、ぜひ相談いただければと思います。