格闘技界は「自己プロデュースの時代」に? 朝倉海が多岐に渡る活動を行う理由
ーーいまやトップレベルの登録者を誇る「KAI Cannel」ですが、立ち上げは大変でしたか?
朝倉:最初はまったく知識の無いところからのスタートだったので、かなり手探りでしたね。立ち上げの段階で動画を編集してくれる方とか、企画を考える放送作家さんとか、いろいろなプロの人に頼むというやりかたもあったと思うんですけど、僕らはぜんぶ自分たちで考えて、撮影して、編集するという道を選んだので、常に試行錯誤というか、やりながら学んでいった感覚ですね。
ーー「チーム朝倉海」でイチから作り上げていったと。
朝倉:もちろん、そのときどきで協力もしていただきましたし、他のYouTuberの方々とコラボという形でも力を借りているんですけど、なるべく自分たちで考えて、作って、届けるという方針でやってきました。
ーーいまでこそ格闘家YouTuberはたくさんいますけど、やっぱりその元祖は朝倉兄弟だと思うんですよ。
朝倉:確かに、タイミング的には早かったと思いますし、ある意味で切り拓いてきたという自負はあります。個人的には、格闘家とYouTubeの相性はいいと思うんですよ。YouTubeって、なにか突出したものを持ってる人が始めたほうが成功する。格闘家というと、まず「強い」とか「怖そう」っていう前提のイメージがあるじゃないですか。それに、フィジカルでも魅せられる強力なパワーがあるから、企画もいろいろ広がるし、興味を持って観てもらえるんだと思います。
ーー「KAI Channel」は、バラエティ的な動画も楽しいですし、海さんのトレーニング風景や試合前の水抜きの様子など、様々な面もありますよね。
朝倉:僕は定期的に試合があるので、そこに向けて様々な動画を発信できるというのも大きいと思います。会場やテレビだと試合そのものしか観れないので、その前後に格闘家がどんなことをしているのかは気になると思うんですよ。YouTubeなら、試合までの過程や、こういうバックグラウンドがあって、どんな心境でリングにあがっているか等を伝えることができるので、もっと試合を面白くみてもらえると思います。
ーー格闘技業界でいうと、いままでは興行側やメディアが選手のキャラクターを作っていた部分があるじゃないですか。すごい肩書やニックネームを付けたりとか。
朝倉:そうですよね。でも、いまは本当に自分で発信する、自己プロデュースの時代になったと思います。変に作り込む必要もないし、僕はこういう人間なんです、ということを知ってもらえる。格闘技は激しいものですけど、怖くはないし、こういう人間が挑戦して戦っているというのを知れば、身近に感じてもらえると思ってやってます。
ーードッキリとか、バラエティ的な動画も面白いですけど、企画はどのように考えてるんですか?
朝倉:企画は日頃から考えてますね。いろいろな方とお話するなかでも常にヒントを探してますし、これは動画になるかな、と考えることはもう日常になってますね。
ーーヒットの法則といいますか、こうすればバズる、みたいなことは見えてきますか。
朝倉:これはバズるな、というのはだいたいわかるようになってきました。でも、100%はムリで、これはいけるだろうという企画がダメだったり、何気ない動画の再生数が意外に伸びたりとか、イレギュラーはありますね。
ーーダメなときはどういう動画なんでしょう?
朝倉:「身内ではめちゃめちゃウケたけど、出してみたらあまり伝わらなかった」というのはよくありますね。やっぱりタイトルとサムネイルが重要なので、そこをハズしてしまうと、内容はめちゃくちゃ凝ってて面白いという自負があっても、観てもらえないことが少なくありません。
ーーYouTubeの登録者数も増えて影響力が増したぶん、プレッシャーも大きくなってるのでは?
朝倉:それはたしかにあります。影響力が大きくなるほど、試合に負けられないという想いも強くなるし、僕が負けたら『RIZIN』や、格闘技そのものの人気が下がっちゃうんじゃないかというのも意識しますね。まぁ、勝手に背負ってしまってる部分はあるかもしれないですけど、そのぶん応援してくれる人が増えてるということなので、やる気にもなります。
ーーそんなプレッシャーに打ち勝つ秘訣はありますか?
朝倉:秘訣は……特にないですけど、心の拠り所になるのは、いままでなんでも逃げずに挑戦してきたってことですかね。試合に対しても、ベストを尽くして準備をする。誰にも言い訳できない、自分で納得できることを積み重ねていけば、プレッシャーは感じなくなっていくと思います。