ゆとり女子2人のポッドキャストが“ユルい快進撃”を繰り広げるまで 『ゆとりっ娘たちのたわごと』かりん&ほのかに聞く

人気Podcast『ゆとたわ』の原点

 コロナ禍の影響もあり、ここ1年でPodcastやインターネットラジオそして最近ではClubhouseなどの“音声”を軸としたサービスが増加し、ユーザー数を増やしている。そんな広がりを見せ始めた音声メディアや音声SNSについて、有識者に未来を予想し考察してもらう連載企画「声とテクノロジーで変革する“メディアの未来”」。

 これまではプラットフォームという場を作る企業やプレイヤーを紹介してきたが、ここから数回は、実際に番組を配信しているパーソナリティーの方々をお迎えしていく。今回は『JAPAN PODCAST AWARDS 2020』のリスナーズチョイスで6位に選ばれ、『BRUTUS』にも出演、『ラジオリスナーフェス2021』の総合進行も担当する『ゆとりっ娘たちのたわごと』のかりんさんとほのかさんに登場してもらった。

 同番組は“スタバで聞こえるOLの会話を盗み聴きできるポッドキャスト”をテーマに、毎週様々な話題やカルチャー、それぞれの人生についてユルく、ときには核心を突きながら話していくというもの。筆者も少し前から愛聴しており、今回のオファーに繋がっている。今回はそんなPodcastを配信している二人に、番組を始めるまでの経緯やトークのルーツ、『ゆとたわ』のスタイルが形成されるまでの話、お互いのことや今後の展望などについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)

“テーマに対する結論は出さない” みんなで考えるのが『ゆとたわ』スタイル

『ゆとりっ娘たちのたわごと』のほのかさん(左)とかりんさん(右)
『ゆとりっ娘たちのたわごと』のほのかさん(左)とかりんさん(右)

ーーまずはお2人がPodcastを始めようと思ったきっかけや、経緯を教えてください。

かりん:まずほのちゃん(ほのか)と出会ったのが、大学3年生のときに行った就活塾でした。私は人見知りなので、誰とも話さず帰ろうとしていたところ、ほのちゃんから「このスカートお母さんのなんだけど、変じゃないかな?」といきなり話しかけられたのがきっかけです(笑)。第一声がそれだったので、「変わった子だな」という印象を受けたのが今でも記憶に残っています。そこからたまに複数人でご飯を食べる仲になりました。

 それからしばらく経って、社会人3年目の2017年の秋に、急に電車で旅に出たくなって。なんとなくほのちゃんを誘ったら、OKしてくれたんです。そのとき初めて2人でしっかり話しました。新潟まで鈍行列車で4〜5時間かけて行って、その間何もすることがないのでずっと話していたんですが、それが結構盛り上がったんです。

ほのか:旅行中から「波長が合うな」とは感じていました。誰もいない電車の中で、2人でずっと話していたのが印象に残っています。旅行とは関係なく、以前からPodcastをやりたいと思っていて、ある日「Podcastをやるなら、かりんちゃんに声をかけてみよう!」とLINEをしたら、数秒後に「やりたい!」と返してくれたんです。そのあとすぐに準備を始めて、2017年の冬から収録・配信をはじめました。

かりん:実は私もいつかPodcastをやりたいと思っていたところで、偶然にもほのちゃんに誘われたんです。もともとオールナイトニッポンやTBSラジオなどの深夜ラジオがすごく好きで『久保ミツロウと能町みね子のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)を1年間しっかり聴いていました。終わっちゃって寂しかったんですが、その後、久保さん能町さんお2人でPodcastを始めたのでそれをきっかけに色々なPodcastを聴き始めて。聴いているうちに自分でもやりたくなって、一緒にできそうな人を探していたときに声をかけてもらったので、すぐにOKしました。

ーーほのかさんは何をきっかけにPodcastへ興味を持ったんですか。

ほのか:もともと音が好きなんです。大学生の頃、海外でASMRが流行り始めていたタイミングでいろいろ調べていくうちに音を聴かないと寝られない体質になったんですが、そんなときにPodcastを見つけて、篠原ともえさんの『東京プラネタリー☆カフェ』(TOKYO FM)や、木村多江さんの『Sound Library』(JFN)などを聴いていました。あとは、就職活動中で少し不安だった時期、ラジオを聞いて助けられたりもして、いつかPodcastで配信する側をやってみたいなと漠然と考えていました。

ーーお2人のトークはゆるくてふわっとしつつもテンポ感が心地よいのですが、回を追うごとに洗練されていっている気がします。それぞれの「話す」ことのルーツには、どんなコンテンツがあるのでしょう。

かりん:2人に共通しているのは、朝井リョウさんと高橋みなみさんの『高橋みなみと朝井リョウ ヨブンのこと』(ニッポン放送)という番組を聴いていたことですね。あの軽妙なテンションで進められる深い話がすごく好きなんです。超明るい声で本質を突く朝井さんの思考の深さを、高橋さんの天性のハッピーさでマイルドに調和してくれているので気負わずに聴けますし、30分という時間もちょうどいい。

ほのか:『ヨブンのこと』への憧れは、2人ともありますね。『ゆとたわ』って最初は企画を重視していたんですが、だんだん結婚や恋愛、仕事の話など、人生で悩んでいることを赤裸々に話すことも増えてきて。ただ、2人とも深刻になりすぎず、コミカルに話す方が好きなタイプなので、『ヨブンのこと』のようなテンションで話せたら理想だなと思います。

ーー「ゆとたわ」の内容は適度にずっしりくるんですが、ちょうど良い軽妙さがあって好きです。事前にがっちり企画されたテーマだけじゃなく、お2人による人生の話が混ざっているからこそ、独自のおもしろさになっているのかなと。

かりん:今まで意識して考えていなかったけど、会話を通して初めて自分自身が感じていたことに気づく機会が増えました。話す相手がいて初めて言葉になっていく感覚です。日々、会話が転がっていくおもしろさを感じています。

ほのか:雑談のつもりで話しているんですが、普段できない話もしています。「そもそも結婚とは?」なんて、改めて友だちと話したりしないじゃないですか。自分の考え方を話してもいい場になっていて、配信の回数を重ねるたびに、内容にも反映されていると思います。

かりん:この3年半で徐々に関係が深まっていて、話せることが増えたのも大きいですね。

ーー議論に近い話になるとき、お2人のスタンスが100%同じではなく、お互いに別の考え方があったりするので、リスナーはどちらかに感情移入できます。バチバチに言い合うわけじゃないのも聴きやすいのかもしれません。

ほのか:あらかじめ方向性を決めてディベートみたいなスタイルにもできると思うんですが、私たちは、自分の正直な立場で話をするようにしています。

かりん:最初の頃は、テーマに対して結論をうまく出せないのが悩みだったんですが、最近はふわっと終わらせて、リスナーさんたちの間で議論が盛り上がればいいかなと思うようになりました。私たちが無理に答えを出さないで、みんなで意見や実体験を話し合うスタイルです。

ーーそれって今の時代に合った価値観ですよね。結論づけたり言い切った方が反応を集められますが、それで誰かを傷つける可能性もありますし。

ほのか:一度話したテーマについて私たちはずっと考えているので、配信したら終わりではなく、あとから別の回でつながって、答えが出ることもあります。考え方が変わったりもするし。変わってもいいから、ずっと考え続けるようにしています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる