『Talk About Virtual Talent』第四回:コーサカ(MonsterZ MATE)
コーサカ(MonsterZ MATE)と考える、VTuberの“シーンとカルチャー”
「俺は俺が思っているよりも、この世界が好きなのかも」
ーー未来の話になってしまうんですけど、VTuberのカルチャー全体は今後どうなっていくと思いますか。
コーサカ:知らねぇ~~~~~(笑)。でもカルチャー自体はもっと広まっていって欲しいなとは思う。それは単純に自分のいる分野の分母が増えていってほしいだけなんだけど、人が増えればできることも増えるし、お金が増えればやれることは増えるし、それってハッピーになる人が増えるから。そんな爆然としたことぐらいですかね。
ーー“メタバース”がバズワードになったりと、バーチャルの世界はどんどん社会的に広がっていってますよね。VRChatなどを含め、それらのカルチャーはチェックしているんですか?
コーサカ:VRChatは数回行ったことあるけど、めちゃくちゃ楽しい! ただ、楽しすぎて時間を使いすぎると確信したので、いまではまったく行ってないです。本当はもっと行きたい。俺は「ちょっとだけやる」みたいなことができないんですよ。「ゲームは1時間だけね」という環境で育ってないから、VRChatはやらないということで、なんとか自分の生活を保ってる(笑)。
ーーVRC内の音楽性についてはどう思いますか?
コーサカ:めちゃくちゃいいと思う。だって建築法を考えないでステージ作れたり、なにも気にせず炎を出せたりするじゃん。俺もなんかすごい事したい。
ーーこれからのシーンに危惧することはありますか。
コーサカ:ないない(笑)。そもそも危惧してることがわかってるなら、俺らは売れてるでしょ。でも、悪くなっていくことはないんじゃないですか。
ーーコーサカさん自身はカルチャーを見ていないというものの、TwitterではVTuberについて誰かが語ってる記事や動画コンテンツを拡散しているところを見ます。今日のお話を聞いて、どういう思いでそれらを広めているのかが気になりました。
コーサカ:それに関しては2種類あって、ひとつは単純に読み物として面白かったもの。もうひとつは自分の気持ちが代弁されているもの。拡散に関しては、ほとんどRTだけで引用はしない。気になるワードがあれば読むし、VTuberのカルチャーについて掘り下げるものだと、最近の人は知らない可能性があるから、それを知って欲しいと思って拡散するかな。カルチャーの1番の足枷は“勉強すること”だと思ってて。歴史を知る上で座学をしなければいけないのってめちゃくちゃ重いじゃないですか。VTuberは漫画やアニメと同じカルチャーだと思うし、音楽的に見たら割とHIPHOPな文化があって。音楽をやってると、絶対に自分の生活が出るし、自分のキャラクター性と人間性をベースにした曲を出している人しかいないと思っていて。
この連載だと、kz(livetune)さんが音楽としてこの分野に初期から携わってきたからこその視点とか、何をやってきたかを踏まえた上での発言があって、知ってる方が面白いことが多いと思ったんです。そういうのを大まかでも知れるものは拡散した方が、俺が書いてるリリックが刺さることも増えるだろうし。
ーー認めたくないかもしれないですけど、それってカルチャーへの愛だと思います。
コーサカ:そういう意味でいうと、俺はカルチャーに興味はないし、俺がやることとか、俺自身に起きたことしか書いてないけど、結果カルチャーの曲になってるのか……。「Up-to-date」とか、まさにそうだし。興味はないけど、思考的なものはカルチャーと絡み合ってる。
……よく考えたら俺ってカルチャーの中にいるのか。さっきの危惧してることはないかという質問に「ない」と答えたのも、自分がその中にいたり、当事者じゃない立場で何かを言うことが「ずるい」と思ったからかもしれない。だから、できるだけ自分に合ったこと、自分に起きたこと、自分が思ってることや経験してきたことを共有できる人たちの範囲でくらいはやっておかないと、中身がなくなっちゃうし、浮き足立ってしまう。結果的に、あとで自分が追い詰められる気がします。
これは全然関係ないことかもしれないけど、少し前に「マシュマロ」(質問サービス)をやっていたことがあって。自分が配信をしていない分、みんなの話を聞くタイミングがないから設けてたんだけど、なんか変に注目を集め始めて。その時に「俺の考えや意見って、こんな簡単に刺さるんだ。これはやばいな」と。たった50文字くらいをパッと書いただけでこんなに人に見られるのは怖いし、ちょっと頭使ったらもっと数字が集められるなと思ったんですけど、それって何にも自分のためにならなくて。むしろ足枷になると考えたから、すぐにマシュマロをやめて、時間をかけて何かを作ることを意識し始めた。時間をかけて作ったものって、受け取り側も時間をかけて理解してくれるから。これがカルチャーに対する自分の芯なのかも。
ーー自分が作ったものが間違って伝わっても広がればいいと思う人と、理解されずに広まっていくことにストレスを感じる人っていると思うんですけど、コーサカさんは後者ですよね。
コーサカ:俺は理解されずに広まっていくことに耐える根性はないかもしれない。いいものができたという手応えと、それに時間をかけることができたことと、それでお金をたくさんもらえるという3種類のうち、ひとつでも満たしていればクリエイティブは割と楽しくなるというのがわかっていて。この3つのどれもない時期があって、それを絶対起こさない、せめてひとつでも確保できるようにと意識していると、今日話したことを徹底するしかなかったんだよね。超頑張ると3つのうち2つを確保出来る最高な時もある!
ーークリエイティブな判断基準は、ちゃんと経験を積んだからこそのものなんだなと思いました。
コーサカ:毎回仕事の話をいただいた時に藤木とも話すけど、その3つのうちのどれかを奪われそうな気がすると「今回はやめとこう」と。
……あー、わかった! 突然最初に言ったことに戻るんだけど、自分が作ってるものと、その人が作ってるものの話しかしないっていうのは、シーンとカルチャーの話だ。
ーーそうですよね。VTuberのカルチャーに興味がないと言ってましたけど、その場で咄嗟にここまで語れるのは、どこかで考えてたり、体現してるからだと思いますよ。
コーサカ:今日、もしかしたら何も中身のあることは話せないかもしれないと思ったんだけど、沢山話して自分も知らない自分の考えとかもまとまって良かったですね。俺は俺が思っているよりも、この世界が好きなのかも。
■公演概要
『MonsterZ MATE 4th Anniversary LIVE -愚者-』
出演者:MonsterZ MATE
公演日程:2022年5月8日(日)
OPEN/START:18:30 / 19:00
場所:池袋harevutai
配信:SPWN(※4月6日より販売開始)
イベントページ:https://virtual.spwn.jp/events/22050819-mzm4th