『VIRTUAFREAK』仕掛け人が語る、バーチャルタレントにとっての“場所”と“丁寧さ”の重要性

VTuberにおける“場所と丁寧さ”の重要性

 バーチャルYouTuber(VTuber)をはじめとする、“バーチャルタレント”シーンを様々な視点から見ているクリエイター・文化人に話を聞く連載『Talk About Virtual Talent』。好評だったkz(livetune)による第一回に続き、第二回に登場したのは、クリエイティブユニオン・CAMBRを率いる飯寄雄麻氏。

 広告代理店を経て、Loftworkや2.5D、THINKRなどでDAOKOやORESAMAらとのイベント・番組制作を経験し、独立以降は数々のバーチャルタレントに関するイベント・ライブをサポートし、イベント『VIRTUAFREAK』を立ち上げるなど、バーチャル文化を陰ながら支える彼に、その経歴やシーンへの提言を聞いた(編集部)。

「Vの世界にも人の営みのようなものが生まれている」

――飯寄さんがVTuberの文化に触れたきっかけはどんなものだったんですか?

飯寄雄麻(以下、飯寄):以前からキズナアイさんのような人たちのことは知っていたんですけど、ちゃんと意識して観はじめたのは、2018年4月ぐらいにヨメミさんの動画を観たのがきっかけです。僕はもともと、旧渋谷パルコにあった2.5Dというインターネット配信スタジオで番組の配信やイベントを企画したりしていたんですけど、2018年からフリーランスになったので、自分の時間も自由に作れるようになって。そこで、『ゼルダの伝説』や『スプラトゥーン』『フォートナイト』など、ゲームで遊ぶようになったんです。そのときに、たまたまYouTubeのサジェストで出てきたヨメミさんの『フォートナイト』のゲーム実況動画を観て「この女の子、めちゃくちゃ上手いな……!」と思ったのが最初でした。

――そもそものきっかけはゲーム実況動画だったんですね。

飯寄:意外だとよく言われます(笑)。ヨメミさんはゲームも上手いんですが、同時に声やリアクションも特徴的で。そこから、エイレーンファミリーの動画を観るようになりました。ちょうどその頃、VTuberの話題を耳にすることも増えてきて、自分自身もずっと気になっていたので、他にも輝夜 月さんの動画を観たり、猫宮ひなたさんとGYARI(ココアシガレットP)さんの「何でも言うことを聞いてくれるヒナタチャン」(歌動画とゲーム実況動画がひとつになった動画)を観て「VTuberって音楽クリエイターともコラボするんだ」と思ったりもして。そこからヨメミさんや月さん、ひなたさんのアーカイブを全部観ていたら、そのうち動画更新の方が僕の視聴するスピードに追いつかなくなってしまったんです(笑)。そこで、他の人たちの動画もどんどん観るようになっていきました。

【PUBG縛りプレイ】何でも言うことを聞いてくれるヒナタチャン【#1X】

――飯寄さんが働いていた2.5Dは、ポップカルチャー全般を取り扱っていたかと思うのですが、そこで働いていた飯寄さんがVTuberの人たちに感じた魅力とは、どんなものだったんでしょう?

飯寄:最初に思ったのは、アニメのように「キャラクターがあって、声を当てる声優さんがいる」というものではないんだな、ということでした。2.5Dではアイドル以外にも、インディーズ時代のDAOKOさんやORESAMAと一緒にイベントや番組も作っていて、その中で、アーティストたちがどんどん変化していく様子を近くで見ていたんです。それは僕がVの人たちに感じる魅力とも繋がっていて、最初は緊張していた人が上手く喋れるようになったり、企画を試行錯誤していったりと、どのVTuberも常に新しいことを考えていて進化していく過程を目の当たりにしているというか。

――つまり、ゲーム/アニメ作品の場合、キャラクターの成長は脚本にそって表現されますが、VTuberの方々の場合は、むしろ「人」としての魅力を感じる、と。

飯寄:そうなんです。実際、Vの世界にも人の営みのようなものが生まれていて、「誰と誰は仲いいよね」とか、社会のようなものもできていて。キャラクター性を持ちつつも、脚本家や構成作家が作る枠から外れたところでその人たちの物語が生まれていくというのが、オリジナリティのある文化だな、と思います。2019年の1月にTVアニメ『バーチャルさんはみている』がはじまった頃、ひなたちゃんが電脳少女シロさんにいじられる様子を観ても、3次元のタレントと変わらない魅力を感じました。

――それ以降、印象に残っている動画/配信やVTuberの方がいれば教えてもらえますか?

飯寄:まずは、バーチャルタレント本人ではなく、かかわっているクリエイターなんですけど、(花譜の楽曲を担当している)カンザキイオリさんは、このシーンにかかわることで、さらに覚醒した人なのかなと思います。カンザキさんは、僕の中では2000年代以降の社会がつくった若者像を全部インストールして生まれたすごい才能というイメージで、その雰囲気はボカロ曲「命に嫌われている。」の頃からあったかと思います。でも、その後花譜という才能に出会ったことで化学反応がおきて、そのカンザキさんの潜在的な才能が二乗にも三乗にも引き出されているというか。ここから世の中がどんなふうに彼を認めていくのか、すごく楽しみにしています。

命に嫌われている。/初音ミク
花譜 #33 「命に嫌われている(Prayer Ver.)」【オリジナルMV】

 配信者の人たちだと、最近一番観ているのは、本間ひまわりさんや夢月ロアさんの動画や、湊あくあさんの視聴者参加型『大乱闘スマッシュブラザーズ』の、めちゃくちゃ煽るドンキーコング(おじいちゃん)の動画ですかね(笑)。あとは、宝鐘マリンさんの配信も面白いなぁと思って観ています。僕の場合、切り抜き文化があることも大きいですね。仕事が忙しいと、なかなかリアルタイムでは配信を見られないんですけど、そういうときでも切り抜き動画を観て、そこから本編のアーカイブを観る、ということができて。そんなふうに、多面的に楽しむ方法が揃っているので、リスナーとしても親しみやすいと思います。これってニコニコ動画のn次創作カルチャーのように、運営側がその切り抜き動画を容認することで、ファンの人たちの熱量がそこに表われて、さらに新しいファンが増えていって――その結果、ニコニコ動画の黎明期以上のことが、急速に起こっているように感じています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる