コーサカ(MonsterZ MATE)と考える、VTuberの“シーンとカルチャー”

コーサカと考える“VTuberのシーンとカルチャー”

「“思考停止”なカバーはしない」MonsterZ MATEの音楽活動における“信念”

ーーVTuberの音楽シーン全体を見たうえではどうでしょう? 2018年〜19年は音楽をやっているVTuberはいまほど多くなくて、2020年から急に増えてきたと思うんですが、それに伴う変化などを感じた部分はありますか。

コーサカ:これまで歌をやってない友達がやり始めたなという印象はすごく強いけど、俺の知っている範囲だと、みんなもともと音楽活動をやりたいと思っていたところにシーンがついてきたから、タイミングが良かったのかなあ?

 言い方がすごく難しいんだけど、流行ってないことをやっていると流行ってない人に見られちゃうじゃないですか? その風潮自体がダサいんだけど。そんな人たちの目線からみても、音楽をやっても違和感のないシーンになったから、頭のいい人たちが、いまなら問題ないなと飛び込んできたところもあると思う。

ーー2018年ごろは、もう少しコアな音楽だったというか、一部のトラックメーカーやその周辺のすごい人たちが集まっていて、それがVTuberの音楽として認識されていたと思うんです。

コーサカ:あのころは、いまよりも音楽そのものにフォーカスが当たっていた気がします。もともとインターネットカルチャーが好きな界隈の人たちが、大人になって自分が一番触れてたものを自分たちでコントロールできる時期にVTuberのカルチャーが盛り上がり出して、しっかり噛み合ったことで生まれた盛り上がりなんだと思う。

 でも、いまはもっとパーソナルなものになったというか、自分のフィールドの中でやるものとして嗜むようになったけど、あのころはプレイヤーも少なくて、誇張した表現だけれど、全員が全部の動画を見てたから、シーンに対してみんなアプローチをかけていたような気がする。いまは物理的に全部見る・聴くが難しくなったからこそ、多様化しているところもあると思う。

ーーMonsterZ MATEで活動していくうえで、誰がどんな音楽をやっていて、どんな音楽が流行っているのか、というのは気にするんですか?

コーサカ:全然気にしない。ただ、タイムラインに流れてきてたまたま聴いたらめちゃくちゃよかった、ということはたくさんある。それがJ-POPだろうとHIPHOPだろうとそう感じる。YouTubeでおすすめに出てきたやつを聴いてみたら良かった、というのと一緒ですね。

ーーそれは音楽をやっていくうえで正しいことだと思いますか。

コーサカ:MonsterZ MATEの知名度や売上を考えたら正しくないのかも(笑)。

ーーでは、いまVTuberとなって音楽をやる場合は、流行やいろんなVTuberの音楽を追っていく方が良いと思いますか?

コーサカ:それはVTuberに限らずやった方がいい! だって絶対にまずは聴いてくれる人の分母を増やさなきゃいけないから。ニッチに見えても、流行った人ってよく見てみたら絶対最大公約数を取ることをしている気がします。ニッチな話題をすごく大衆的なものと結びつけるということは絶対やってるから。オリジナル曲だけじゃなく、カバーも交えて。多くのリスナーに聴かれた後もそれを続けるとか。

ーーこれだけはやらないというか、やらない方がいいことってありますか?

コーサカ:えー……別に好きにやったらいいと思います。人の事は知らんので。うちでやらない事だと、“思考停止”なカバーはしないようにしてます。リスペクトはないけど数字取れるからただの作業になってるパターンのやつ。戦略としてはアリなのかもしれないけど。なにをやるにしても、なにか自分たちらしさは乗せたい。たとえそれが見てくれる人と軋轢を生んでも『らしさ』は残したい。

ーー流行を追いすぎるのもダメなんですかね。

コーサカ:この感情って妬みだと思いますけどね。俺が音楽で毎月1000万円の収入があったら、そんなこと一切思わないだろうし。これまでもこれからも、シーンに対する発言は正解がこうだと思って言っているんじゃなくて、全部自分の好き嫌いでしかないから。だから、カルチャーについて話すのが嫌なんだと思う(笑)。

ーー最近の活動の中で、印象的な変化はありますか?

コーサカ:個人的なことだと、大人の人と話すことが増えたのはかなり印象深い。大人の人っていうのは、いわゆる年齢が大人の人ではなくて、タレントを扱う企業の人や裏方の人。いままでの人生ではほとんどなかったけど、VTuberを始めてから何かを作るときに、根本から打ち合わせを一緒にして、いろんな人と会って、とにかく大人と喋ることがめちゃくちゃ増えた。(マネージャーの)藤木もそうだし、(ホロライブのスタッフである)シノヴみたいな。

ーーそれは、テクニカルな要素がVTuber活動に置いて必要不可欠だからということも大きいのでしょうか?

コーサカ:というより、木戸さん(元MonsterZ MATE プロデューサー)がいなくなったから、自分たちでやるしかなくて、そのタイミングで爆発的に増えました。担当俺しか居ねーぞ、みたいな。色んな人と話して、自分が思ってるよりも不誠実な人も誠実な人もたくさんいるんだなとわかったことは大きい。

ーーリアルとVTuberの見せ方は、昔よりも多様化してきているように見えるのですが、そのあたりはどう思いますか? たとえば、ライブの時は生身の体で出演したりと、状況によって生身を出したりバーチャルで活動したりという使い分けをしている人たちが増えているように感じます。

コーサカ:そういう形態が増えてるんだ! それはめちゃくちゃいいなと思う。でもそれは進化としていいという意味じゃなくて、一つのスタイルとしていいじゃんって感じ。

 生身の姿を出してることがいいんじゃなくて、たとえば、「スクリーンがないライブハウスのイベントでライブ来て欲しいんです、あなたの音楽が好きなので」というリクエストにも応えられる。これは普通にいいことじゃん。もちろん出るためにスクリーンを持っていって、オペレーションスタッフも帯同させることで得られるものとかもたくさんあると思うけど、やっぱそこの過程を飛ばしても音楽を届けられるのは、おおよそ全員ハッピーじゃん。単純にできることが増えるからいいなと思う。

ーー多様性が広がってる反面、MonsterZ MATEのような最初から中身を隠さない活動スタイルはあまり増えてない印象です。

コーサカ:でもそれはそれでいいんじゃない? MonsterZ MATEがもともとこのスタイルで行こうと思ったのは、まず自分たちがストレスレスに活動できるかどうか、というのがあるんだよね。それと、これまで話したことなかったけど、俺らの活動を見て「これでもいいじゃん」と思う人が増えたらいいなっていうのがあって。それはどちらかというと見てる人にではなくて、やってる人たちに対して。オリジナル曲をバンバン出すのも、音楽やりたいと感じてくれる人がもっと増えたらいいなという考えはあるし、一緒にやれる人が増えたらいいなという思いは間違いなくあったね。

 そんな中でBOOGEY VOXXのFraさんが以前「お前らが耕してくれてたおかげ」って言ってくれたのは嬉しかったですね。

ーー口に出さないだけで、思ってる人はたくさんいると思いますよ。

コーサカ:シュークリーム(MonsterZ MATEの名物企画「誰が持ってるか王選手権」シリーズにおける“ロシアンシュークリーム”)の動画もそういうモチベーションでやっているところはあって。そこに参加したいから3Dになりたいと思ってもらえれば、遊べる人が増えるなと。でも、それは俺らに数字がついてこないと意味がないんだけど、ありがたいことに「ロシアンシュークリームやりたいです!」と言ってくれる人は増えていて、「3Dになったら真っ先に行きたい」と言われたときはすげー嬉しかった。

農家とピエロの貴重な〇〇シーン

ーーあの企画は、最初に始める時点でそういう意図があったんですか?

コーサカ:最初は銀河アリスを呼んだ時に、2人じゃなくても面白いし、わかりやすいパッケージができたな、とは思いました。初めてうちを見に来るリスナーさんにとっても良い企画なんだろうなと思うと、(大量のからしやわさびを食べたくないという意味で)マジでやりたくないけど、続けてて良かったなと感じます。

ーーVTuberのいままでにない一面をさらけ出させるための企画だと思ってました。

コーサカ:それもあります。MonsterZ MATEの所ならそうなるのも仕方ないかって思ってもらえる。新しい面をリスナーさんが見れたり、やる側も「こんな一面出しても大丈夫なんだ」と思ってもらえれば最高。自分のとこではできないしやらないけど、MonsterZ MATEだったら許される、みたいな。

ーー自分の推しに変なことさせるな、みたいな苦情もほとんど見たことないですもんね。

コーサカ:みんな優しいから見逃してくれてるのかも……。でも、シンプルに言えば俺らは友達を誘って遊んでるだけであって、単純に3Dの身体で遊んでるのを見て「すげー楽しそう」と思ってもらえればそれだけでいいんだよな。

ーーコーサカさんから見て、立ち振る舞いや活動に尊敬の念を感じる人は誰ですか?

コーサカ:(天開)司、(歌衣)メイカ、ぽこピー(甲賀流忍者ぽんぽこ&ピーナッツくん)、おめシス(おめがシスターズ)とかかな。

ーーなにか共通点があったりするんですか?

コーサカ:いや、全然リスペクトの種類は違いますね。それぞれ好きな部分、尊敬している部分があります。

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