VTuberシーンに欠かせない場所『エンタス』運営のTAKUYAに聞く、“異色のハコ”が生まれた経緯

『エンタス』運営者語る“異色のハコ”誕生秘話

 バーチャルYouTuber(VTuber)をはじめとする、“バーチャルタレント”シーンを様々な視点から見ているクリエイター・文化人に話を聞く連載『Talk About Virtual Talent』。第三回は、秋葉原に存在するイベントスペース「エンタス」の運営に携わるTAKUYA the bringerが登場。VTuber黎明期である2018年からこれまで様々なイベントを開催してきたエンタスの運営のほか、自らDJとしても活動する彼。最近ではinterFMの『VMDJ』(https://www.interfm.co.jp/vtuber)のナビゲーターも務めるなど、カルチャーの音楽シーンにおけるキーマンといっても過言ではない。

 コロナ過の中で、VRChat内に「VRエンタス」をリアルイベントと連動させ、エンタスでしかできないエンタメを築き上げたり、イベンターとしての仕掛け人であり、自らプレイヤーとして数多くのイベントに出演する2つの側面を併せ持つTAKUYA氏にこれまでの活動と、これからの展望を聞くことができた。(森山ド・ロ)

〈連載『Talk About Virtual Talent』バックナンバー〉
第一回:kz(livetune)が考える、VTuber文化ならではの魅力「僕らが10年かけたことを、わずか2年でやってる」
第二回:『VIRTUAFREAK』仕掛け人が語る、バーチャルタレントにとっての“場所”と“丁寧さ”の重要性

「『このライブハウスに出たら売れる』のVTuber版のようなお店を」

TAKUYA the bringer
TAKUYA the bringer

ーーTAKUYAさんが現在行なっている活動を教えてください。

TAKUYA the bringer(以下、TAKUYA):秋葉原にあるイベントスペース秋葉原エンタスの運営と、interFMのバーチャルアーティスト楽曲番組のナビゲーター、そして「TAKUYA the bringer」名義でDJとしても長年活動しています。

ーーどのような経緯でDJを始めて、秋葉原エンタスの運営をするに至ったんですか?

TAKUYA:車の中で姉が聴いていたジャネット・ジャクソンをきっかけにブラックミュージックにハマって、17歳の時にターンテーブルを買いました。そこからメインストリームのハコを中心に、DJ活動をするようになり、独立のタイミングが訪れたのでクラブを買い取りました。それが福岡「セレクタ」の誕生です。セレクタは、サブカルチャー中心のイベントを行なっていて、その当時福岡でサブカルチャー中心にイベントを開催しているクラブがあまりなくて、その活動の功績じゃないですけど秋葉原エンタスさんに声をかけてもらって秋葉原に進出しました。

ーー秋葉原エンタスはクラブイベント以外の催しもやっていますよね。

TAKUYA:もともとオノデンとTOKYO MXとコスパグループホールディングスの3社が秋葉原の大型LEDビジョンと連動した催事施設を運営するコンセプトで「エンタス」が作られました。例えば、アニメのブルーレイの特典で参加できるイベントをビジョンで広告しながら中の施設でイベントができたり、物販や展示会もできるプロモーション連動施設なんです。昼間はそれでいいんですが、夜にその施設を使ってクラブみたいなことができる人を探していたみたいで、そこで私に声がかかりました。

ーーそこからVTuber業界へと進出したきっかけはなんだったんですか?

TAKUYA:福岡にいる時からキズナアイさんが大好きでした。当時セレクタでイベントをやりながら、好きなアニメのキャラが直接声をかけてくれる未来がいつか来ないかなと思っていて、その時にキズナアイさんの「体力測定をやってみる!」の動画を見て衝撃を受けたんです。思い描いていた理想の未来が始まっていると、福岡にいる時から感じていました。そして、エンタスへ行くことが決まったタイミングで、たまたま2018年の東京ゲームショウに行く機会があって。その時にGugenkaさんのブースで「東雲めぐさんが好きなんです」という話をしたら非常に盛り上がって、エンタスの話をしたら「一緒に何かやりましょう」ということになり、開催されたのが「バーチャルエンタス」でした。

ーーさまざまなきっかけが重なって、VTuberとの関わりが生まれたんですね。

TAKUYA:2018年11月は『バーチャルエンタス』以外にもVTuberとヨガをやるイベントや、因幡はねるさんの初イベント『因の者オフ会』が開催されたりと、とにかく11月に急激にVTuberさんとの接点が生まれて、たくさんのイベントが開催されました。11月にイベントが集中した要因として、秋フェス(秋葉原フェス)で初めてVTuberとのコラボがあったのが大きかったです。この11月に開催された3つのイベントが、エンタスでVTuberのイベントをやっていこうと決めた大きな流れですね。

ーーその当時はVTuberのイベント自体も少なかったので、かなり革新的だった記憶があります。

TAKUYA:大きい会場では開催されていましたが、オフ会のような規模のイベントは全然開催されていませんでした。どうせやるなら大型ビジョンと組み合わせて何かやりたかったので、2019年の3月にVTuberさんとのCM企画を打ち出しました。これからVTuberイベントが盛んになって行くと思ったので、エンタスは全面的にVTuberさんを応援していこうとその時思いました。

ーーお店的にも行けるだろうという手応えに加えて、ビジョンと連動している利点や秋葉原という立地など含めて、トータルでやっていけるという確信があったと。

TAKUYA:そうですね。利益の面は最初全く考えていなくて、会社の会長がこういう文化は最初に裾野を広げないといけないという考えの人だったんですよ。僕自身も、オフブロードウェイみたいな形にしたかったんですね。アンダーグラウンドにある老舗のようなライブハウスってあるじゃないですか。このライブハウスでライブしたら売れるみたいな。それのVTuber版のようなお店をやりたい思いがありました。会長もそれに対して「利益は後々回収できればいいから、まずはカルチャーを広めるために色々やっていこうよ」と言ってくれたので、迷いなくVTuber業界に飛び込めました。その結果、様々なアーティスト様と関係者さんとイベントや企画を行うことができ、今に至ります。みなさんには感謝の気持ちでいっぱいですね。

ーーVTuber業界で活動する上で、意識していることはありますか?

TAKUYA:ハコ側の人間としては、フォロワー数やチャンネル登録数に囚われないということは常に意識しています。有名なアーティストをブッキングしてお客さんを呼ぶというより、個人的におすすめしたい方や、ポテンシャルが高いなと思う方をブッキングすることが多いですね。誰でも活躍ができて、誰でもチャンスがあるような場所にしたいと思っているので、これまで公募のイベントもたくさん開催してきました。ちなみに2020年に開催した新年会と忘年会は、応募してくれた人のほとんどに出てもらいました(笑)。

ーー発掘も兼ねた要素もあって、業界のファンにはたまらないですね。

TAKUYA:地下アイドルのライブと似ているかもしれません。色んなアイドルが出演していて、全く知らなかったけど、ライブを見て知ったり、そこからファンになったりっていう発見がある感じですね。せっかくVTuberとしての活動を始めたんだからチャンスを活かせる場所があった方がいいんじゃないかと思いながら活動しています。あとは、お客さん目線でいうと「安全で楽しめる場所」を心がけています。

ーーDJとしての目線で意識していることはありますか?

TAKUYA:DJをする上で意識していることは昔から変わっていません。ジャンル関係なく、その時間にあった選曲をすることを意識しています。メインストリームのクラブって、来ているお客さんに合わせて選曲してドリンクの売り上げをあげることが多いんですが、あとは雰囲気や空間をデザインするのもDJの仕事なんですよ。僕はもともとタレントDJに慣れない気質があって、今いるお客さんをリアルタイムでなるべく自分の色に染めながら、雰囲気をデザインすることを意識しています。最初は曲が少なかったから難しいところもありましたが、今は誰の曲をここでかけるみたいなものは、何も考えてません。簡単に言うと、お任せコースがある料理屋の板前さんみたいなイメージですね。なので、DJする上で意識していることはVTuberだからとか関係ないです。

ーー自分がというより、フロアにいるお客さんを主役として引き立ててるイメージですかね。

TAKUYA:お金を払って来ていただいたお客さんを第一に考えています。あとは、自分の前のDJがどんな曲を流していたか、どういうプレイをしていたかを見た上で、上がり調子の選曲をしていたら一回バーカンの売り上げあげたいから落とすか、みたいなことをVTuberのイベントでもやっているだけです。同じ繋ぎはやるけど、同じプレイはやらないことを心がけています。

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