ワールドクラフト、OSC対応、アパレル展開……メタバースへのアプローチは広がり続ける

建築に衣服、広がるメタバースの現在

 先日、筆者は家を建てた。場所は『cluster』で、業者などには依頼していない。2時間ほどかけて、自分の手で建てた次第だ。

 2月15日にリリースされた新機能「ワールドクラフト」は、その名の通り『cluster』にてワールドを自ら作ることができる機能だ。モデリングやUnityの知識は不要で、『ARK: Survival Evolved』や『Fallout76』のように、パーツを組み合わせてワールドを作ることができる。現時点での提供パーツは104個で、凝ったものを作るにはやや少なめだが、今後はユーザー作成のアイテムをアップロード機能も予定している。ワールド作成のハードルが一気に下がった『cluster』は、「誰でも参加できるメタバース」として発展を続けている。

 同じくメタバースとしての発展が進んでいる『バーチャルキャスト』では、2月17日に「ルーム」機能がQuest版に対応した。ひとつの空間を複数人で共有し、交流できるメタバース的な機能だが、今回の対応によってPCユーザーとQuestユーザーのクロスプラットフォームが解禁された形だ。いまや、「Meta Quest 2」は世界で一番普及したVRヘッドセットであり、Quest対応はサービスの流入数に関わる要素となりつつある。Quest対応を一歩進めた『バーチャルキャスト』は、配信と交流の両軸で地位の確立を目指す。

 一方で、『VRChat』はギークへアプローチした。2月17日に、オープンベータ版にて新機能「Avatar OSC」が実装され、OpenSound Control(OSC)に対応したのである。これによって、外部デバイスからの入力でアバターを制御できるようになったが、どう扱うかはユーザー次第だ。だが実装から数日で、住人の一部はこの新機能をものにしている。フェイシャルトラッキングや、音声認識ギミックなど、これまで『VRChat』に存在しなかった機能が次々に実現しており、その光景はUGCの極致ともいえるだろう。

FACETASM x POLYGON TAILOR IMPORT - METAVERSE 1

 メタバースへは人だけでなく、現実世界のアイテムも持ち込まれている。ファッションブランド向けメタバース支援事業 「ポリゴンテーラーインポート」は、アパレルブランド「FACETASM」のミリタリージャケット「BUG MA-1」などを、アバター向けアパレル製品として3月1日に販売することを発表した。アップデートによって100体ものアバターに対応するというこのミリタリージャケットは、ものによっては古着を再構築した一点物であり、それゆえ在庫すら存在しないという。そうしたアイテムもデジタルに複製し、多くのユーザーが手に取ることができるというのは、「唯一の所有」という主張がされがちなNFTとは真逆のあり方だ。現実のユニークなアイテムをコピー可能にするという切り口は、メタバースにおける市場形成を考える上で重要になるだろう。

 輸入のみならず、メタバースから輸出されるものもある。メタバースファッション専門アパレルブランド「ポリゴンテーラーファブリック」からは、人気アバター「メリノ」の着ている服が、アパレル製品として販売が決定した。羊の美少女である「メリノ」が纏う衣服はカジュアルで、今回のアパレル化に際してはユニセックスなリデザインが施された。VRChatユーザーにも愛用者が多く、株式会社Shiftallでは「HaritoraX」のキービジュアルにも採用されている「メリノ」は、日本の『VRChat』カルチャーを象徴する存在になるかもしれない。

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