『Weekly Virtual News』(2022年2月7日号)
五輪関連行事でバーチャルシンガーが歌い、バーチャルシンガーは「ひとりの女性」として新たな挑戦へ 最前線プレイヤーたちの選択
北京冬季オリンピック開会の一ヶ月前、「相約北京」オリンピック文化祭・第22回「相約北京」国際芸術祭の開会式にて、中国を代表するバーチャルシンガー・洛天依がステージの上に立った。株式会社LATEGRAが演出に関わった(※1)というそのライブは、実際のステージ上にCG映像を重ねるARライブであると思われる。はっきり言って、圧巻の映像だ。盛大な演出の中で、洛天依は違和感なく”そこ”に立っていた。
VOCALOIDを出自とする洛天依は、いまや中国語圏のバーチャル関連イベントにとどまらず、様々な場面で活動を展開している。その集大成が、国の一大イベントとも言える五輪関連行事への出演というのは、世界全体でバーチャルな存在の実装が進んでいることを指しているのではないか。洛天依によるパフォーマンスは、2月3日にbilibiliにてアーカイブが公開され、日本からも視聴が可能だ。(※2)
一方で、国内の冬の定番イベントである『さっぽろ雪まつり』は、今年はオンラインのみの開催となった。しかし、こちらでもバーチャルな取り組みが行われている。メタバースにて開催される『バーチャル雪まつり2022』だ。本家『さっぽろ雪まつり』公認である本イベントは、昨年に続く開催となる。「cluster」「VRChat」に設けられた会場では、VRアーティストがVRアートツール「Tiltbrush」で作り出した雪像が展示され、アーティストによる音楽ライブや演劇などが開催される。開幕式にて「さっぽろテレビ塔が空を飛ぶ」という大スペクタクルから始まった『バーチャル雪まつり2022』は、2月12日まで開催中だ。
メタバース上での興味深い動きをもうひとつ。この連載でも取り上げたにじさんじEN公式ワールド「NIJISANJI Express」が、2月1日をもって公開を終了した。その公開最終日に、「にじさんじEN」のメンバーとのファンミーティングが、同ワールドにてサプライズ実施されたのだ。Selen Tatsukiを含め数名が同ワールドにランダム出没し、ファンとの交流を終日実施したとのことで、「所属タレントとファンの直接的な交流を禁止する」と定めるにじさんじでは異例の出来事である。特例として今回許可が降りたのは、それだけの価値があると運営も踏んだのか、はたまたタレントの熱量に押されたのか。ミーティングの様子は、ハッシュタグ「#NIJISANJIExpress」(※3)から見ることができる。
にじさんじといえば、2018年から2019年にかけて放送された公式番組『にじさんじのくじじゅうじ』が、2月3日の「にじさんじの日」に一夜限りの復活を果たした。VTuberによる外ロケを筆頭に、その体当たりな内容はいまでも「おもしろかった」という声を聞く、VTuber業界初期の代表的な番組だ。実に3年ぶりに放送された同番組は、飛躍的に成長した技術力と3Dモデルによって映像クオリティが見違えるほど向上したが、番組のノリは健在だった。にじさんじ入門編……にはエッジが効きすぎな気もするが、気になる方はぜひチェックしてみてほしい。
月の変わり目ゆえか、先週は業界的な変化も多く見られた。Kizuna AI株式会社では代表取締役が退社し、日本テレビのVTuber事業は、グループ会社の再編統合によって分社化が決定した。バーチャル展示即売会『パラレルマーケット』主催の朝比奈あおみ氏は、VR・メタバース領域のコンサルティングや制作を事業とする、株式会社アオミクリエイトを設立した。個人レベルの動きも各所で見られた。バーチャルシンガー・YuNiの動きも、その一つだ。