中国で200以上の小学校や高校が、AIでスマートキャンパス化に成功した背景

中国、スマートキャンパス化成功の背景

 コロナ禍をきっかけに、学校現場ではパソコンやタブレットをフル活用したオンライン授業へと移行するなか、米国・ラスベガスに拠点を置くRemark Holdings, Incによって提案されたのが独自技術である「KanKan AI」実装によるスマートキャンパス構想だ。

 ラスベガスやロサンゼルスのほか、中国の北京や上海、成都、杭州にオフィスを構えるRemark Holdings, Incは、統合型のAIシステムをもって金融や小売、建設、HR業界の企業や組織が抱える問題の解決やリスク回避のために挑んできた。同社の発表によると、2021年6月8日現在、中国の小学校から高校まで200以上の学校においてスマートキャンパスシステムを導入している。

 中国でのスマートキャンパス計画はひとまず功を奏し、杭州市の現地メディアは杭州・西湖区での教育活動の再開において極めて重要な役割を果たしたとして、「KanKan AI」に対して高く評価。特に、杭州市内にあるアーツ&サイエンス小学校に至ってはスマートキャンパスのロールモデルとして、西湖区の教育局により正式に認められるに至った。スマートキャンパスの評判は中国国内の他の州や都市にも広まり、世界の教育を支える新たな概念として定着していくことだろう。

 コロナ禍ではオンライン授業へと切り替えた学校も少なくないが、一時的な措置にとどまらず、恒常化していこうという狙いがこのスマートキャンパス構想にあり、感染症の予防・制御といった機能を実装。具体的には、生徒がキャンパス内に入る前に健康状態をモニタリングしたり、独自技術であるコンピュータビジョンや、事前に生成されたQRコードを使ってキャンパス内への侵入を制御したり、学生の出席状況や、教職員を含めた健康状態を自動化したり、タッチフリーで教室や自習用のプライベートルーム、理科室や体育館へ移動したりといった機能が挙げられる。こうした機能を実装することで、手動による作業の手間が省けるほか、省電力や温室効果ガスの削減にも繋がるため、概ね学校の教職員の負担軽減や、地球環境を配慮した社会創出の面での期待が大きいという。

 世界的パンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症の原因が何であるのかについてはいまだに突き止められていないけれども、ハーバード大学公衆衛生大学院などによって考えられている原因のひとつが気候変動だ。現時点においてCO2排出量の削減目標の達成までの道のりは長く、地球温暖化が緩和されない限り、感染症のリスクと対峙することになるであろう。新型コロナウイルス感染症が終息した後も、世界的パンデミックに直結する感染症が数年単位で発生し得ることは想定内のケースであり、万が一に備え、学校現場において感染症に適応可能な体制を整えておくことは賢明な手段と言える。

 さらに、Apple製品のみでスマートキャンパス化を企てる大学も。Apple製品のみでスマートキャンパス化の実現が可能であると見込んだ米国のバージニア・ユニオン大学は、2025年以降に入学する学生を対象に、Apple製品(iPad Air、Apple Pencil、Smart Keyboard Folio、Apple Watch、AirPods Pro)を支給することを同大学のホームページ上で発表している。Apple製品を用いていつでもどこでも受講できる体制を整えるほか、Apple WalletでStudent IDを提供することで、安全かつシームレスな学生生活を保証。日々の健康管理についてはApple Watchで完結する。さらに、全学年を対象としたApple製品によるコーディングやアプリ開発に関するカリキュラムを予定しており、卒業後のキャリア支援に至るまでApple製品のみで学生を全面的にバックアップすることが可能だ。

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