『New ポケモンスナップ』は、なぜ「不自由なゲームシステム」を継承しても高評価を得たのか？　その意義を考察する

　『ポケモンスナップ』シリーズはほかのレールシューターと同様、「行動の最適化」の楽しさを部分的に味わえるものの、ストイックさとは無縁だ。なぜなら本作は「一枚一枚の写真をより良いものにする」ことが目標になるため、1プレイを通して集中力を切らさない意識や、それまでの努力がすべて水の泡になるような徒労感といった、この手のゲームを楽しむハードルを引き上げている要素が、ことごとくなくなっているからだ。

　レールシューターにおける「行動の最適化」という玄人向けだったゲームの楽しみ方を、そうとは気づかずにカジュアルなゲームファンも夢中で満喫できる。これを達成した『New ポケモンスナップ』の功績は、自由度が高いゲームがたくさん存在するいまこそ大きく、それが新鮮さとして多くのプレイヤーに受け入れられているのではないかと思う。

　フィールドごとにレベルが設けられており、数多くの発見をすれば経験値が増えてレベルが上昇。レベルが上がればポケモンの出現パターン、行動パターンが変化するといったRPG的な要素も、このゲームの本質を巧みにカモフラージュしている。また、撮った写真をお好みで加工できる「エクストラ撮影」や、ネットワークでの共有機能など、人によってはむしろこちらがメインと思えるような、人と人を繋ぐ現代的な機能も盛り込まれているなど、多様なニーズにも対応しており、隙がない。

　もちろんポケモンたちの仕草の自然な可愛らしさといった作り込みも、本作を評価する上で見過ごしてはならない部分だ。

　ストイックさを脱臭し、本来ハードコアになりがちなゲームの楽しさを、多種多様なプレイヤーが受け入れ、楽しむための土壌をつくる。任天堂やポケモンがずっと行ってきた試みではあるが、『New ポケモンスナップ』も、そうした試みにおける大きな達成のひとつと言えるだろう。

■小林白菜
ゲームやアニメーション、漫画などを中心に、作品の魅力について紹介する記事を複数のメディアに寄稿。アニメーションでは『プリキュア』シリーズや『アイカツ！』シリーズなど、女児向けの作品を特に好んでいる。
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