「境遇を楽しむのは『ヤケクソにならない』ため」 空間演出ユニット・huezが振り返る2020年のライブ演出

「境遇を楽しむのは『ヤケクソにならない』ため」 空間演出ユニット・huezが振り返る2020年のライブ演出

ーー昨年から今年の頭にかけて演出に携わっていたCY8ERさんの武道館ライブ『CY8ERなりの横浜アリーナ』についてはいかがでしょうか。

としくに:そうですね。コロナとCY8ERと向き合う1年だったと思います。CY8ERに関しては、プロデューサーの苺りなはむが方針とかコンセプトを明確に持っていたので、それをどうやって叶えるか、というようなスタンスでした。昨年の大きいライブだと、7月にやった「伝えたいこと」というライブ。コロナ禍で有観客ライブができなくなってしまい、どうしようか、というときにりなはむさんとMVチームとhuezの3人で話して。誰かから「ワンカットでやるのはどうかな」という話が出て、それだけだとつまらないので「ワンマンライブをワンカットでやったらびっくりしますよね」と僕が言ってしまったのがいけないんです(笑)。ライブ自体の構成も一緒に組んで、かなり密に作業しました。学校を舞台にワンカットで撮ったライブで、歌いながら学校のあちこちを巡ってライブをするんですが、僕らは最後、体育館のライブシーンの演出を担当しています。

CY8ER「 伝えたいこと 」

としくに:地味なテックでいうと、レーザーってあらかじめフレームレートを映像と合わせておかないとチカチカ映っちゃうんですけど、その見栄えを逆手に取った演出を組んでいます。これは映像でしかできない表現です。調整がめちゃめちゃ大変なんですけど、メンバーが体育館に来るまでは時間があったので、ずっとそのフレームレートの調整をしてました。

 今だからもう言っちゃって大丈夫だと思うんですけど、実はCY8ERの配信ライブって基本、全部収録なんですよ。映像作品として考えたら編集した方が絶対にいいものが作れるのは事実なんですよね。生配信でライブをするなら、生でやっていることの意味を持たせないといけない。でんぱ組.incのライブではTwitterのタイムラインをリアルタイムで流したりしていますし、生配信をやるアーティストさんには「やるなら絶対コメント読みをやった方がいい。生でやってるってことを伝えないと」と言っています。CY8ERはそういう点を徹底していて、「エアサイバー」っていう名前でいくつか無観客の配信ライブをやったんですが、このライブは全部収録なんですよ。で、配信中にメンバーがファンと一緒にそのライブを視聴して、リアルタイムにコメントを残していくんです。メンバーがライブのことを回想していくスタイルで、これはこれで盛り上がるのを見ていて、賢いやり方だなと思いましたね。うちもエフェクトやVJを入れていたんですが、後編集なのでトラブルもありませんでした。武道館の解散ライブでは生配信を用意しましたが、実はあれが最初で最後の生配信なんです。武道館の解散に向けて作りこんでいる流れが見えましたし、あれは正解のやり方だったなと思ってます。

CY8ERなりの横浜アリーナ at 日本武道館

 武道館の企画自体は去年の4月くらいからずっと進めていて、セットリストが決まって演出を組み始めたのは去年の9月くらいでした。りなはむさん本人からは「40曲やりたい」というオーダーが明確にあったので、こっちはそれを叶えるためにもうひたすら演出を組むしかない、みたいな。

ーー武道館ライブは初の生配信ということでしたが、配信と生で見映えを変えたり、といった演出はあったのでしょうか。

としくに:これはメンバーやマネージャーさんとも話したんですけど、配信はもうスイッチングアウトのみで、別途演出などはかけない、と最初から決めていました。ただ、配信と生ではラストの演出が少しだけ違います。それはエフェクトとかのレベルじゃなくて、もう曲から違う、みたいな感じです。本人も言ってるんですけど、生で観た人と配信で観た人ですこしだけ物語の捉え方が変わるような、そういうテイストの演出だけ入れて、あとは基本的にまんま出しただけです。

――生の舞台自体がド派手で驚きました。

としくに:そう。「もうこれ観てくれればいいよ」って思ってました。あと解散ライブの配信は生でやっている姿をただただ見せることが一番いいと思っていたので。あの規模になるとメンバーにずっとピンスポットが当たっているので顔は絶対明るく見えるしね。

ーー様々な規模の会場で演出を担当されているかと思いますが、武道館ならではの苦労話などはありますか?

としくに:武道館自体はレーザーだけとか、VJだけとかで入ったことはあるんですけど、ビジュアル部分の演出を全部ウチがやる、というのは初めてでした。単純にやったことがない規模だったので大変でしたね。会場の規模でいうと、中野サンプラザみたいなホールでのライブよりも一段回大きな会場として武道館や両国国技館があると思うんですが、ここにはすごい大きな一線があるんです。そもそも仕事の進め方や企画の流れ方、いうなれば「仕込み方」が全然違うんですよ。

 たとえばライブハウスでライブをする場合って、ぶっちゃけた話、2週間前にセットリストが決まっていなくても演出サイドはちょっと困りますが、大丈夫なんです。それが武道館になると、2か月前にはセットリストを確定して大体の舞台の流れをまとめて会場側に提出しないといけない。

 しかも武道館って、スポーツや武道をするための会場であって、音楽をやるための施設ではないので、たとえばそもそも照明を吊るすバトンが存在しないんですよね。だから「バトンをここに入れて」みたいな、舞台の形を決めるところから演出を組むんです。極端な話、でっかい箱以外に何もない場所の中で、灯体とかプロジェクターをどこにどのくらいどうやって置くのか、それを全部自分たちで考えないといけない。バトンを作るってなると施工屋さんとかとびの方とかにも話をしないといけない……進め方の規模感がもうゼロイチのレベルで違うし、全部初めてのことだったので本当に大変で……。しかも解散ライブだから、当たり前の話ですけど超盛り上げなきゃいけないのもあるし、「観ていて飽きないような舞台づくり」にはすごい悩みました。

 CY8ERのライブって毎回90分くらいなんですが、武道館は本編が2時間半くらいあるんですよ。まず僕が思いつく範囲で演出を言いまくって、それをYAVAOに取りまとめてもらって。普段だとYAVAOはオペレーションやVJの制作をやることが多いんですけど、今回はほぼとりまとめに徹してもらいました。VJだけで2列くらいパソコン並んでて、その中で構成組んでもらったり。

 あとはコロナ禍で、使える時間帯もお客さんをMAX動員できるのかもわからなくて、しかもヒヤッとしたのがライブ直前に緊急事態宣言が出ちゃったんですよ。だから「最悪当日全配信に切り替えることもあり得る」っていう緊張感で作業してましたね。YAVAOはどうだった?

YAVAO:僕は映像作るのが一番大変でしたね、量がものすごかったので。映像だけで1.5か月くらいかかってます。あとは遅延対策のために映像ミキサーを取り扱うセクションとのやりとりを結構みっちりさせてもらったり。当日の調整時間が少なかったのもきつかったですね。

ーーアーティストさんと密接に関わって制作するモノもあれば、レーザーだけ、VJだけ、というような単体のお仕事もされていて、かなりアグレッシブに活動している印象があります。

としくに:そうですね、「huezさんにお願いします」といただく仕事もあれば、普通の制作業者として受けているような、名前を出すタイプじゃない仕事も結構あって、Twitterに出してるのは多分全体の3割とか4割ぐらいなんです。テクニカルディレクション・ディレクター・照明・レーザー・VJなど、いろんなことをできるプレイヤーで構成されているので、外から見ても「とりあえずhuezに頼んでおけば成立させてくれる」という見え方になってきた気がしていて、それが配信ライブの増加と噛み合って、たくさんお仕事をいただけたのだと思います。先程の話にもありましたが、やっぱりコロナでみんな「どうやってライブ演出すればいいの?」という空気になってしまった瞬間があって。クライアントさんも無観客っていう状況が初めてで、配信で1時間やって舞台が”持つ”のかも、いまいちわからない。そこに僕らが入って「これはこうすれば”持つ”と思います」「これが喜ばれると思います」と判断していく。そういう意味だと僕は新鮮で面白かったですね。

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