Instagram ReelsとTikTokの差って? 縦型動画を使い分ける若者のコミュニケーション術を分析
2020年8月6日(日本時間)にInstagramへ実装された新機能「Reels(リール)」。それまでTikTokが覇権を握っていた縦型動画市場に新たな風が流れたことは記憶に新しい。
それぞれの媒体を見ていると、ユーザーは明らかに異なる文化のもとに投稿を楽しんでいるように感じる。一見同じような縦型動画媒体であるが、機能や歴史の違いが影響しているのだろう。
そこで本記事では多くの企業アカウント運用を支援してきた筆者の考える、2媒体の調査データなどから各媒体のユーザーインサイトの違いを紐解いていく。 これにより、企業やインフルエンサー(を目指す方)が媒体に合わせたコミュニケーション戦略を立てる助けとなれば幸いである。
TikTokは2016年(国際版は2017年)にサービス開始された縦型動画SNSで、日本における月間アクティブユーザーは950万人と発表されている(2019年2月現在)[1]。
TikTokの大きな特徴として、”meme”(ミーム)やトレンドタブの存在が挙げられる。ミームは「○○チャレンジ」のように、特定の音楽に合わせた踊りや表情遊びなどを指す。一定量の人気を獲得したミームはトレンドタブで特集され、より多くの人の目に触れることで更なる人気を獲得できる仕組みになっている。
さらにTikTokには、登場から覇権を握るまでの流れにも特徴がある。リリース当時のTikTokは15秒の短尺動画専門で、主流の動画内容も口パクと手軽なものであった。この手軽さが学生を中心とする若いユーザーに受けた結果、今日までの発展を見せているのである。この傾向は今でも大きくは変わらない。エフェクトに趣向を凝らした動画も増えてきてはいるが、派手なエフェクトの少ない動画が現在も広く受け入れられている。
現在では凝ったエフェクトの少ない動画の内、カットを多用して場面を目まぐるしく変えるテンポの良い動画の評価が特に高まっている印象がある(企業事例ではほっともっとさんが参考となる)。数多くの動画が投稿されている中で、注目を集めやすい形式がこのようなカットを多用した動画なのだろう。
このようにTikTokでは目に付きつつも飾りすぎず、興味を惹き、真似したくなるコンテンツの人気が高まりやすいと言える。
一方、リールはInstagramの機能の一部として2020年8月に実装された。正確なユーザー数は不明であるが、ある調査[2]によると以下の推計が成り立つ。
・実装直後、日本のInstagramユーザーの32%がリールを認知している。
・その内、85%が投稿か閲覧をしたことがある。
・日本のInstagramユーザーは3300万人といわれている[3]。
=実装直後の段階で、日本には既に900万人近くのリールユーザーが存在した。
リールにはトレンド機能が現在実装されていないため、ミームのように投稿の大流行はしにくくなっている。ただSNS上の証言や経験則から、リールには独自のアルゴリズムにより、多くのユーザーに好まれると判断された投稿が多く配信される仕組みにはなっているようである。
リールの最大の特徴は、Instagramの一部であること自体だと考える。これまでにフィード、ストーリー、IGTV、LIVE、まとめ機能などで築き上げてきた「映え」「チル」の文化がほぼそのままリールに流れていると感じる。これも感覚にはなるが、TikTokよりもリールには少し「飾った」ような動画が多い印象を受ける(料理動画や旅動画など)。
リールを多く投稿しているアカウントのフォロワーが大きく増えているといった報告も様々な場所で耳にする。現状リールは非フォロワーへの接触に強いようだ。新規のフォロワーを獲得してファン化を促すために、リールはフィードやStoriesで展開されるアカウントの世界観の補強のような使い方が今後増えていく可能性も高いだろう。
以上のことから、一見同じようなTikTokとリールであるが、細かな機能や成長過程の違いから、まったく異なる文脈でユーザーに受け入れられていることが分かる。