INFOBARなど「デザイナー監修スマホ」はどこへいったのか

「デザイナー監修スマホ」はどこへいったのか

 近年、スマホのデザインは均一化の一途を辿っている。前面はフルディスプレイが当たり前となり、唯一特徴のある背面も、スマホカバーによって個性を失った。今の時代、ユーザーがスマホに求めるのは、デザインではなく、性能や料金になったのだ。

 しかし、スマホが普及し始めたころには、目を引くデザインが数多く登場していた。「au Design project」の中心人物である深澤直人をはじめ、吉岡徳仁や原研哉など、名だたるデザイナーが関わってきた歴史がある。

 そこで今回は、デザイナー監修スマホの歴史を振り返りながら、スマホのデザインについて考えていきたい。

携帯電話時代から続く、デザイナー監修プロダクト

 スマホのデザインを振り返る前に、携帯電話時代をおさらいしておこう。携帯電話のデザインに、デザイナーが関わり始めたのは、「au Design project」の存在が大きい。2002年から始まった本プロジェクトは、国内外のデザイナーを巻き込んで大きな話題となった。

 こうしたデザイナー監修携帯は、「デザインケータイ」と名付けられ、ひとつのムーブメントを巻き起こしたといえる。

 その結果、第1弾「INFOBAR」、第3弾「talby」、第5弾「neon」、第6弾「MEDIA SKIN」は、ニューヨーク近代美術館の収蔵品として登録された。

 また2009年からは、オリジナルブランドとして「innovation」「imagination」「design」「art」の頭文字をとった『iida』を発足し、デザインケータイだけではなく、スマホも手がけるようになった。

 そんな「デザインケータイ」の功績は、スマホにも受け継がれることになる。

デザイナー監修スマホの全盛期

 携帯電話時代のプロダクトデザインをけん引してきたのが、日本を代表するプロダクトデザイナー・深澤直人だ。「au Design project」の中心人物であり、「INFOBAR」をはじめ、数多くの名作を世に送り出してきた。その才能は、スマホのデザインでも遺憾なく発揮される。

「INFOBAR A01」

 「INFOBAR A01」は、2011年5月に『iida』の第10弾として発売された、INFOBARシリーズ初のスマホだ。これまでのINFOBARシリーズを受け継ぐデザインと、インターフェイスデザイナー・中村勇吾がこだわり抜いた「iida UI」の一体感が楽しめるスマホになっている。

「INFOBAR C01」

 「INFOBAR C01」は、2012年2月に『iida』の第11弾として発売されたスマホだ。テンキーを搭載し携帯電話に近いデザインに仕上がっている。前作に比べて、タイルキーの面積が増えており、よりINFOBARらしいデザインに近づいた。携帯電話の良さとスマホの良さが混ざり合った1台だ。

「INFOBAR A02」

 「INFOBAR A02」は、2013年2月に『iida』の第12弾として発売されたスマホだ。INFOBARシリーズおなじみのタイルキーはなく、現在のスマホに近いデザインとなっている。ヌルヌルとゼリー状に動くUIや、「Cornelius」の小山田圭吾によるサウンドデザインなど、これまでにない試みが面白い1台だ。開発は台湾の電子機器メーカー・HTCが担当しており、INFOBARシリーズ初の海外製という点も見逃せない。

「INFOBAR A03」

 「INFOBAR A03」は、2015年2月に『iida』の第13弾として発売されたスマホだ。INFOBARの原点を感じさせる、タイルキーやカラーリングを実現した。また筐体には、アルミボディを使用しており、スタイリッシュなデザインが特徴的といえる。他にも、クリエイターやファッションブランドとコラボするなど、従来のスマホの枠に収まらない動きを見せた。

 続いて、グラフィックデザイナーとして活躍する佐藤卓のスマホを紹介しよう。

 「Optimus LIFE L-02E」は、2012年12月にドコモから発売されたスマホだ。本作は「Slice of Life」をテーマに、素材をスライスしたようなイメージでデザインを作り上げている。同氏が携帯電話時代に手がけた「P701iD」や「P702iD」を彷彿とさせるデザインが魅力的だ。

 次に紹介したいのは、プロダクトデザイナーとして活躍する吉岡徳仁のスマホだ。

「MEDIA SKIN」

 携帯電話時代には、「au Design project」にて、ニューヨーク近代美術館の収蔵品として登録された「MEDIA SKIN」をはじめ、基盤が透けて見えるデザインが個性的な「X-RAY」などを生み出した。

「X-RAY」

 そんな彼が手がけた「Fx0」は、2014年12月にauから発売されたスマホだ。本作では、「X-RAY」と同じスケルトンデザインを採用している。同氏らしい素材感を生かしたデザインが特徴的だ。また背面カバーのCADデータを公開したり、「Fifefox OS」を搭載したりするなど、実験的な試みで話題を集めた。

 最後に、無印のデザインなどで知られるグラフィックデザイナー・原研哉のスマホを紹介したい。

 「らくらくスマートフォン3 」は、2014年7月にドコモから発売されたスマホだ。同氏は、携帯電話時代からシニア向けの「らくらくホンシリーズ」に携わり、ユニバーサルデザイン的なアプローチを実現してきた。

 本作では、本体とUIデザインを担当しており、カラーを統一した一体感のあるプロダクトを生み出している。また、ホーム画面には大きめのボタンを採用、文字やアイコンの大きさ、コントラストにもこだわり、高い視認性を実現した。

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