わずか1台で終焉した、世界初のノッチ搭載スマホ『Essential Phone』 開発者である“Androidの父”が残した軌跡に迫る

わずか1台で終焉した、世界初のノッチ搭載スマホ『Essential Phone』 開発者である“Androidの父”が残した軌跡に迫る

 Essential Productsは2017年5月、『Essential Phone(PH-1)』を発表した。世界初ノッチ搭載ディスプレイ。チタンとセラミックの重厚な外観。ロゴも印字もない背面。その佇まいは、当時のスマホ市場で異彩を放っていた。

 あれから約3年。わずか1台のスマホを最後に、Essential Productsは解散の運びとなった。数々のアイデアと先見の明で注目されたEssential Productsとは何だったのか? 本稿では、Androidの父が残したEssential Productsの軌跡に迫っていく。 

Androidの父・Andy Rubin氏が目指したもの 

 Essential Productsを語る上で重要な存在が設立者であるAndy Rubin氏だ。 

 彼の存在がなければ、現在のスマホ市場は大きく変わっていただろう。なぜなら彼は、2003年にAndroid社を設立し、「Android OS」を開発した張本人だからだ。2年後にはGoogleから買収され、同氏はAndroidの責任者として技術部門副社長を務めた。こうした背景もあり、「Androidの父」と呼ばれている。 

 そんな彼は、常にガジェット市場の最前線にいた。Appleの子会社である「General Magic」在籍時には、Magic Capと呼ばれるOSの開発に携わり、Motorolaの「Envoy」というPDA(携帯情報端末)を担当。元Apple社員を中心に設立した「Danger」では、スマホの先駆けといわれる「Sidekick(Danger Hiptop)」を開発した。 

 そして彼が次に目指したのは「iPhoneやGalaxyを超えるスマホ」だった。2015年11月、その野望を実現するため、AppleやGoogleの元社員を招集し「Essential Products」を創業する。

Essential Phoneのプロダクト的魅力

 Andy Rubin氏から依頼を受けたのは、若くしてデザインチームを率いるLinda Jiang氏だった。彼女は、当時のAndroidスマホに少なかった、「モダンで洗練されたデザイン」の開発に着手する。そして2017年5月、『Essential Phone(PH-1)』を発表した。 

 世界初ノッチ搭載ディスプレイ、極限まで削られたベゼル、頑丈なチタンフレーム。加えて、高級感のあるセラミックパネル、ロゴや印字のない背面、出っ張りのないカメラなど、あらゆる点にこだわった1台だ。 

 また将来を見据えた拡張性にも注目が集まった。本体には磁石が内蔵されており、ここに周辺機器を装着することで機能を拡張できる。実際に、全天球カメラ『360 camera』や、日本未発売のヘッドホンアンプ『Audio Adapter HD』が発売された。 

 初期カラーは、ブラックムーンと少し遅れて登場したピュアホワイトの2色のみ。その後、限定色としてオーシャンデプス、ステラーグレー、カッパーブラック、ハログレーが追加される。 

 価格は699ドル。発表時の評価は上々。スマホ市場の期待は一気に高まった。

 しかし、細部まで完成されたプロダクトとは裏腹に、発売前後の不具合やトラブルは後を絶たなかった。 

わずか1台で終焉 

 相次ぐ社員の退社、顧客データの漏洩、発売の遅延、タッチの不具合……。 

 発売前後の度重なるトラブルは、Essential Productsの評価に大きく影響した。その結果、想定より売り上げが伸びず、発売当初から窮地に追いやられる。699ドルだった価格は、すぐに499ドルに値下げ。最終的には200ドル台まで下がるほどだった。 

 スペック自体は、Snapdragon 835、4GBのメモリ、128GBのストレージ、豊富な対応バンド、ピュアAndroidとミドルレンジモデルとしては問題のないレベルだったが、ソフト面での不具合は多く、発売当初から厳しいレビューが散見された。 

 しかし本製品を愛用していた筆者としては、ソフト面よりもハード面における不具合が多く、日常的に使う際のストレスになっていた。ソフト面に関しては、アップデートを重ねていくうちに改善された印象だ。特に、数々のトラブルに直面しながらも、常にアップデートを怠らなかった点は企業努力といえるだろう。 

 日本では、2018年4月から公式サイトで購入できるようになり、同年9月からIIJmioや楽天モバイルで取り扱いが開始されたが、この時点でEssential Productsはモバイル製品開発の打ち切りを発表している。 

 そして2020年2月12日、Essential Productsは創業5年目にして閉鎖を迎えた。彼らの動向に注目していたユーザーにとっては必然的な解散といえる。特に、Andy Rubin氏の”ある疑惑”が追い討ちをかけた形だ。 

 こうしてEssential Productsは終わりを告げ、数々のユニークな端末は日の目を見ることはなかった。 

 最終的にEssential Productsが発売した製品は『Essential phone(PH-1)』のみ。その他に発売されたのは、周辺機器の『360 camera』、および日本未発売の『Audio Adapter HD』だけだ。 

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