Spotify、念願の韓国上陸も“苦戦”強いられるか 現地在住ライターが分析
Spotifyは韓国音楽市場に大きなインパクトを与えられるか
そもそも韓国におけるApple MusicやSpotifyの進出は日本におけるそれとは180度意味が異なる。日本でApple MusicやSpotifyのサービスが始まった時、多くの日本のユーザーにとってそれは「音楽ストリーミングを初めて体験する」機会だったが、先に2000年代から国内発のストリーミング・サービスを使ってきた韓国のユーザーにとっては「他のストリーミング・サービスから乗り換えるかどうか」を意味するのだ。つまり、韓国のユーザーがApple MusicやSpotifyに加入するには、いま使っているサービスをやめて乗り換えるだけの理由、魅力が必要なのだ。また、Spotifyは韓国で、月額1万900ウォンでサービスを開始したが、これは既存の韓国国内ストリーム勢力の月額利用料の平均8,156ウォン(月緑色消費者自然連隊全国協議会調べ)よりも約25%高いという*2。こうした前提がある上で、カカオMと音源提供の契約が結べていない以上、筆者も韓国でのSpotifyのシェア拡大は難しいだろうし、時間がかかると考える。
だが、これはあくまで現時点までの推移だけを考慮した見解だ。カカオMは今週、メディアからの質問に対して「Spotifyと音源供給に関して協議中」と答えており*3、Apple Musicとは違い、時間はかかってもいずれは音源提供に合意する可能性もある。また、Apple MusicやSpotifyなど特定のサービスに対して音源を供給しないカカオMの方針に関しても、韓国の各メディアの記事には「公正取引法上の談合など問題になりかねないという懸念も出ている」といった指摘がされている*4。
実際、筆者の周りの韓国人の音楽リスナー、ミュージシャンの間ではSpoifyの上陸が待ちきれずVPNを使って海外アカウントを作りSpotifyを以前から利用していた人も多数いた。それだけSpotifyの保有する音源の多様さ、プレイリストやビッグデータを活用したおすすめ機能などが、国内発のサービスよりも魅力的に映ったからだろう。Spotifyならではの魅力、長所が少しずつ広まれば、長期的には韓国音楽市場に大きな影響を及ぼす可能性は十分に考えらえる。その時にはきっと、韓国の一般大衆がより多様なジャンル、歴史や地域を超えて作品に接し、韓国の音楽シーンそのものがより多様性を纏った新たな魅力を聴かせてくれることだろう。
(画像=Unsplashより)
■山本大地
1992年生まれ。ライター。海外の音楽を中心に執筆。2016年まで「Hard To Explain」、2019年11月まで「TURN」編集部に所属。2019年12月から韓国ソウル在住。
執筆歴等
〈Source〉
*1 「韓国音楽市場は国内音楽に関する選好度が高く、多様なジャンルを探して聴く少数のマイナーな人でなければ、国内音源プラットフォームで十分に音楽鑑賞が可能なため」と理由を挙げるヘラルド経済*1
*2 これは既存の韓国国内ストリーム勢力の月額利用料の平均8,156ウォン(月緑色消費者自然連隊全国協議会調べ)よりも約25%高いという*2
*3「Spotifyと音源供給に関して協議中」と答えており*3
*4「公正取引法上の談合など問題になりかねないという懸念も出ている」といった指摘がされている*4。