『PUI PUI モルカー』ブレイク前夜、監督・見里朝希が語った“制作秘話” 「声優はモルモット以外の選択肢がなかった」
対をなすモルカーと人間 モルモットを声優に起用した理由とは?
話はいよいよ『モルカー』に移った。宇多丸が「何人で、1話あたり何ヶ月で作っているのか」と訊ねると、見里は「アニメーターとしては自身を含め4人、誰々が何話担当だとかいった感じで振り分けていった」と答えた。詳しくは「色んなことが同時進行していたので、ちゃんとした時間は出せない」と断りつつも、「撮影のペース的には1つの班でアニメートして、よくて1日4、5秒とかくらいで、難しいカットでうまく行かない時とかは、1日1秒いくかいかないかという感じ」と明かした。
宇多丸の「基本的にサイレントでセリフがないのは」といった質問には、見里は「現実世界の車がモルモットになったというコンセプトだったので、モルモットをメインに立てるべきだと考えて、その時点で声優はモルモット以外の選択肢はなかった。人間もリアルでも、ジオラマ人形みたいに表現できてると面白いのかなと思って、人間も言葉とかセリフを使わずに、全世界の人たちが見られるようなものを目指した」と解説した。
次いでカメラが寄りの時に、人形ではなく人間になっているところでは、人間を人形のようにコマ撮りするピクシレーションを採用した経緯を説明。それには「今後モルカーをグッズ化とか、色んな展開をしていけるといいなと思っていたので、そのうちの1つとして実写の人間がモルカーの車内だけで出てくるようにしたい」との希望があった。
宇多丸は「モルカーの純粋さに対して、人間のものスゴいリアルなダークサイド」と、その視点にも関心を持った。見里は「人間は欲望とか下心を描いてはいるが、モルカーはモルモットらしさを第一に考えているので、意思があるのかないのか無自覚で動いている感じ。人間に使われてしまうかわいそうなところがあるが、必ずしも人間に流されず、モルカー自身の意思で行動を起こす楽しさも伝えられたら」と展望した。
そもそもモルモットがモチーフになっているのは、見里が実際にモルモットを飼っているからでもあった。「犬とか猫とかの鳴き声を知ってる人は多いが、意外とモルモットは知らない人が多い気がする。実際に飼ってみると結構鳴く。決して良い子ぶってるわけでもなく、虚無感というか何とも言えない感じの鳴き声を共有したい」。そう思って見里は、自宅のモルモットに声優を担当させたようだ。
それを聞いて宇多丸は「虚無の鳴き声というか、犬とか意思疎通ができてると考えられている生き物でもなく、もう少し無機的な生き物でもなく。モルモットは感情移入もできるが、何を考えてるか分からない瞬間もあって絶妙」と感心していた。