『PUI PUI モルカー』ブレイク前夜、監督・見里朝希が語った“制作秘話” 「声優はモルモット以外の選択肢がなかった」

『モルカー』監督が語った“制作秘話”

『マイリトルゴート』の制作経緯 怖さは『モルカー』にも通じる?

『マイリトルゴート』公式サイトより。『モルカー』がTwitterのトレンドに入った関連で、『マイリトルゴート』も一時トレンド入りした。
『マイリトルゴート』公式サイトより。『モルカー』がTwitterのトレンドに入った関連で、『マイリトルゴート』も一時トレンド入りした。

 見里がストップモーションを制作してみたいと思ったのは、大学1年のころに見たライカの長編『コララインとボタンの魔女』に感銘を受けてからなのだとか。しかし「(人形などの立体は)平面のアニメーション(カットアウトなど)と違って、たくさんのセットとかカメラとか照明とかが必要で、予算的なところもあって、なかなか学生のうちには手が届かなかったりした」という。

 そして「最初は2Dで作っていて(『恋はエレベーター』など)、卒業制作とかその前の課題制作でようやく手を付け始めた感じ」と経緯を説明し、視聴者とともに『マイリトルゴート』を鑑賞した。本作はグリム童話の『オオカミと7匹の子ヤギ』から着想を得ている(なお『マイリトルゴート』は大学院の修了制作で、大学の卒業制作は先述の『あたしだけをみて』になる)。

 鑑賞後、宇多丸は「かわいらしいモフモフしたヒツジのキャラクターの話と思いきや、ものスゴく恐ろしい背景や物語になっていく。その外側に現実の世界があって、自分たちと接続している世界があるというのは、オープニングから全く思ってもみないところ。1つ1つのゾッとするディテールみたいなのが効いてて、ゾクッとする瞬間を何回も感じた」との所感。

 作風についても「『モルカー』もやっぱり怖いところがあるが、イヤなことするなと思ったのは(笑)、最後に家の中で、オオカミというか、お父さんが倒れているところで、彼がやってたことの現実の部分がより際立ってしまう。でも見終わっても物語に解釈の余地がある」と評した。

 見里は『マイリトルゴート』を制作しようと思ったことに関して「もしそのオオカミの胃袋の中で消化活動が始まっていたら、と想像したのがきっかけ。親の過剰な愛情っていうものが果たして正義なのか、という疑問を見る人に植え付けたかった」と理由を挙げた。

 さらに「育児放棄とか虐待とかは犯罪だが、過保護は犯罪ではない。ただそれをやりすぎてしまうと、一種の洗脳のようなものになってしまって、子供が自分自身を見つける機会を親が奪ってしまっているんじゃないか。善と悪が複雑で、多面的なことも作品に含めたかった。お母さんも子ヤギたちをさらって来て監禁してるという、2種類の虐待を見せられたらいいなと思った」と継いだ。

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