『PUI PUI モルカー』ブレイク前夜、監督・見里朝希が語った“制作秘話” 「声優はモルモット以外の選択肢がなかった」

『モルカー』監督が語った“制作秘話”

『モルカー』のコンテンツが大きくなったら ブレイク前夜の願い

『PUI PUI モルカー』15秒スポット。ヘリコプターの墜落シーンも確認できる。

 『モルカー』全12話中、特に大変だったのはヘリコプターの墜落シーンだったそうだ。見里は「爆発は全くCGとか使っていなくて、懐中電灯とか綿だけを使って作った。カメラのシャッタースピードを遅くして、その間で懐中電灯を動かして爆発っぽく見せている。ヘリコプターも合成とかじゃなくて、デジタル処理で消して浮かせている。その作業もうまくいかなくて大変だった」と振り返った。

 「もともとハリウッド映画とかで、どんどんカメラが動いていって迫力のある映像を見せるっていうのが好きだったので、『モルカー』でもチャレンジした」と見里。実際にやってみると「人形を動かすだけじゃなくて、カメラも24フレーム分動かしていかないといけない。途中でカメラが倒れてしまったりとか、画面がぐちゃぐちゃになって大変」と改めて説明。

 他方で見里は、手でカメラを動かしていくメリットもあると感じていた。「定点カメラの場合、カメラを固定してその中で人形を動かしていくところ、人形やカメラが倒れてしまったら、最初からやり直さないといけなかったりする」。その代わり「カメラが動いている最中だから、そういうトラブルが起きても動きによって若干ごまかせて、意外と気にならなくなる。動かすのは大変だが、そうしたカメラのズレを気にしなくていい気楽さはある」というロジックだ。

 宇多丸はそうした話に聞き入りながら「子供たちを毒気というか、人間のダークネスというか、ちゃんと甘やかさない感じが、(モルカーの)表情の件も含めてとっても信頼できる」と頷いていた。

 それから見里は「かわいいキャラクターがかわいいことしても、ストーリー的には退屈なところがあるのかなと思っている。モルカーたちは決して自分たちをかわいく見せようとはしていない。こんなにボーっとしたキャラクターたちに色んな災難が訪れたりとか、ある意味、主人公たちを追い詰めると作品が面白くなるのと似ている気がする」と総括した。

 最後に宇多丸は「例えばこれが好評で長編とか、何となくそういうビジョンもあったりするのか。成功した上で『マイリトルゴート』級のゴリゴリの大人向けで」と問いかけると、見里は「やってみたい気持ちは確かにある。『コララインとボタンの魔女』でも7年かかっていたりするので、かなり時間が必要な企画なんだなと思う。やる前によほどの覚悟が必要」と神妙になっていた。

 締めとして見里は「あまりモルモットが主人公の作品が存在していなかったりするので、これをきっかけにモルモットの良さを伝えていけたら。『モルカー』がコンテンツとして大きくなっていけたらいいなと思っているので応援よろしくお願いします」と挨拶。その後、見里の願いをかなえるように大きな広がりを見せることになった。

 余談となるが、年明けから年度末までは卒業制作シーズンでもある。見里も卒業制作や修了制作で話題となったり評価を得たりしたことで、早くも次につながった。その兆しが見られる作品があるのかどうか。数年後のためにチェックしておくのもいいかもしれない。

■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「激変!アニメーション環境 平成30年史+1」(著書:自主制作経験者のテレビシリーズ監督年表ほか掲載)など。

■番組情報
『PUI PUI モルカー』
(c)見里朝希JGH・シンエイ動画/モルカーズ

PUI PUI モルカー【公式】

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