海外と日本でアニメの“制作方法”はどう違う? Netflixオリジナル作品『アニメ世界への扉』から分析

海外と日本でアニメの“制作方法”はどう違う?

 日本が誇るアニメ文化。今やNetflixでも数多くの日本発アニメが配信されているので、これまで馴染みのなかった人にもジャパニメーションがリーチできるようになりました。しかしシェア拡充が喜ばしい反面、混乱もさせてしまったみたい。秩序を守り勤勉で礼儀正しいと思われている日本人が、なぜ時に過激で暴力的な描写も含むアニメを作っているのだろうと疑問に思われたらしいのです。そこで、そんなアニメ素人が抱いた疑問から『アニメ世界への扉』(2019年配信)というドキュメンタリーが誕生しました。

 アニメ素人のアメリカ人のアレックス・ブルノヴァが、アニメの世界を知ったことで探究心が刺激され、その不思議な魅力を紐解くべく日本にやってきたという内容です。結論からいうと、本作は、目的である「アニメの謎を探る」ことに成功していません。様々な制作者たちにインタビューしながら見識を深めようと試みるのですが、手探り状態のためアニメの謎は解明できないし、視聴者も混乱させる内容になっています。しかし、Netflixで配信されているアニメ制作者たちの想いや、試みを知ることはできますし、アニメ素人の外国人がアニメを探ろうとすることの難しさも窺い知れる興味深い1本になっていると思います。

カオスな国に圧倒され、無秩序になっていく「巡る旅」

 アレックス・ブルノヴァは、日本にやってきて街を歩き、食を堪能し、ストリートで人に話を聞く中で、アニメが世代を超えて愛されていて、日本文化に根付いていることを知ります。一方で、秩序を守って礼儀正しい日本人が、なぜ多種多様で時に暴力的なアニメを作るのかという疑問を持ち始めます。そこで、日本のアニメ界の巨匠たちに話を聞きに行くわけです。

 実際にインタビューをしている人物はアレックス・ブルノヴァ本人ではなく、もしかするとアレックスの作った質問を託された人物かもしれません。ただ、誰がインタビューしたかは問題ではありません。インタビューの質問の内容が『Vogue』の73 Questionのようなランダムな物ばかりで「アニメとは何」の確信に迫るどころか、謎は深まっていくばかりでした。

インタビュイーの言葉から見るターゲット層への想い

 だからと言って本作が面白くないかといったら、そんなことはありません。マッチョアニメの『バキ』の制作陣がリアルマッチョであることを知れるのは純粋に面白いですし、インタビュイーたちの言葉から感じる、作品のターゲット層への想いには心を打たれるものがあります。

 例えば、東映アニメーションの取締役会長である森下孝三氏のインタビューでは「東映アニメーションは第二次世界大戦敗戦後に、日本の子供たちを勇気付けることを目的に作られた」ことが語られました。それを知ると、東アニのターゲットがあくまで子供であること、友情・努力・勝利の3つが、今なお同社の重要なメッセージであることも納得です。また、東アニの作品と対照的で印象強かったのが『リラックマとカオルさん』と『アグレッシブ烈子』の2作。これらは、現代社会を不器用ながらも賢明に生きようとするOLのあるあるを描いた作品で、ターゲットがニッチであるにもかかわらず、共感力が高くて海外でも高く評価されています。

多種多様なターゲット層へのアプローチこそ日本アニメの特徴か

 筆者がこのドキュメンタリーを通して感じた“日本アニメとは”は、多種多様な人への寄り添いです。日本には漫画文化が根付いており、多少難解であったり、伝えにくい内容であっても漫画にすることで、多くの人たちに伝えることを可能にしてきました。漫画もアニメも同じで、人々に内容を伝える手段の1つとして親しまれてきました。

 昨今、ハリウッドではダイバーシティを重んじるコンテンツ作りが進められていますが、日本はとりわけ、アニメ作りにおいて少数派に目を向けて作品が作られていた印象があります。誰にでも共感してもらえるものではなく、誰かに共感してもらえるもの。それが日本のアニメの特徴のような気がします。

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