『PUI PUI モルカー』ブレイク前夜、監督・見里朝希が語った“制作秘話” 「声優はモルモット以外の選択肢がなかった」

『モルカー』監督が語った“制作秘話”

 1月10日ごろからTwitterでバズリ、一気に大ブレイクした『PUI PUI モルカー』。本作は1月5日からテレビ東京系列「きんだーてれび」内で放送が開始された、ストップモーション(コマ撮り)アニメーションのショートシリーズである。

 本稿では昨年12月18日に開催された配信イベント「1月放送開始!注目のパペットアニメ『PUI PUI モルカー』と監督・見里朝希の世界」から一部を記す。ショート系の作品は長編映画や30分枠のテレビシリーズなどに比べると、事前の露出が限られてしまいがちなだけに、ブレイク前夜を窺える数少ない資料になった。

 登壇したのはラッパーの宇多丸氏、監督の見里朝希氏。進行は宣伝プロデューサーの山本和宏氏が務めた(宇多丸と見里が話すのは今回が初めてとのこと。ちなみに2016年の第10回TOHOシネマズ学生映画祭にて、宇多丸は「ライムスター宇多丸×学生」と題された学生実行委員とのトークショーで来場。当日、見里は『あたしだけをみて』でショートアニメーション部門のグランプリを受賞している)。

ストップモーションの魅力 フレーム数を落としたCG作品との比較

宇多丸(左上)、見里(右上)、山本(下)。
宇多丸(左上)、見里(右上)、山本(下)。

 まず宇多丸は見里に関して「NHKではEテレで『ニャッキ!』(監督:伊藤有壱)とかあったが、最近なかなかない。ライカの作品(素材としてCGを3Dプリンターで出力したものも使っていることで有名)のように、めちゃくちゃお金をかけて作っているわけでもないのに、見たらなかなかのアクション性とかスケール感とかスゴい。メジャー感というか、そういうところも含めて、どういう風に作られているのか興味を持った」と挨拶。

 続けてストップモーションの魅力について「映像という表現の中にしかない、他の表現ではありえない時空間であるのが、ストップモーションという時点で、無条件でワクワクするものがある。この動きが人工的に作られて、我々が錯覚して受け取っている動きとか空間であるわけで、他にはない、そこにしかない時空間って感じが、独特の、見るだけでワクワクする何かにつながっているのかな」と分析した。

 見里は宇多丸の話を受けて「物の質感とか立体感を、1枚の写真としてダイレクトに見る人に伝えることができるところだと思う」と返しながら、「最近はCGもどんどん技術が上がっていって、現実と見間違えるくらいリアルなものを作れるようになった。そうしたCGアニメーション映画で、あえてフレーム数を減らしてストップモーションっぽく見せる映像が徐々に広まってきている。それに対してストップモーションの今後を考えていかないといけない」と現状にも触れた。

 また「実際に手で触って人形(パペット)に直接、魂を吹き込むスタイルそのものを気に入っている。例えば木の質感のものを粘土(クレイ)で作ったり、雲を綿で作ったり、ものを作る時の遊び心というか、自分の手で入れることができるというのがストップモーションの魅力。必ずしも完璧を求めるものでもないのかなと思っているが、それはいい意味で言っていて、作る人にとっても気楽なイメージを持つことができる」と補足した。

 宇多丸も「いい意味で作り物であることの良さ、リアルにしていくよりは、あえてカクカクしてる方がワクワクするのは何でだろうというのはある」と応じると、見里は再度「リアルな映像でもフレーム数を減らすことによって、不思議とコマ撮りっぽく見える。だからこそコマ撮りクリエイターにとって難しい課題、今まさに問題に直面しているところなんじゃないか」と重ねた。

 見里は制作についても「1秒につき24枚分、人形の写真を撮って、そのたびに人形を少しづつ動かして撮影していく地道な作業で、やっていると心が無になってしまうことも多い」との一方で、「プレビューで見てみると、人形だったものに命が宿って動き出しているのを見ることができるので達成感を感じる」と言及。「本当に動いているところを見て、初めてどんな動きかを理解できる。努力した分の動きによって報われるところが魅力なのではないか」と結んだ。

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