VRゲーム国内企業の最前線 MyDearest代表・岸上健人が『ALTDEUS: Beyond Chronos』に込めた“思いと狙い”

VRゲーム国内企業の最前線 MyDearest代表・岸上健人が『ALTDEUS: Beyond Chronos』に込めた“思いと狙い”

 「日本中でVRムーブメントを巻き起こし、世界で大ヒットさせるVRゲームをつくる」ーーこの目標を掲げ、誕生したVRゲーム『ALTDEUS: Beyond Chronos(通称:アルトデウス: BC)』が2020年12月3日、ついに発売された。

 本作を手掛けるのは、VRスタートアップ企業のMyDearest株式会社だ。2019年にVRゲーム『東京クロノス』を発売。VRゲームでは異例の長編ミステリーアドベンチャーゲームでありながら、SteamVR部門売り上げランキング世界1位を記録、Facebookから世界で8つのみ選ばれる“Oculus Essentials”に選定、VRゲームで唯一「ファミ通・電撃ゲームアワード2019 ベストアドベンチャー賞」にノミネートされるなど、国内外から人気を博し日本を代表するVRゲームとなった。

 日本ではまだまだ黎明期であるVRゲーム市場に『東京クロノス』はどのような影響を与えたのだろうか。そして、新作『アルトデウス: BC』には、どのような思いを込めたのか。MyDearest代表取締役兼『東京クロノス』『アルトデウス: BC』総合プロデューサーである岸上健人氏に昨今のVRゲーム市場を振り返ってもらうとともに、前作・今作についてじっくり聞いた。(阿部裕華)

特集「国産VRゲームの最前線『ALTDEUS: Beyond Chronos-』誕生の軌跡」はこちら

日本のVRゲーム市場の未来は明るい

ーー2020年はコロナ禍の影響でおうち時間が増えたことによりゲーム市場全体が伸びていますが、岸上さんから見てVRゲーム市場も伸びている感覚はありますか?

岸上健人(以下、岸上):施設体験型のVRゲームはコロナ禍で被害を受けていますが、自宅型のVRゲーム市場は明らかに伸びていると思います。2019年に発売している『東京クロノス』は、2020年に入っても売り上げが伸びている。また、『東京クロノス』に引き続き新作の『アルトデウス: BC』もクラウドファンディングを実施していますが、支援総額は前作の約2.5倍。前作のファンが支援してくれただけでなく、VRゲーム市場の成長が影響していると感じています。

「Oculus Quest 2」

ーー2020年10月13日には新作VRデバイス「Oculus Quest 2」が発売されました。VRゲーム市場の成長がさらに加速しそうですね。

岸上:「Oculus Quest 2」は性能がアップしているのに価格は安く、これまでのヘッドセットと比較しても軽量化されています。簡単に早く起動できるようになったので、気軽に遊べるのは大きいですね。ただ、一番注目すべきは「Oculus Quest 2」の発売に合わせてFacebook社が日本向けのVR市場戦略の本格化を発表したこと。

 これまでのVRゲームコンテンツは欧米で生まれ欧米のユーザーが買っていたため、日本を含めたアジア圏は参入しにくい雰囲気がありました。しかし、Facebook社が日本に注力すると明言してくれたことで、日本でもVRゲーム市場に参入する企業が増えてくるでしょう。作品数が増えればユーザー数も増えていくので、VRゲーム市場の未来は明るいと考えています。

ーーVRゲームコンテンツの幅も広がりそうですね。

岸上:海外のVRゲームコンテンツに多いフォトリアルなFPSもおもしろいけれど、そればかりだと入りづらいと感じる日本ユーザーは多いですからね。今後はそこが変わってくるかなと。コンテンツが増えて幅が広がれば、海外と日本のVRゲーム市場の差も埋まってくると思います。

「日本のエンターテインメントをVRゲームで世界へ伝えたい」

ーーフォトリアルなFPSが主流だったVRゲームですが、『東京クロノス』は常識を覆した作品だったと思います。VRゲーム市場にどのような影響を与えたと感じていますか?

岸上:自分で言うのも恥ずかしいのですが(笑)、『東京クロノス』は日本のVRゲーム企業の勇気になったのではないかと思います。『東京クロノス』はこれまで「これはナシだよね」といわれていたことを全部やった、“長時間”の“ミステリー”アドベンチャーゲームです。しかし、ここまで王道から外れた作品でありながら結構売れてしまった。「VRゲームってこれでもいいんだ」という空気をつくることができたと感じています。

ーー『東京クロノス』はVRゲームの枠を超え、IPとして展開されているのも新しい試みだなと。

岸上:新しいメディアで新しいIPが生まれ、ほかのメディアにIPが派生されていくことを目指して『東京クロノス』の開発を進めていました。実際、VRゲーム発のIPとしてVRゲーム以外に広げることができたと思います。

 欧米のVRゲームの多くは、リアルさを追求していますよね。それだと日本企業は戦えません。欧米企業と比較して資金力がないから、フォトリアルな作品をつくるのは大変です。何よりフォトリアルが主流になってしまうと、キャラクター文化などの日本のエンターテインメントが死んでしまう。なので、日本企業は得意なキャラクターデザインやゲームデザインを重視してつくればいいと思うんです。デフォルメだからこそつくりやすいですし、世界の人たちに日本のエンターテインメントを伝えることもできる。

 据え置きゲームや携帯型ゲームでは、任天堂やスクエアエニックスなどがバリバリ開発していますが、VRゲームでも同じことをしていかないと未来はないなと。だから、僕らが前線に立って「VRでも日本らしさがあっていいんだ」と思ってもらえるような作品を出していきたい。新作の『アルトデウス: BC』は『東京クロノス』以上にそういった思いが強くありますね。

ーー『東京クロノス』は学園ミステリーでストーリー重視の作品でしたが、『アルトデウス: BC』はSFでゲーム性のある作品となっています。『東京クロノス』とはかなり毛色が異なるので驚きました。

岸上:僕も全く違う感じのゲームが出てきたなと思っています(笑)。『東京クロノス』の次回作をつくるにあたり、最初は続編にしようと考えていました。ところが、前作の開発佳境のタイミングでディレクターの柏倉(晴樹)から『東京クロノス』の300年後の構想として『アルトデウス: BC』のアイデアが飛んできたんです。SF作品だしメカが登場するし、「やばいのがきたな……」と思ったのですが(笑)、より世界に目を向けた作品にすることを考えると、SFは海外での需要が高いからアリだなと。日本でもSFというジャンルに追い風が吹き始めているというところも強くあります。

 そこへさらにゲーム性が追加されると、より広い層に当てにいけます。ゲーム性やゲームシステムに魅力のある作品はファン層を広げ、ストーリー性に魅力のある作品は深いファン層が得られると以前から考えていました。従来のVRゲームはFPSや体験型が多かったのですが、『東京クロノス』ではストーリーを掘り下げていく作品として打ち出し、深いファン層を獲得できました。この成功体験を踏まえた上で、ゲーム性とストーリー性を掛け合わせて誕生したのが『アルトデウス: BC』なんです。

『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウスBC)』PV

ーー『東京クロノス』をプレイしていないユーザーでも楽しめるということですね。

岸上:『アルトデウス: BC』だけでストーリーは完結しているのでもちろん楽しめます。ただ、『東京クロノス』をプレイしているとすごくエモーショナルに感じる部分もある。それは最初の企画書にも入っていたので、柏倉はよくここまで考えたなと思いました。なので、『アルトデウス: BC』から入って『東京クロノス』にも興味を持ってもらいたいという思いはあります。

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