VRゲーム国内企業の最前線 MyDearest代表・岸上健人が『ALTDEUS: Beyond Chronos』に込めた“思いと狙い”

岸上健人が語る『アルトデウス:BC』の“思いと狙い”

コアターゲットは“VR業界の外にいる”クリエイター

ーー『アルトデウス: BC』には「アドベンチャーパート」「マシンアクションパート」「ライブ体験」と3つの要素があります。このような形に行き着いた理由を教えてください。

岸上:いろんな要素があることで「次はこういう風に遊ぼう」と繰り返し遊べて長く楽しむことができます。また、しっかり最後までプレイしてほしいという思いが強かったので、いろんな楽しみ方を用意すれば飽きず楽しんでもらえるかなと。『東京クロノス』以上に『アルトデウス: BC』はプレイ時間が長いので(笑)。

ーー『東京クロノス』は総プレイ時間が20時間でしたが、『アルトデウス: BC』はそれよりも長い……?

岸上:2~3倍くらいありますね。主人公のボイスだけで8時間あるんですよ。主人公以外のキャラクターもいますからね。それだけ長いです。これまで発売されたVRゲームの中でも最大の長さだと思います。ボイス収録をしたキャストさんも大変でしたし、開発しているクリエイターには頭が下がる思いです。

 長編でありながらクリエイターのこだわりが詰まっているので、プレイヤーのみなさんには長く飽きずに楽しんでいただけるはずです。

ーー多くのこだわりが詰め込まれていると思いますが、中でもプロデューサーの岸上さん的にこだわった部分を一つ挙げるとしたら?

岸上:今回はとにかく手を使うゲームデザインにしたかったんです。VRゲームは手を使うことで没入感が非常に高まります。海外のVRユーザーは手を動かすことが標準なので、海外のユーザーに楽しんでもらうためには必要でした。

 『東京クロノス』は手を使わないゲームデザインだったため、『アルトデウス: BC』では上手く手を使う形に進化させたい思いも強くありました。僕からクリエイターチームに要望を出させてもらい、開発はとても大変だったと思います。その分、クリエイターチームのこだわりを感じられる部分でもある。

 『東京クロノス』以上に『アルトデウス: BC』にはクリエイターのこだわりがより感じられる作品になっています。なので、いろんなクリエイターの人にプレイしてもらって、「こういう作品をつくりたい」と思ってもらいたい。VR業界の外にいるクリエイターを惹きつけたいという思いが大きいです。

ーーゲームファンだけがターゲットではないんですね。

岸上:それは最初から考えていました。コアターゲットはVR業界の外にいるクリエイターです。クリエイターがVRゲームに興味を持つキッカケになる作品になれば、さらにVRゲーム業界は盛り上がりますから。『アルトデウス: BC』には、クリエイターになりたい学生さんやプレイヤーでありクリエイターでもあるユーザー層に届きやすい表現や要素がいろいろ詰め込まれています。その辺りも注目していただきたいですね。

「一つのメディアに限定されないエンターテインメントを」

ーーVR含め、日々多くのテクノロジーがアップデートされています。岸上さんが直近で目をつけているテクノロジーや今後VRゲームで取り入れたいと考えているテクノロジーはありますか?

岸上:「Oculus Quest 2」の発表の際、ARグラスのオーディオ研究についても発表がありました。現実世界で耳にする音の位置を調整して再現するというものです。この研究が進めば、耳のエンターテインメントが普及されていく。音をどこに配置するか調整できれば、いろいろなコンテンツの可能性も見えてきます。

 今はコロナ禍で難しいですが、リアル脱出ゲームと合わせたらおもしろそうですよね。VRゲームへの転用もできると思います。実装ももうすぐではないかと思うので、そこへの期待はとてもあります。

ーー 『アルトデウス: BC』の次の作品があるとすれば、オーディオ部分が進化している可能性も?

岸上:ありますね。あとは、VRだけではなくARもやりたいと考えています。自社だけでというよりは、ARの会社と組んで。VRに注力はしているものの、新しい技術を使ったエンターテインメントをやりたい思いが強いです。ヘッドセットを使わないエンターテインメントもやれたらいいなと思います。

ーー VR以外のXR領域も並行してやっていきたい思いは、以前からあったのでしょうか?

岸上:VR、AR、MRなど言葉は分かれていますが、基本的には同じ考え方だと思っています。どれも現実世界とバーチャル世界の組み合わせなので、そこに関しては全般的にやっていきたいですね。

 例えるなら、VRはデスクトップやノートPCなど自宅でじっくり楽しむ、ARはスマートフォンやタブレットなど手軽に楽しむ、といった用途になるのかなと。今の時代はいろんなメディアが横断されていて、今後はより一層傾向が強まるはずです。日本のエンターテインメントを盛り上げていくのなら、一つのメディアに限定する必要はないと考えています。

■作品情報
『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンド クロノス)』
ジャンル:VRインタラクティブストーリーアクション
対応プラットフォーム:Oculus Quest Oculus Rift and more
発売日:2020年12月4日
プレイ人数:1人
価格:未定

〈キャスト〉
クロエ:CV.鬼頭明里
コーコ:CV.奥野香耶
ノア:CV.花守ゆみり
アニマ:CV.石川由依
ヤマト:CV.小林裕介
アオバ:CV.荒牧慶彦
ジュリィ:CV.芹澤優
デイター:CV.速水奨

〈スタッフ〉
監督:柏倉晴樹
キャラクターデザイン:LAM
シナリオ:小山恭平 / カミツキレイニー / 高島雄哉
メカデザイン:I-IV
音楽:郡陽介 / 高橋邦幸(MONACA) / kz(livetune)

公式HP
公式ツイッター
公式YouTubeチャンネル

 

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる