コナミによる「音楽ゲームのeスポーツ化」は20年前から準備されていた 『BEMANI PRO LEAGUE ZERO』に連なる系譜を読む

コナミによる「音楽ゲームのeスポーツ化」は20年前から準備されていた 『BEMANI PRO LEAGUE ZERO』に連なる系譜を読む

eスポーツとしてのBEMANIのこれから

 2020年10月28日、『beatmania IIDX』シリーズの最新作である『beatmania IIDX 28 BISTROVER』が稼働した。本作では初代『beatmania IIDX』(1999)からの伝統であった20万点式のスコアが廃止され、KACや『BPL ZERO』を含む競技シーンで主に用いられていたスコア方式(いわゆるEXスコア)が標準となった。全プレーヤーがBPLと同列の基準で自らのスコアを把握する新仕様は、BPLの観戦者がシーンへの親和を見出す一助となるだろう。

 また新作ではTORIENA、Snail’s House、Maozon、Dirty Androids、削除、OSTER PROJECT、Masayoshi Iimori、Blacklolitaといった新鋭ミュージシャンを招聘し、世界中の音楽ジャンルを切り口とした新曲を収録。前作に好評を得たIIDX EDITION(既存曲のBEMANIアーティストによる編曲企画)の続編としてC-C-B「Romanticが止まらない」からサカナクション「新宝島」やLiSA「紅蓮華」に至る新旧ヒット曲がピックアップされるなど、音楽面での新しい取り組みも継続されている。これらの楽曲群(および今後順次公開される新曲たち)はBPL本編でも各チームの戦略に組み込まれ、競技を大いに盛り上げてゆくに違いない。

 さらに、現状としてはプロeスポーツ化が公表されている機種はBEMANIのフラッグシップ『beatmania IIDX』に限られるが、他機種への展開も当然に期待できる。

候補の筆頭はBEMANI諸作中で商業的にも『IIDX』に比肩する人気を誇る『SOUND VOLTEX』だ。2020年9月には新作『SOUND VOLTEX EXCEED GEAR』と新型筐体「Valkyrie model」が試験公開されると共に、対人戦や大会を意識した新仕様が多数明かされた。さらに本作はKAC大会で韓国籍のMINI選手が2年連続の優勝を飾るなど、海外でも支持層が厚く、ゆくゆくは世界に向けて門戸を拓く展開も期待できる。

 『SOUND VOLTEX』のゲーム性は、DJプレーやサンプラー演奏に紐付けられた『beatmania IIDX』とは素性がやや異なり、BPLと全く同一の演出を流用することは難しい。もっとも歴代のKAC大会におけるオーディエンスの盛り上がりを意識した演出の巧みさは、BEMANI全機種中でも『SOUND VOLTEX』が突出している。運営チームとしても興行の演出を、先行する『beatmania IIDX』事例のささやかな焼き直しに留めるつもりは全くないだろう。大いに期待が掻き立てられる。

 佐藤室長はかつてサウンドディレクターを務めた『beatmania IIDX 20 tricoro』でシステム音楽の制作を担当するにあたり、タイトルから選曲画面に至る過程でBGMがシームレスに遷移する、一種のインタラクティブBGMをシリーズに初導入した。彼はその意図を、前出の『BEMANIぴあ』インタビュー中で以下のように語っている。

「コンセプトにしていたのは、プレー時間外もいかに楽しめるか、ということなんです。曲を選ぶところでも、遊んでよかったと思えるサービス、時間を提供したい」

 すなわち佐藤が企図したのは、クレジットを入れてからゲーム終了までの約10分間を一貫してエンターテインメントに仕上げ、途切れ目のない没入を楽しんでもらおうとする姿勢だ。

 そこから8年を経て佐藤が主導した『BPL ZERO』は、選手によるゲームプレー以外の時間にも様々な工夫を凝らし、放送時間の全域にわたって継続するエンターテインメントを視聴者に提供するものだった。BPL本戦はこれをさらに推し進め、生活の中に音ゲーへの意識がある楽しさ、一年を通したエンターテインメントを提示するものになるだろう。シーズンの到来を心待ちにしたい。

(画像=(C)2020 Konami Amusement)

■市村圭
音楽メディア「ポプシクリップ。」編集部所属のライター。音楽誌「ポプシクリップ。マガジン」で音楽ゲームに関するコラムを連載中。 執筆参加作に「ゲーム音楽ディスクガイド2」(ele-king books)。

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