「砂漠の奇祭」から仮想空間の奇祭へ ウィズコロナ時代のテクノロジーが実現するバーチャル版『バーニングマン』

「砂漠の奇祭」から仮想空間の奇祭へ ウィズコロナ時代のテクノロジーが実現するバーチャル版『バーニングマン』

 コロナ禍を受け、様々な大規模イベントがリアルでの開催を断念する2020年。しかし、いくつかのイベントはリアルからバーチャルに移行することにより、従来とは違った形で開催に漕ぎ着けている。”砂漠の奇祭”と言われる大規模アートイベントの『バーニングマン(Burning Man)』もそのうちのひとつだ。

 毎年8月の最終月曜日から9月の第一月曜日までの1週間に渡り、アメリカ・ネバタ州ブラック・ロック砂漠で行われるバーニングマンでは、例年、砂漠にある「プラヤ」と呼ばれる荒涼な塩類平原に”バーナー”と呼ばれる約7万人の参加者が集まり、架空の都市「ブラック・ロック・シティ」を建設。会場内には参加者による巨大なアートインスタレーションが展示されるほか、ライブパフォーマンスなども行われ、奇抜なファッションなど様々なアート文化を体験できるのが特徴だ。

 日本ではセレブの参加や有名DJのパフォーマンスで話題になりがちだが、重要なのは参加者が「ブラック・ロック・シティ」のコミュニティに参加してその一員になるということ。例えばバーニングマンは、いわゆる商業的な野外フェスとは違い、基本的に金銭のやりとりは行われず、水、食料、衣類、住居、燃料などを自らの責任において事前に準備する必要があるなど、見返りを求めない“GIVE&GIVE”の精神が求められる非商業的なイベントであることが大きな特徴になっている。

 そういった特殊な環境の中でしか得られない非日常的な体験を求めて、世界中の人々が砂漠の中にある会場「ブラック・ロック・シティ」を目指し集まってくるが、そんなバーニングマンも、今年はコロナ禍によって1986年の開始以来初となる開催中止を余儀なくされてしまった。しかし、それはあくまでリアルでの話。なんと、4月に中止を発表した際には今年はバーチャルで開催することを発表したのだ。

 現地時間の8月31日から9月6日まで開催されるバーチャル・バーニングマンは、今年のテーマである”The Multiverse(多元宇宙)”に沿って、10個のバーチャルプラットフォームが用意されている。バーナーは、オンライン上にあるプラットフォームにアクセスすることで”バーチャル・ブラック・ロック・シティ”の住人となり、仮想のバーニングマンを体験することができる。

OH! All the Multiverses You’ll Go – Virtual Burning Man 2020

 モバイル、PC、またはVRヘッドセットからアクセス可能なプラットフォームには3Dと2Dのものが存在するが、例えば、3Dプラットフォームであれば、2020年の公式名誉アートプロジェクトを含むBurning Manの大規模なインスタレーションや音楽イベントが行われる「Multiverse」、「写真のようにリアルに再現されたプラヤ」が特徴の「Infinite Playa」、過去のブラック・ロック・シティのデータを元にアートインスタレーションなどを再現した「BRCvr」といったプラットフォームが用意されている。これらのプラットフォームでは、バーナーは『フォートナイト』のように3DCGのVR空間をアバターを使って動き回りながらバーニングマンを仮想体験することができるものになっている。

 一方、2Dプラットフォームでは、仮想のマップを使った「SparkleVerse」のようなプラットフォームが用意されている。こちらでは、仮想の”プラヤ”マップ上に点在するパフォーマーやエンジニアのアイコンをクリックするとビデオチャットシステムを通じて、パフォーマンスやウェビナーなどのコンテンツが提供されるのだが、ここではマップとビデオチャットを組み合わせることでバーチャルとリアルをつなぐMR的な仕組みが採用されている。

SparkleVerse ||| Explore the Virtual Playa

 また、これらのプラットフォームでは事前に仮想空間に設置するアート作品の3Dモデリングデータや2D写真の画像データ、パフォーマンス配信の提供を受け付けており、プラットフォームの建設にバーナーが参加できるのも特徴だ。

 提供されたコンテンツは開催期間中、各プラットフォーム内で“GIVE&GIVE”の精神の下、共有されていくのだが、このようなシステムは、リアルのバーニングマンのシステムである参加者主導のアートイベントという性質がバーチャルでもしっかりと踏襲されていることを意味する。そのため、バーナーは仮想空間での”ブラック・ロック・シティ”建設を体験することができる。

 そして、複数のプラットフォームが用意されていることはまさに今年のテーマどおり”多元宇宙”的であり、そのひとつひとつがオンライン上でバーナーたちがコミュニーケーションをとれる仮想世界”メタバース”になっている点は非常に興味深い。

 現実世界の砂漠に「ブラック・ロック・シティ」という架空の都市を建設するバーニングマンだが、その架空の都市がバーチャルの世界で広がっていくことはコロナ禍をきっかけに示された新しいバーニングマンの形だと言える。

 10個のプラットフォームの中には事前登録が必要なものもあるが、通常であれば、辺境の砂漠の地で行われるイベントに自宅からバーチャル参加可能になったことで、多くの人にとって、これまで伝え聞くだけに留まっていたバーニングマンがより身近なものになったことは予想に難くない。

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