TikTok初のXRライブ『The Weeknd Experience』が示す”バーチャルライブとアフロ・フューチャリズム”表現の新たな可能性

The WeekndのTikTok公演が示した“新たな可能性”

 TikTok内で150万投稿を集め、爆発的なヒットとなったThe Weeknd の「BlindingLights」が収録された最新アルバム『After Hours』をフィーチャーした、TikTok初となるXRバーチャルライブイベントが先週末行われた。

 XO、Republic Records、バーチャルライブ・スタートアップのWaveの協力のもと、The Weekndが創り出す世界観が反映された『The Weeknd Experience』では、様々な演出が繰り広げられ、視聴者はインタラクティヴにバーチャルライブを体験。初回配信がアメリカ東部時間8月7日に行われたほか、日本でも8月9日の午後7時20分よりTikTok Japan 公式アカウントから配信されるなど、アンコール配信も複数回実施された。

 約15分ほどの間に「BlindingLights」や未発表の新曲など5曲が披露された『The Weeknd Experience』では、ライブ中に登場するカエルにアバターが「口づけする、しない」やビジュアルエフェクトを「炎か火花のどちらにするか」を選ぶ視聴者投票のほか、アバターを吹き飛ばすことなどにコメント機能が利用されており、視聴者のコメントがライブ空間の演出に反映される仕組みが設けられていた。

 それにより、ただ視聴するだけでなく、コメントを投稿するというライブ参加のためのアクションが演出の一部になることを実現。コメント投稿による視聴者の参加は、TikTokに限らず、Instagram、YouTubeなどこれまでのライブ配信プラットフォームではすでに確立された文化だ。しかし、このコメント自体がライブの演出に組み込まれる仕組みは、ライブ配信におけるコメント文化をバーチャルライブ時代に向けてアップデートした新しい試みであり、それがイマーシヴなライブ体験を実現する鍵になっていたように感じた。

 また、参加する視聴者によって演出が変わるという特性は、リアルライブにはない、バーチャルライブの再現性に、新しい可能性をもたらした。つまり、これまで再放送的に行われてきたアンコール配信でも、今後は『The Weeknd Experience』のように視聴者の反応を演出の一部にする仕掛けさえあれば、その時にしか体験できないライブ感すらも何度でも再現可能なコンテンツになれる、という道が示されたといってもいい。

 そして、これまでの再現性から一歩進んだ、”再現可能なライブ感”こそが、今後のバーチャルライブの発展に大きく関わってくる要素になるのではないだろうか。バーチャルライブという新時代のエンタメを切り開いたのが『フォートナイト』のTravis Scottによる『Astronomical』だとすれば、『The Weeknd Experience』は、バーチャルライブの可能性をより発展させたものとして位置付けることができるだろう(それだけに筆者が視聴した日本向けアンコール配信が以前のライブの録画だったことは残念でならない)。

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