Boiler RoomとApple Musicの提携は、DJ配信の著作権問題解決の糸口になるか

Boiler RoomとApple Musicの提携は、DJ配信の著作権問題解決の糸口になるか

 今年で設立より10周年を迎えたオンラインDJプラットフォームのBoiler Roomが、Apple Musicとパートナーシップを締結。200本以上のDJセットをApple Musicで公開した。

 Boiler Roomといえば、2010年代のDJ配信文化における立役者的プラットフォームであり、現在は発祥の地であるロンドンだけでなく、LAやニューヨーク、ベルリン、アムステルダムのようなクラブカルチャーの聖地はもちろんのこと、世界各地から配信を行なっており、ここ日本でも東京、大阪、名古屋などから配信を行うなどシーンに対する大きな影響力を持っている。

 Boiler Roomは今回のパートナーシップに際し、権利所有者に対してのロイヤリティ支払いを100%支払うと宣言。そのステートメントによると、パートナーシップは、DJセットに関係する全てのアーティストに報酬を支払うという共通の目的を持ってローンチされるものであり、その”報酬の支払い”にはDJへの支払いだけでなく、DJミックスで使用された音楽を制作したアーティスト、プロデューサー、ソングライターへの支払いも含まれる。

 これまでBoiler Roomは、YouTubeを配信のプラットフォームにしていたが、多くの人が知るように現在のYouTubeには「Content ID」というシステムが実装されている。そのため、音源の権利所有者は権利を持つ音源を使った動画を閲覧できないようにブロックする、動画の広告によって発生する収益をアップロードしたユーザーと分配するなど取り扱い方を選択することができる。つまり権利所有者は、許可なく音源を動画で使用されることを防ぐことができ、かつ場合によってはDJ配信によって発生する収益も受け取ることができるのだ。しかし、YouTubeのようなプラットフォームは、こういった著作権処理に対する体制が整えられているが、中にはそれが不十分で問題を引き起こすプラットフォームもある。

 今年、6月にゲームライバーの間で人気の配信プラットフォーム・Twitchで突如、有名ストリーマーたちのアカウントが著作権侵害のクレームを受けるケースが多発した。これは彼らがアーカイヴしている2017年~2019年の間に配信された動画に対して、多くのレコードレーベルや配給会社が加盟しているアメリカのレコード会社業界団体「RIAA」が著作権侵害を訴えたことがきっかけだ。

 TwitchによるとRIAAが大量の著作権侵害のクレームを受けたのは初めてのことで、この結果、ストリーマーたちは警告を削除する対応に追われることになった。またこういった事態が起きたため、これまでYouTube、Facebookなど類似のプラットフォームよりBANされにくいと言われてきた、TwitchからのDJ配信に対する懸念も広がった。

 Twitchがこれまで大量の著作権侵害のクレームを受けてこなかったのには、YouTubeのように自動的に著作権を侵害する動画を発見して削除する「Content ID」のようなシステムが実装されていなかったことが理由だ(それにより警告を受けたストリーマーたちは手動で違反動画を見つけて削除しなければならなかったというが……)。そして、おそらくそのことがこれまで”BANされにくい”と言われてきた理由だと推測される。

 しかし、実際にはTwitchも著作権侵害を野放しにしていたわけでなく、配信者向けに“音楽のガイドライン”を設け、例えばDJ配信であるなら、下記のように

 ”DJセット – ご自分で所有している音楽またはTwitchで共有するライセンスを受け取っている音楽以外の音楽を組み込んでいる、事前にレコーディングされた音楽トラックの再生またはミキシング。”

 とガイドラインに禁止する旨を記載。ストリーマーが著作権を持たない音源を使ったDJ配信を禁じている。ただ、先述のような風説が広がったため、多くのDJたちはTwitchを利用していたのが実情だ。特にコロナ禍において、クラブやフェス出演による収入を失ったDJたちにとって、投げ銭機能やSoundCloudと提携したアフィリエイト機能などは、彼らの金銭面をサポートする役割を果たし、BANされにくいということは利用する上での大きな理由になっていた。

 しかしながら、現在ではインターネット上での音楽の著作権侵害に対する関心は高まっており、テクノロジーの発展とともに以前よりも厳しく取り締まれられるようになっている。そういった状況にもかかわらず、コロナ禍では先述のような業界の苦況によって、リアルイベントの代替としてDJ配信を選択せざるを得なかったのも事実だ。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる