有名TikTokerが、トランプからの“禁止令”に思うこと
8月6日、アメリカのトランプ大統領は、中国政府の検閲やセキュリティに関しての懸念から、中国発のSNSアプリTikTokのオーナーであるByteDance社へ、「次の45日以内にアメリカに本拠地を置く会社にアプリを売却しなければ国内でのアプリの流通を禁止する」と発表した。
TikTokは、2016年に中国国内用に『Douyin』としてローンチされ、翌年にTikTokとしてグローバル展開され、現在に至るまでアメリカでは合計1億ダウンロード、全世界で10億ダウンロードを突破している大人気アプリだ。元々はアメリカの人気アプリであったMusical.lyをByteDance社が2018年に買収し、ユーザーがTikTokに移行したことから、アメリカでの人気を獲得した。Musical.ly自体は、15秒の短い動画を音楽と一緒にシェアできるビデオストリーミングアプリで、口パクやキャプションを加えられることから、オンラインコンテンツメーカーや若者に人気だった。
TikTokへと移行されてから、アプリ内における一番の変化としてあげられるのが、コンテンツの多様化だろう。今まではエンタメを中心としたコンテンツだったものがTikTokになってからペットの動画やニュースなどのインターネット・ミームなどオンラインセレブに限らず一般人が気軽に自分のコンテンツを作成し簡単にシェアできるものへと変貌した。これによってより多くのユーザーを獲得したTikTokは月間5億ものアクティブユーザー数を記録し、アメリカは世界最多のダウンロード数を持つ。現在、世界150カ国でダウンロードされており、13-24歳がユーザーの69%を占めている。
TikTokユーザーたちの声
現在1800万人のTikTokフォロワーを持つ、22歳のBeardはトランプ大統領の禁止令が出たとき、TikTokでライブストリームを行なっていた。10代のころにオーディション番組『America’s Got Talent』で一躍有名になり、そこからミュージカルコメディアンとして、TikTokの可能性に賭けてきた多くの若者の一人だ。新しいアルバムの発売を控えており、同時にTikTokの提供するコンテンツクリエイターファンドにも参加するつもりだった。しかし今回の発表を受けた彼は、宣伝プラットフォームであるTikTokがなくなると不安になり、前倒しでアルバムをリリースした。オンラインクリエイターとして労力を費やし、ここまでフォロワーとコミュニティを作り上げた彼や、その他大勢の若いTikTokerにとって、今回の発表は活動、ないしは人生に大きな影響を与えている。
TikTokと検閲
TikTokは、世界的に大ヒットとなったアプリだが、同時に中国政府における検閲システムに対しての不安が今回の禁止令のきっかけになった。昨年9月にガーディアン紙によってリークされた内容によると、TikTokのガイドラインには香港やチベットの独立運動などの内容を扱う動画の検閲を行なっていることが公開された。TikTokのオーナーであるByteDanceは北京拠点の企業であることも踏まえてアメリカ国内での集められたデータでも中国本土の法律が適用されるとし、アメリカ国民のプライバシーなどを危惧している。