はじめてのオモチャは何だった? プレイヤーの記憶が武器になる瞑想アクションADV『Waking』
その答えは『Waking』の巧みな“瞑想”のメソッドにある。作中で重要な質問を投げかけられる前、しばしば「目を閉じて」と導く声がする。これはゲームを遊んでいるプレイヤー自身への呼びかけで、実際に画面はブラックアウトしてしまう。声はそのまま「あなたが幼かったころに戻って、生まれ育った街を思い出して」と続ける。
導きの声は、いきなり核心を突くようなことは聞かない。「はじめて暮らした家の、扉が閉まる音を思い出して」「よく通っていた道はどんな匂いだった?」といった具合に、ひとつひとつ断片を呼び起こしていく。質問を重ねるうちに、その問いかけが古い記憶の身体性と結びつけられていることに気がつくだろう。「ぬいぐるみ」「ステッキ」といった言葉より先に、当時感じていた音・光・匂い・手触りといった感覚が思い起こされる。五感が覚えている記憶が浮上することではじめて、忘れていた情報がサルベージされるのだ。
本作はアクション性の高いゲームに加え、プレイヤー個人の記憶を語らせることで固有の体験を生み出す独自性の強い作品といえるだろう。『Waking』はPC版がSteam/GOGで配信中で、価格は2050円。コンソール向けにはXbox One版もリリースされている。
■Yuki Kurosawa
フリーライター。ゲーム系の記事を中心に執筆している。海外のインディー作品をよく好む。何度も死んで覚えるゲームが得意(一手先が読めないため)。
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