デジタル先進国・フィンランドの公務員は、どのようにしてテレワークを実現したのか?
テレワークのもう一つの問題……昼食
もう一つ、テレワークの問題として挙げられていたのが「昼食」だった。
普段は職員向けに安価に昼食を提供するレストランでお昼を食べるとのことだが、自宅から働かなくてはいけなくなってからは自分で昼食を作らなくてはいけなくなった。これには時間も手間も掛かり、一般的な30分のランチ時間では料理が完成しても食べる時間が残らない。
独り身ならまだしも、学校の給食もあてにできない状況では、働きながらも家族全員分の食事を用意しなくてはならない。フィンランドでは主婦・主夫は珍しく、共働きの家庭が多いため、会社の仕事をしながら食事を用意しないといけない現状はテレワークの大きなネックとなっている。
普段から弁当を用意して職場に向かう人にはこの限りではないかもしれない。それでも職場のカフェテリアや、福利厚生としてレストランなどで使えるランチ・バウチャー(Lounasseteli)*などを利用した方が、料理を作る手間も片づける手間も省けて、安価に食べる事ができるので、自ら弁当を作るより効率性は高いといえるだろう。
*ランチ・バウチャーは例えば、プリペイド・カードとなっており、一度に使える金額が10ユーロ程度、職場でこの金額掛けるひと月の労働日の金額までチャージできる。福利厚生としてこの金額の75%までを会社が負担し次の月の給料でチャージ金額の75%が戻ってくる、といったもの。
ランチ・バウチャー提供企業により差はあれど、多くのカフェやレストランがランチ・バウチャーに対応している。しかし使用できるのは店舗での使用か持ち帰りのみであり、現在レストラン内で飲食できないために結局持ち帰りのみでしか使用できない。気軽に持ち帰りできる位置にレストランがある人は良いが、宅配にはバウチャーを使用することができないため、これも辺鄙な場所からテレワークする人には使い勝手が悪かったりする。
それと同時に、前回の記事でも登場したフィンランドのレストラン料理配達スタートアップWoltなどは利用者が増えているようだ。従来のランチ・バウチャーは利用できないので、そのような宅配サービスから自腹で頼むとなると、料理を作る手間は減れども財布も寒くなる。
今後どれだけコロナウイルスによる影響が長引くかは判らないが、テレワークする者皆に関わる「昼食」部分に関して今後どのような対策が考えられるか興味深い。職場付近のレストランなどでの使用を前提に存在するランチ・バウチャーがこれに合わせて進化していくことも考えられるだろうが、ヒルヴォネン氏の職場などこれをそもそも使用しない職場はどのように対応するだろうか? 現在存続の危機にあるレストラン業界から何らかの新しいアイデアが登場するだろうか?
(職場の高級コーヒーメーカーで飲む美味しいコーヒーが自宅では楽しめないという声もあったこともついでにここに記しておこう)