デジタル先進国・フィンランドは新型コロナにどう対応? 現地ライターが政府・企業・個人の動きをルポ
3月後半時点では、約10万人がレイオフ(一時解雇)
デジタル化が困難な業界も、ただただ政府の助けを待つわけではなく、生き残りをかけこの状況に適応しようと努力している。
営業時間の縮小、レイオフ(一時解雇)での人件費の削減、といったダウンサイジングを行うことで会社の延命を図ろうという企業も多く、3月後半時点でフィンランド全国で約10万人にレイオフが告げられた。日本でも人気のMarimekko(マリメッコ)やFiskars(フィスカルス)も、フィンランドの店舗を現在閉鎖している。スーパーマーケット、レストラン、ホテル、銀行まで展開するS-ryhmä(フィンランドの2大小売りチェーンの片割れ)は、ヘルシンキ市内のレストランを自ら閉鎖し、そこで働いていた人員を同チェーンのヘルシンキの食料品店での業務に就かせた。
カフェや小規模小売店などの個人経営の小規模ビジネスにも大きな影響が出ているが、インターネット上では「#supportyourlocal」というハッシュタグと共に、地元の小規模事業への応援を求めるキャンペーンが行われたりしていた。また、美容院、マッサージ、レストランなどでは、パンデミック収束後に利用できるギフトカードの販売を通じて、経営が難しい現状を顧客に支援してもらおうとしている。
なお、パンデミックを受けてオンラインでの小売業などは賑わっているようでもある(そのため宅配業者はいつになく忙しい。以前より行われていた食料品のネット注文配達サービスは新型コロナウイルスの影響を受けて2,3倍に膨れ上がった。私の家族も時折利用しており、新型コロナウイルス以前は数日で届いたのだが、しばらく前までは配達まで2週間掛かる状況であった)。
そんなこともあり、これまでオフラインでのみサービスを提供していた企業は、オンラインでもサービスを提供できるようにしたいと考えているようで、オンラインへの移行する手助けをするサービスYourDigiGuideなどには多くの自営業者から連絡が来ているという。
観客ありきで成り立つ分野も、指をくわえて見ているだけではない。3月12日に政府が500人以上の集まりを禁じて以降スポーツイベントやコンサート、パフォーマンスのキャンセルは相次いだが、中にはチケットの売り上げは諦めたものの、放送権の利益だけでも得るためか、無観客で興行を行うスポーツイベントもあった。
ラハティ交響楽団は、62名の楽団メンバー各自が自宅から楽器を演奏し、シベリウスの『フィンランディア』を演奏する様子をYouTubeにアップしたり、国立オペラ・バレエ劇場はオンラインで演目が視聴できるようにしている。なお、オペラ・バレエ・演劇に関しては、フィンランドでは以前から映画館にて生配信が行われているという点も伝えておくべきだろうが、ラハティ交響楽団と国立オペラ・バレエ劇場の例は、本来ならば生で観客の前で演じていたべきものが、その代わりにデジタル化され配信されるので、厳密には純粋なテレワークではなく、提供されるサービスがその形を(変な言い方であることを承知で言えば「生きたパフォーマンス」から「死んだパフォーマンス」へと)形態変化させた状態であるとも考えることができるだろう。