デジタル先進国・フィンランドは新型コロナにどう対応? 現地ライターが政府・企業・個人の動きをルポ

フィンランドは新型コロナにどう対応?

業務の非接触化という「テレ・ワーク」

 物理性が不可欠な業界にも、テレワークとまではいかないまでも、業務上で人が接触する機会を減らすことで部分的に「テレ・ワーク」対応できる部分もある。「テレワーク/Telework」の「Tele-」は距離をもってなにかがなされるときに使われる接頭辞(例:Telephone、Television、Teleport)なので、以下の例は一般的にテレワークと行ったときと比べて距離が近くはあるが、物理的な距離を置くことで非接触化されたこれらをテレ・ワークと呼んでもあながち間違った用法ではないはずだ。

 例えば、宅配業者の中には受け取り署名を省略し、普段より遠い位置から手を伸ばして客に荷物を手渡すなどの工夫も見られたし、郵便局でも署名は省略し郵便局員が代理署名を行うようになり、身分証の掲示の際に手渡しをしない(以前は職員に身分証を手渡していた)ようになった。花屋でも、欲しい花をドアの外から選んでもらうようにしているところもある。スーパーでも店員との接触がより少ない自動レジが活用されているのはもちろんだが、通常のレジではアクリル板をレジの前に備え付け、顧客との間で飛沫が直接かからないような工夫が見られる。

 ヘルシンキ地域交通局HSLは、人の濃厚接触を避けるため、バス運転手からの乗車券の販売を中止した。このため乗車券はHSLのスマホアプリもしくはキオスクから購入しなくてはならなくなったが、いきなり車内販売が中止されたのでチケットを購入できない人も居たし、運転手の中にはチケットが車内購入できず困る人を支払い無しで乗車させる者もいた。対応を急ぐため、業務の変化が急すぎ上手く対応しきれていなかったとも言えるだろう。

 レストラン業は国に閉鎖を命じられているが、これは人の集団濃厚接触が起こりやすい店舗内での飲食部分の話であり、持ち帰りや宅配は今も続けられている。そして、これまで持ち帰り・宅配サービスをしてこなかったレストランが、それらを始めたのは面白い点だ。

 フィンランドのレストラン料理宅配サービスアプリWoltも「非接触宅配」を始めた。アプリ内で料理の注文から支払いまでが行われ、通常は配達員が注文者に料理を手渡すのだが、新型コロナウイルスが流行しだしてから注文の際に「非接触宅配」(non-contact-deliveries)オプションが選択できるようになった。これをオンにすると、配達員は玄関の前に料理を置いてくれる(配達完了通知はアプリで来る)ので、誰とも接触せずに料理が注文できるのだ。

 これらは、従来業務のデジタル化ではなく、「物理的な接触をいかに避けるか」、という点を通じてウイルス感染のリスクを軽減し、また顧客にも安心感を持ってサービスを利用してもらうための工夫だろう。

実際にテレワークをする人の声

 現在のフィンランドでは、様々な業種の企業が新型コロナウイルスに立ち向かおうとしている。今回の記事を通して、その姿がおぼろげにでも見えてきたのであれば幸いだ。

 次回記事では、テレワークに関してヘルシンキ市で都市環境課に務めるスタッフがインタビューに答えてくれたので、実際のテレワーク活用現場の声を聞いてみよう。

(画像=Pexelsより)

Source: TTL, THL, YLE, YLE (2), FUZE, Real Sound Tech, European Commission, 富士通総研, YLE (3), YLE (4)YLE (5), KELA, Yrittäjät, YLE (6), YLE (7), YLE (8), YouTube, Facebook, Ooppera Baletti, FUZE (2), 飛沫が直接かからないような工夫

■Yu Ando
フィンランド在住フリーライター。執筆分野は、エンタメ、ガジェット、サイエンスから、社会福祉やアートに文化、更にはオカルト系まで幅広い。ライター業の傍らアート活動も行っているほか、フィン・日両国の文化を紹介する講演を行うことも。趣味はガジェットへの散財。
Twitter: abcxyz_jp
ブログ:thxpalm.com
Instagram:thxpalm

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる