話題の『名探偵コナン』オープニングはどのように作られた? トムスが取り組む3DCGとToon Boom Harmonyの事例

話題の『名探偵コナン』オープニングはどのように作られた? トムスが取り組む3DCGとToon Boom Harmonyの事例

 愛内里菜の楽曲「恋はスリル、ショック、サスペンス」に乗せた“パラパラ”から20年。2020年1月より、テレビシリーズ『名探偵コナン』のオープニングで、久々に江戸川コナンがダンスに挑んだことが話題を呼んでいる。

 WANDSの第5期として始動した楽曲「真っ赤なLip」も印象的なオープニングは、一体どのように制作されたのだろうか。

 そのメイキングが、2月9日に練馬区立石神井公園区民交流センターにて開催された『アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF)2020』内のセッション「名探偵コナン新OPの制作でTMSが経験した、CGとToon Boomのフルデジタルアニメ制作」にて語られた。

ACTF2020会場(練馬区立石神井公園区民交流センター)

 同セッションの登壇者は、Toon Boomマーケティングマネージャーの遠山怜欧、CG造形監督の片塰満則、映画監督の瀬下寛之、トムス・エンタテインメント(TMS)プロデューサーの安榮卓也。遠山が各氏に問いかける形式で進行した。

 本オープニングの企画は2019年の6月末からスタートし、12月中旬に完成したという。本格的な制作は楽曲の決定後に振り付けが届いてからで、10月半ば以降に素材のやり取りが頻繁になり、正味の期間は2ヶ月半くらいとのことだった。

コナンは3DCGに向いていた 服の造形の解釈を3DCGのモデリングに応用

【公式】TVアニメ「名探偵コナン」オープニング映像「真っ赤なLip」/WANDS(2020)

 ダンスを披露しているコナンは、3DCGソフト・Autodesk Mayaで制作されている。さらに2Dソフト・Toon Boom Harmonyの導入によって、作画による加筆もフルデジタル制作を目指した(Harmonyがどのようなソフトなのかは、実際に試してみてほしい。日本のみ体験版をフル機能で提供中。しかも無期限)。

 瀬下はオファーを受けた時の印象を「実はコナンのようなカリカチュア色(マンガ的な絵柄)の強いものは3DCGに向いてないのではと3、4年くらい断り続けていた。昨年PPI(ポリゴン・ピクチュアズ)を辞めた際に声をかけられて、本腰入れてやってみたらできるかなと思った」と述懐した(註:テレビシリーズ監督は山本泰一郎)。

 実際にやってみると「コナンは驚くほど3DCGに向いていた。33年も3DCGをやっているが、先入観だったというのを勉強させられた。ここに恐らく3DCGや、それだけではできない2Dのソリューションを導入した時の本質的な展望とか、メソッドの核みたいなものが潜んでいる」との発見があったという。

 ここで瀬下がいう先入観とは、“解剖学的に正しいものが3DCGに向いている”というものだった。「簡単に言うと、フィギュアにしても成立するキャラクターだったということ。つまり三次元にしても向いている」(瀬下)。

楽曲の決定後に届いた振り付けより (C)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

 メイキングは「僕も3DCGを30年以上やっている」という片塰が解説(片塰も瀬下と同じく昨年までポリゴン・ピクチュアズに所属していた)。まず「楽曲が決まった時点で演出振付家のゲッツさんにお願いした。石山(桂一)チーフプロデューサーからの『ダンスをやるならパラパラを復活させよう』という提案を受け、20年前のパラパラを意識、というかリスペクトして、同じ印象の動きやポーズを取り入れた振付にしてもらった」と経緯を明かした。

 今回は3DCGベースのコナンをHarmonyによる作画で補完し、その素材をAdobe After Effects で加工する、という作り方を試してみたという。3DCGのコナンが踊るアニメーションとして使用する振り付けの撮影は、全身の各部に白いマーカーがついたモーションキャプチャー用の黒いアクタースーツで行っている。

 片塰は「実写を元に作画していくロトスコープでも、単なるトレースではなくメリハリの出る動きになるように工夫していたと思うが、同様にモーションキャプチャーを使う場合も、なにか工夫しない限り、簡単にメリハリを出せるとは思っていなかった。基本的には秒間12コマだが、指を弾くなどの素早い動きやカメラの回り込みは秒間24コマ」と、制作手法が異なっても修正が必要になる点に触れた。

 振り付けの収録と同時にコナンのモデリングも進められた。「制作しながら表情も変化しているのでキャラ表を参考にするが、その際に非常に役に立ったのが歴代の作画監督による作監修正集。修正集は、線に勢いがあるので、3DCGのルックデブ(見た目の開発)の工程で、線の勢いや太さの抑揚を設定する際の、参考資料として大変有用だ」(片塰)

コナンの3DCGモデル (c)青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

 質感の例として示されたメガネでは、輪郭線を途切れさせることでレンズの透明感やクリアパーツであることを表現している。これはキャラクターデザインを担当している、須藤昌朋 総作画監督からの提案だったという。また片塰は「毛先の細さはキャラ表では確認できない。口角の丸み具合や、眉毛の端の処理、袖口のシワの寄り方といった細かい部分の描き方こそが、キャラクターの造形上、重要な一部であることが、修正集から分かる」と補足した。

 片塰は続けて参考にしたコナンのフィギュアを見ながら、造形監督の役割について「フィギュアは、材料や製造工程の制約によって造形が決められている場合もあるので、立体物をそのままCGの造形に活かすことができません。でも、原作のデザインをどのように解釈してフィギュア化したのかは、3DCGのモデリングにも応用できる。それはまるで、デザイン画を基に生地を選んで型紙を起こすパタンナーのような、デザインを解釈、翻訳して製造工程に伝える役割」と、説明した。アニメーションの場合は線画で描かれている設定画を、どう立体として解釈するかの話だ。

 そのようにして完成したコナンの3DCGモデルに、振り付けのモーションを読み込んでみたところ「3DCGモデルのプロポーション(背丈など)がゲッツさんと違うため、手をたたく動作でも、掌が触れ合ってなかったり、メガネをずらそうとしても、指がフレームにとどいていなかった」ので修正を行ったとのこと。

 ダンサーにはモーションキャプチャーとは別に、スーツを着て踊るテイクも依頼した。。これも先のフィギュアと同様に「袖口や肩、腰のシワの参考として非常に役に立った。骨格の動きだけじゃなくて、衣装の形の変化や、服がなびく動きの時間差がダンスの印象を生み出しているのが分かった。単にキャプチャーした動きを3DCGモデルに読み込んだだけだと服の動きがついていないので不自然」と、動きが硬くなる原因を探り当てた。

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