カラオケはなぜフィンランドで進化? 仕掛け人に聞く“いつでもどこでもカラオケ”誕生秘話
学校、図書館、自転車でもカラオケ
また、個人向けだけではなくバーやナイトクラブ、学校や図書館向けには『Singa Business』というサービスもある。こちらは客が施設側に用意された『Singa』アプリ入りのiPadや、客自身のスマホなどで曲を選択、施設のモニターとマイクを利用して歌うことのできるサービスとなっている(アプリはキュー管理システムも兼ねる)。
国際図書館連盟により2019年公共図書館オブ・ザ・イヤー(2019 Public Library of the Year)賞に輝いたヘルシンキの新市立図書館オーディ(Oodi)にも『Singa』があるそうだ。
そこでは若者だけでなく、一人暮らしのお年寄りや、介護サービスで団体でお年寄りが図書館を訪れて、防音室を借りてカラオケをするとフヤネン氏は語った。オーディの他にも図書館としては、ヘルシンキ市に隣接するヴァンター市のティックリラ図書館(Tikkurilan kirjasto)でも防音室を借りて『Singa』でカラオケすることができる。
そもそも図書館でカラオケというのが新鮮だが、これが実現できたのには『Singa』導入の容易性もあるだろう。このほか、高齢福祉サービスでの利用法を探ったり、自転車に画面とスピーカーを取り付けた「カラオケ自転車」、オープンエアーカラオケなど、様々な活用法が模索されている。
アジアへの進出は……
『Singa』で歌われている日本語の曲はあるかという質問には、残念ながら無いとの回答。これは、「アジア外でのアジア曲のライセンシングが難しい」というのが理由だ。(また、同様に著作権上の理由から、日本から『Singa』サービスを使用することは現状ではできない。使用してみたい場合はサービス提供されている国に遊びに行ってそこから『Singa』にアクセスする必要があるだろう)
『Singa』もアジアのカラオケ市場を視野には入れているが、まずは欧州とその文化圏を制覇してから、その先にアジアのカラオケ市場が待ち受けていると語ったうえで「その方が容易だし安いし、ヘルシンキで受けるものは、多かれ少なかれロンドンでも受ける。同じように多かれ少なかれニューヨークやロサンゼルスでも受ける。その一方で、ヘルシンキで受けるものが香港や東京で受けるとは限らない」とフヤネン氏は述べた。
アメリカ進出へ……
『Singa』はフィンランドでは既に何万人ものホームユーザーがおり、現在フィンランドを中心にスウェーデン、イギリス、そしてオーストラリアでも1月にローンチしたところ。
次に狙うは世界最大の音楽市場であるアメリカ。しかしアメリカ進出は一筋縄ではいかなそうだ。
「Spotifyは6週間あればアメリカでローンチできると見積もったが、実際には3年も掛かってしまった」と隣国スウェーデンの音楽ストリーミングサービスSpotifyのアメリカ進出時の逸話を引き合いに出すフヤネン氏。
『Singa』もできるだけ近いうちにアメリカでローンチしたいところだが、世界最大の音楽市場であるだけあって、アメリカでは著作権元もばらけている。「幸いなことにSpotifyの6000万曲に対して我々のライブラリは10万曲。それでも様々な要素が絡むし、特にアメリカでは大勢の人に会って許可を取ったり取引をしないといけない」とフヤネン氏は述べる。
また、同氏は「我々のコミットメントは、著作権を尊重するとともに、音楽家、音楽レーベル、パブリッシャーの誰もにきちんと支払われるようにすること。これをこなすにはちゃんと取引を成立させないといけない。それにはお金も必要だし、出張も沢山必要となる」と、アメリカへの展開について語っているが、願わくば今年アメリカでローンチできればとのことだった。