Netflixドキュメンタリー『猫いじめに断固NO!:虐待動画の犯人を追え』は、最も不謹慎かつ面白い作品だ
作中では語られない「1 Lunatic 1 Icepick」の全貌
この動画の詳細は、ルカ・マグノッタの英語版のウィキペディアにも書いてあります。できるだけ冷静に事実だけを書いていきます。
彼は、手足を縛った全裸の男性をアイスピックに模したドライバーとナイフで滅多刺しにしました。その後、四肢を切断し、その体を陵辱します。それから食人し、切り取った肉片を子犬に食べさせました。さらに、切断した被害者の手を使って自慰行為に及んだのです。
ここまでの内容であれば、「犬」が哀れだと言われた理由も、航空会社が拒否反応を示した理由も、あれほど報道陣が集まった理由も、ルカの母親がまるで事実を受け入れられないかのように真犯人説を盲目的に信じ続ける理由も、納得できるというものです。
わたしは一視聴者として思います。本作は確かに娯楽性が高く優れたドキュメンタリーだと言えます。しかし、「1 lunatic 1 icepick」の全貌を知ったいま、かつてと同じように本作を見ることはできません。視聴者に正しく事件の深刻さを伝え切れてないことと、ルカ・マグノッタが渇望したルカを世間に知らしめるだけの作品になっていること、ジュン・リンが単純にルカのエゴのために殺されたことを念押しするような話の持っていき方に、軽い怒りすら覚えました。
面白いけれどモヤモヤ……視聴は自己責任で
『猫いじめに断固NO!』は、優れた作品であることは間違いありません。単調になりがちなドキュメンタリーを、中毒性の高い娯楽にしていると思います。しかも、インターネットの闇を、視聴者に「気軽にクリックさせる」ことで擬似体験させ、安易に手を出すことに対して問題提起することにも成功しています。
反面、こういった事件をこうも面白おかしくしてよかったのか、ドキュメンタリーの意味とは何か、とてもモヤモヤさせられるでしょう。同時に、視聴することでルカ・マグノッタの自己愛を満たす片棒を担ぐ事実にも心を痛めるかもしれません。事実、わたしは楽しく視聴した後で、言い知れぬ不安と罪悪感を覚えました。
Netflixには、消費しきれないほどのコンテンツが配信されています。明るいものもあれば、闇深いものまで様々。まるでインターネットの世界を集約しているよう。その中からどんなコンテンツを選ぶのかはユーザー次第です。あなたは『猫いじめに断固NO!』を覗いてみる勇気がありますか?
■中川真知子
ライター。1981年生まれ。サンタモニカカレッジ映画学部卒業。好きなジャンルはホラー映画。尊敬する人はアーノルド・シュワルツェネッガー。GIZMODO JAPANで主に映画インタビューを担当。Twitter
Netflixオリジナルシリーズ「猫イジメに断固NO!: 虐待動画の犯人を追え」独占配信中