Netflixドキュメンタリー『猫いじめに断固NO!:虐待動画の犯人を追え』は、最も不謹慎かつ面白い作品だ
みなさんはどんなコンテンツを目当てに、数あるストリーミングサービスの中からNetflixを選んだのでしょうか。
私は、コストパフォーマンスの良さとオリジナルコンテンツのクオリティの高さとユニークさに魅力を感じて契約しました。中でもドキュメンタリー、特に犯罪をテーマとしたドキュメンタリーシリーズは、多角的に事件を伝えようとしていて興味深いです。ただ、その多くが犯罪者の主張を集めたものだったり、事実を羅列するようなもので、単調さを感じてしまうことが多々あります。そんな犯罪ドキュメンタリーの中で異色を放つのが、マーク・ルイス監督による『猫いじめに断固NO!:虐待動画の犯人を追え』(以下、『猫いじめに断固NO!』)。その作りのうまさには、不謹慎だと思いつつも、面白いと思ってしまうはずですよ。
率直に言ってズルイほど面白い
『猫いじめに断固NO!』は、カナダで発生した猟奇事件を扱ったものです。良い人のイメージが強いカナダ人が犯人であった意外性と、バラバラに切断した体の一部を与党・保守党と野党・自由党の本部や、学校に送りつけた異常性と猟奇性で、世間を恐怖に陥れました。本作は、この猟奇殺人の犯人ルカ・マグノッタと、彼の存在と危険性を早くから察知していた動物好きのFacebookユーザーたちによる擬似『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の一部始終を丁寧かつ、エンターテイメント仕立てにした(後述するが非常に問題)ドキュメンタリーです。
リミテッドシリーズ(1シーズン完結の意)の3話構成ですが、一気に視聴し、見終わった時には思わず唸りました。
恐ろしい犯罪ドキュメンタリーに引き込まれる理由
本作がなぜ他の犯罪ドキュメンタリーと違って引き込まれるのか。それは起承転結がハッキリしているからでしょう。映画の作り方は、「始まり、中盤、終わり、エピローグ」となっており、物語は右肩上がりの線を描くように進むのが一般的です。『猫いじめに断固NO!』は、クライマックスに近づくにつれ内容がエスカレートし、更に解決編が用意されています。ドキュメンタリーでありながら、映画のような作りになっているのです。
また、犯人ルカ・マグノッタと、ボディー・ムーヴィンとジョン・グリーンの2人が率いるルカ追跡グループは、アニメ『トムとジェリー』や映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のような関係です。映画の登場人物のように、個々の役割がハッキリとしているのです。それだけでなく、ルカ追跡グループは、正義を求めてルカを追い詰めるヒーローの側である一方、捜査の途中で無実の人を自殺に追い込んでしまったり、ルカに構うことで彼の歪んだ認証欲求を満たし続け、エスカレートさせた挙句にスナッフフィルムを作らせてしまった可能性を孕む加害者ともとらえられる一面もあります。
これは全て、映画ファンのルカ・マグノッタが綿密な計画を立てていたから。何年も前から下準備をし、コマを揃え、慎重にコマを動かしていったからこその犯罪なのです。エピソード3の完成度の高さとクライマックスまでの持っていき方は、下手な映画を凌ぐ出来でした。同時に、彼を主役にしたドキュメンタリーを作ったマーク・ルイス監督も、コマのひとつでしかないという事実に、複雑な気持ちになりました。