任天堂は「新ハード投入」と「中国市場進出」でStadiaに対抗する?
任天堂は今月『Nintendo Labo: VR Kit』をリリースして改めて独創性な企業であることをアピールしたが、その前途にはかつてない強敵の出現が待っている。この強敵に対して、同社はふたつの対抗策で応戦すると見られている。
迫りくる黒船
日本経済新聞は18日、「任天堂、もがく独創の王国 忍び寄る黒船」と題された任天堂の現状と課題をまとめたコラム記事を公開した。記事タイトルにある「黒船」が意味するのは、Googleが先月発表したゲームストリーミングサービス「Stadia」だ。今年秋から始まる同サービスはGoogleが保有する巨大データセンターをフル活用して、月額料金を支払えばPCやスマホで高品質のゲームがプレイし放題になるというものである。こうしたビジネスモデルは、ゲーム機でコンテンツとユーザを囲い込んできた任天堂にとって大きな脅威となる。
Stadiaが任天堂にとって脅威となる所以は、Googleと任天堂のあいだにある圧倒的な資本の差にもある。Googleの親会社アルファベットが2018年に研究開発費に投じた金額は、214億2,000万ドル(約2兆4,000億円)なのに対し、任天堂は700億だ。
巨大な脅威を迎え撃つ任天堂は、盤石の体制というわけではない。直近の2019年3月期の業績は好調なものも売れているコンテンツは人気シリーズの最新作であり、新規のIP(Intellectual Property:知的財産)で成功しているわけではない。また、今後のゲーム市場において軸となる技術である5Gへの対応の遅れを危ぶむ声もある。
廉価版と次世代機を開発中
日経新聞の記事は、Stadiaへの対抗策となる施策としてNintendo Switch廉価版と次世代機のリリースを指摘している。廉価版に関しては、今年の秋にはリリースすると見られている。廉価版は、現在販売されているものより携帯性を重視したものとなる見込みだ。廉価版のリリース以降、長らく任天堂が続けてきた据え置き型と携帯型の2ライン開発体制を一本化する、という関係者の話もある。
次世代機についてはまだ仕様を検討している最中であり、リリース時期はまったく不明である。もっとも次世代機の仕様が検討中であるのは、同社内で強力なリーダーシップが執れる人材がいないことも影響しているようだ。マリオの生みの親である宮本茂代表取締役フェローが2020年には内規が定める年齢により退任となることからもわかるように、「古き良き任天堂」を知る人材が次々と会社を去る一方で、強烈な個性をもつ新しい人材が台頭しているわけでもない。
次世代機の仕様に関してイギリスのタブロイド紙『Daily Star』電子版は、今年1月に予測をまとめた記事を公開した。ある匿名の情報源は、次世代機では搭載ディスプレイの性能が向上するだろう、と述べている。Switch本体を携帯モードでプレイする場合は、同本体に搭載されたディスプレイにゲーム画面が表示される。この画面は、iPhone Xシリーズのような最新スマホのディスプレイと比べると性能が劣るという。それゆえ、次世代機には高性能のディスプレイが実装されて、輝度や画素数の向上と省エネを両立させるかもしれない。