『バイオハザード RE:2』はいかに“恐怖を奏でた”か? サウンドチーム&プロデューサーに聞く

『バイオハザード RE:2』はいかに“恐怖を奏でた”か? サウンドチーム&プロデューサーに聞く

 映画で言えば『ターミネーター』然り、『エイリアン』然り、シリーズもの2作目の名作率は高いように思う。

 1998年に発売された『バイオハザード2』も、第1作『バイオハザード』が打ち立てた高いハードルを見事に越えてみせた名作ソフトと言えるだろう。そんな『バイオ2』が20年の時を経て、シリーズ最新作として帰ってきた。タイトルは『バイオハザード RE:2』。本インタビューでは、“『バイオ2』という傑作をいかにして再構築したか?”という疑問に、進化著しいサウンド面から迫るべく、本作の神田剛プロデューサーを始め、サウンドディレクターの中島健太郎氏、コンポーザーとしてゲーム内音楽を担当した内山修作氏に話を聞いた。


写真右から、
神田剛:『バイオハザード RE:2』プロデューサー。主にゲームのコンテンツ提案や活用、グローバルプロモーションに携わる。
中島健太郎:サウンドディレクター。サウンドチームのリーダー。『バイオハザード RE:2』の音に関わるほぼ全てに携わる。
内山修作:コンポーザー。ゲーム内音楽の制作に携わる。

IRリバーブで再現される”本物の音響”

――前作の『バイオ7』は海外のゲームアワードでVRオーディオ賞を受賞するなど、サウンド面でも高い評価を受けました。今作は、そこからどう進化しているのでしょうか。

中島:サウンド面では今回も色々と挑戦しています。たとえば、今回は音響の部分で、”IRリバーブ”という技術を使用しました。リバーブは”残響”という意味ですが、IRリバーブは音の響き具合を実際に収録してシミュレーションできる技術なんです。

――つまり、ある場所での音の響き方を収録して、それをゲーム内で再現できるということですね。

中島:そうなんです。『バイオハザード RE:2』では場所ごとに違った音響になるよう、大きさから壁の材質まで、大体300ぐらいのさまざまな部屋でIRリバーブの収録をしています。なので、今作は部屋ごとの音響の微妙な差が非常に高いクオリティで表現されています。

――たしかにクレア編を試遊したときに、地下の部屋だと音が大きく反響していたのが印象に残っています。でも、300もの場所で収録するとなると、ロケハンが大変そうですね……。

中島:ロケハンはめちゃくちゃやりました(笑)。いろんな所に行って録りましたね。

――収録というと、具体的にはどんな作業をされるのでしょうか。

中島:TSP信号というIRリバーブを収録するための音源があるので、まずはその音源を収録場所で流します。そして、その音を残響音も含めてマイクで録音するという流れですね。ただ収録するだけではダメで、収録後に響き方を調整してようやくゲーム内で使うことができます。

――『バイオ2』といえば、あの広い警察署のエントランスが記憶に残っています。たとえば、あの部屋の場合はどこで収録されたんでしょうか。

中島:あれは確か……同じぐらいの広さのホールで収録しました。他にもいろいろ面白い場所で収録しています。

自社で開発した新技術”リアルタイムバイノーラル”

――リバーブの他にサウンド面でこだわった点はありますか?

中島:あとは立体音響でしょうか。『バイオ7』では一般的なヘッドフォンでも迫力のある音響を実現できるYAMAHAさんの技術である”ViReal”(バイリアル)を採用していますが、『バイオハザード RE:2』ではバイノーラルマイクを使った”リアルタイムバイノーラル”という技術を使用しています。バイノーラルマイクはご存じですか?

――マネキンのアタマに耳たぶがついてて、そこにマイクが入っているアレですよね。音が鳴っている位置関係も含めて、すごくリアルに聞こえる。

中島:そうです。バイノーラルは音が後ろで鳴ったときに、ちゃんと後ろで鳴っているように聞こえるのが特徴です。ステレオだとこうはいきません。ただ、ゲームでバイノーラルを使うにはひと工夫が必要です。なぜならゲームのキャラは操作によって向いている方向が変わるからです。

――なるほど、背後で鳴った音を聞いて振り返ったら、今度はその音が前で鳴っているように聞こえないといけませんね。

中島:そう、それを切り替えられる技術がリアルタイムバイノーラルで、これは当社が開発した技術になります。この技術は既に論文も含めて、オーディオの学会でも発表しています。

プレイヤーを恐怖で包みこむ”7.1.4ch”

――正真正銘、最先端の技術が『バイオハザード RE:2』には使われているんですね。

中島:その他だと、『バイオ7』では7.1ch5.1chまでしか対応していなかったチャンネル数が、今回は7.1.4に対応可能になりました。これは”Dolby Atmos Home”と呼ばれるもので、スピーカーが7.1chに加えて天井に4つ付きます。

――上方向からは、どんな音が鳴るんでしょうか?

内山:今作のBGMは上から音を流せることを加味してミックスしてあります。『バイオハザード RE:2』の音楽は全体的に不安になるようなモヤッとした曲が多いので、そういう音で上からも横からもプレイヤーを包みこんで、より没入感が増すように工夫しています。

――7.1.4chはヘッドフォンでも体験できるんでしょうか?

中島:ドルビーアトモスヘッドフォンなら対応しています。ただ、7.1.4chはPC版とXbox One版のみの対応ですので、ご注意ください。

――『バイオ7』のViRealでは普通のヘッドホンでも立体音響が楽しめる、というのが売りでしたが、今回も高品位なヘッドホンでなくても立体音響を体験可能でしょうか。

中島:リアルタイムバイノーラルはまさに、それを可能にする技術ですので、普通のヘッドフォンでも立体音響のように聞こえるようなっています。

セロリ+グレープフルーツ+唐揚げ=ゾンビの噛みつき音!?

――ちなみに、フォーリー録音で面白い素材を使って録った音があったりしますか?

中島:『バイオハザード RE:2』では、特に湿った感じの音はこだわって録音しました。たとえばゾンビに噛まれる音なんかは、グレープフルーツ、セロリ、唐揚げを使っています。セロリは折ると「バキッ」と骨が折れたような音がするので、”歯が骨までとどいている”ような音を演出できるんです。そこにグレープフルーツで汁気を出して、あとは唐揚げで肉感出して……みたいな流れで録っています。

――おもしろいですね。音を重ね合わせると。

中島:どんな音を出したいかを考えながら、欲しい音が出そうな素材を予備も含めてバリエーションよく買ってきて、切ってみたり、潰してみたり……かなり試行錯誤はしています。

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