『バイオハザード RE:2』はいかに“恐怖を奏でた”か? サウンドチーム&プロデューサーに聞く
ユーザーに違和感を与えないための新旧の融合
――BGMについてお聞きします。コンポーザーの内山さんとしては今回リメイクにあたって気に留められた点はどこでしょうか。
内山:『バイオハザード RE:2』はリメイクというよりも「過去作を原作とした『最新作』」として制作されています。なので、昔の音楽を今風に直すだけではいまいちフィットしなくて。それで『バイオ7』のように、ミュージック・コンクレート※なんかも試してみたのですが、それはそれで「『バイオ2』っぽくないよね」という声が挙がってしまいました。なので、昔からのファンの方にも、現代のゲーマーの方にも楽しんでもらえるように、うまく今の音楽と昔の音楽を融合させながら制作を進めてきました。
※ミュージック・コンクレート…楽音ではなく、人や動物の声、自然の音や都市の騒音などを録音し、電気的・機械的に変質させ、組み合わせて制作された音楽。
引用:art scape
――プレイヤーに恐怖感を与えるために、楽曲ではどのような工夫が施されているのでしょうか。
内山:本作に限ったことではありませんが、恐怖と不安は明確に区別されています。恐怖というのは対象が目の前にいるんです。たとえば、鉄パイプを持った巨大な化け物が襲ってくるとか。それに対して不安は漠然としたもので、比較的に長く続きます。それを意識したうえで、『バイオハザード RE:2』の前半部分では不安を特に煽るよう楽曲を演出しています。ですが、不安と恐怖を状況によって極端に振りすぎてもダメなので、その辺りはうまく融合させながら進めています。
――ちなみにBGMはプレイヤーの状況によって、インタラクティブに切り替わっていくようなものなのでしょうか?
内山:そうですね。ゲーム内の様々なパラメーター、たとえばクリーチャーがプレイヤーから今どのぐらいの距離にいるとか、そのクリーチャーは敵意を持って追いかけてきているのかとか、そういったゲーム内の情報が楽曲に織りこまれるようになっています。なのでプレイヤーキャラに危険が迫れば迫るほど曲もどんどん恐くなる、というようになっているんです。
――昔のゲームのように場所ごとにBGMが設定してあって、それがずっとループで流れてるというのとは違うんですね。
内山:はい、違います。
中島:曲ってループ感がわかりやすくて、「それを解消したい」という話を内山としてまして。その結果、楽曲にいくつもレイヤーがあって、状況によってこの層とこの層の音楽が流れる、というようなシステムにしています。
ラジコン操作からビハインドビューになった理由
――それではサウンドから離れて、ゲームプレイについてお聞きします。原作『バイオ2』のラジコン操作から、今作では視点がビハインドビューに変更されています。神田プロデューサーから、この視点の変更についてお考えをお聞かせください。
神田:『バイオハザード RE:2』は"ゾンビエンターテイメント"が大きなテーマになっていまして、そこでどういう形でベストなプレイ体験をお届けできるか考え抜いた結果がビハインドビューです。ゾンビに噛みつかれる恐怖感や、ゾンビとの距離感を演出するのにビハインドビューが最適だと判断しています。ラジコン操作や『バイオ7』のような主観視点ももちろん検討しましたが、『バイオ2』はレオンとクレアという人気なプレイヤーキャラをモニターに出さないわけにはいかないですから。
――試遊させていただいた印象では同じ肩越し視点でも『バイオ4』から『バイオ6』までのTPSライクな感じとも、また違いますよね。やはりシューターではなくホラーゲームとして演出されている印象です。
神田:そこはもう、クラシックなサバイバルホラーのプレイフィールは絶対に損なわないようにしようと。今回の2人のディレクターのうちの1人はオリジナルの『バイオハザード2』の開発にも携わったスタッフでもありますし、そういったところの感覚は開発チームの主要スタッフの中にも備わってるものではあります。
ゾンビエンターテイメントを目指して
――お話を伺っていて、今回はやはり"ゾンビの怖さ"に非常にこだわられているように思いました。
神田:そこは我々としては一番強く押したいところですね。そして、ただ恐いだけじゃなくて、全体としてホラーエンターテイメントとして、オリジナルをリスペクトしつつ、より深いヒューマンドラマやゲームプレイを体験してもらえるよう制作しています。我々は"リ・イマジン"という言葉を使っていますが、単なるリメイクではなく原作を再構築した作品として皆さんに手にとっていただきたいと思っています。
――ゾンビを恐しく演出するうえで、こだわった点をお教えください。
神田:噛みつくモーションなんかで、いかにゾンビを強く見せるかにこだわりました。ゾンビって、最近では雑魚扱いされている作品も多いのですが、そのなかで改めてゾンビの強さ・怖さを表現するのを意識したんです。今回はゾンビが死んだ後のラグドールにもこだわっていて、倒したと思っても起き上がってきて、また襲ってきます。
――原作では死んだゾンビは血が出てわかるようになっていますが、今回はその演出はありませんからね。
神田:あとは、今作の世界観で大きなコンセプトになっている"ダークネス・ウェットネス"も恐怖感の演出に一役買っています。今作はある程度カメラを自由に動かせるので、その中でゾンビがいつ出てくるかわからない恐怖を演出するために暗闇を使っているんです。そういった暗さを生かした恐怖演出は、今回随所に盛りこんでいます。
――たしかに、懐中電灯で照らしていない場所はほとんど何も見えなくて恐かったです。
神田:そうでしょう! さらに、そこに「ひた……ひた……」みたいなサウンドも加わって余計に恐い。
――懐中電灯はゲーム全編で長く使われるんでしょうか?
神田:特に前半の警察署ではキーになりますね。後半は警察署から外に出て行って世界観も広がります。
――ありがとうございました。最後にみなさんから「この音はこだわったからぜひ聞いてほしい!」というポイントがあれば、お教えください。
中島:やっぱりゾンビの存在はサウンドチームにとっても大きくて、リアルタイムバイノーラルの技術をゾンビの声にも使っていますし、戦闘でゾンビの音をしっかり聴いてもらえれば嬉しいです。
内山:より怖く遊ぶために、ヘッドホン推奨です!
神田:実は『バイオハザード RE:2』には"真のエンディング"があります。そこだけで流れるエンディングテーマはブラッシュアップを重ねて仕上がったいい曲で、チーム内でも絶賛されている1曲です。ぜひそこまで辿り着いて聴いてみてください!
(取材・文=脳間 寺院)
■バイオハザードRE:2
発売日:1月25日
対応ハード:PlayStation4、Xbox One、PC
CERO:D ※Z versionは18歳以上のみ
公式サイト:https://www.residentevil2.com/
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