吉本新喜劇と吉本坂46とSHOWROOMの架け橋にーー小寺真理が考える“新しい芸人の形”

吉本新喜劇&吉本坂 小寺真理インタビュー

 仮装ライブ空間『SHOWROOM』にて、よしもと芸人による個人配信が続々とスタートしている。各自のルームでは、ネタや他愛ない雑談、稽古中の一幕など、様々な場面から放送を行なっているが、リアルサウンドテックでは定期的に同プラットフォームを使って新たなファンを多く獲得した芸人や、尖った配信を行なっている芸人などに話を聞く連載をスタートさせる。

 第一回は、吉本新喜劇の座員ながら、「よしもと×SHOWROOM」といえばこの人、というほど同サービスを活用し、吉本坂46のオーディションにも合格した小寺真理にインタビュー。その異色な経歴や新喜劇に革命を起こした活動、吉本坂46に入るまでの努力などについて、存分に語り尽くしてもらった。(編集部)

「実は私、NMB48のオーディションに落ちてるんです」

ーーまずは『SHOWROOM』で配信を始めたきっかけについて聞きたいのですが、元々は吉本坂46に入るためだったとか。

小寺:そうなんです。三次審査の時にネット投票に切り替わって、東京で活躍されてる方がたくさんエントリーされてるなかで、吉本新喜劇に出させてもらってるとはいえ、大阪にいる自分は何をやったら東京の人たちに勝てるんやろう、と思って。親友の有村藍里ちゃんと深夜に「こんなツールを使ったほうがいい」というやりとりをしていくなかで、「『SHOWROOM』とかどう? 多分一番マッチングすると思うねん」って勧められたんです。

 そういえば、『SHOWROOM』は吉本ともコラボしてたし、会社に言えばやらせてもらえるかも!と閃いたものの、新喜劇はインターネットに疎い座員が多くて(笑)。伝統ある新喜劇のなかで、下っ端の私が「やりたいです!」って声を大にして言うのは憚られたんですけど、川畑(泰史)座長が「そんなこと言ってられへん。これは戦いやねん。マネージャーに直接言うてみい!」とサポートしてくださったので、始めることができたんです。

ーー『SHOWROOM』を始める以前も、色々考えて“対策”はしていたんですか?

小寺:そうなんですけど、インターネットを活用するわけでもなく、新喜劇の合間に日本橋でチラシを配ったりとか、そういう感じでした(笑)。『SHOWROOM』を始めてからも、NGK(なんばグランド花月)の周りとか近所のお店にチラシを置いてもらえるようにお願いしたり、アナログとデジタルは使い分けてたかもしれないです。とはいえ、ダイレクトにお願いしてその場で投票してもらえる『SHOWROOM』が、やっぱり一番反響がありました。

ーーそもそも、吉本坂46に入りたいと思ったのはなぜ?

小寺:吉本と秋元康さんのコラボなんて、滅多にないことですから。それに……実は私、NMB48のオーディションに落ちてるんです。その時はコンビで活動もしてたし、つぼみというグループにもいたのに、マネージャーから「受けてみよう」と言われて。でも、実際は事務所に入ってる人は通れない審査基準だったんです。なのに密着番組でも「吉本のやつが受けてる!」と取り上げられて、ネットが荒れてて……。あれは私なんですよ(笑)。

ーーああ、そんなことがあったような……。

小寺:そういった形でお騒がせしたので、秋元さんとはもう永遠に関わることがないんだろうなって思ってたんですけどね(笑)。でも、こうして5年越しに改めてチャンスが巡ってきて、座員としても小籔千豊さんのように活躍して、新喜劇を全国に広めるチャンスだなと!

ーー先ほど“つぼみ”の名前が上がりましたが、その時にアイドルとしてやり残したものもあったり?

小寺:私が所属してたころのつぼみは、女性タレントコースの卒業生というだけで、アイドルではなかったんですよ。なのに、私らが卒業してからアイドルって名乗りだして、コントもしなくなって(笑)。なので、アイドルとしては一からスタートしている感覚なんです。

ーーあら、そうでしたか(笑)。ほかにも小寺さんはメイド喫茶でのアルバイトなど、“新喜劇っぽくない”面白い経歴もありますよね。

小寺:メイド喫茶に関しては、高校の文化祭でメイド喫茶をやることになったけど、クオリティの高いものを作りたくて、勉強しに行くつもりでお客さんとして行ったらハマっちゃったんです。通ってるうちにスカウトされて働きだして、それがすごく楽しくて。厳しい家庭だったので親には言えなかったんですけど、「部活にも入ってないのに土日になったら出かける。何してるかわからへん」と心配するようになって、「着付けとかお花を学べます」って書かれたNSCの女性タレントコースのパンフレットをお母さんが持ってきたんです。場所もメイド喫茶の近くで通える動機になると思って、不純な気持ちで入学しました(笑)。

ーーNSCの近くというと、日本橋あたりですか。

小寺:そうです! でも実際はそんなに上手いこといかなくて、NSCに入ってみたら先生から「漫才せえ」と言われ、面白いエピソードを求められ……。そんなときにメイド喫茶のエピソードを話したら「それは自分の個性と思って活かしたほうがいい」と言ってもらって、今につながっています。

ーーその時の経験も『SHOWROOM』に活きているような気がします。

小寺:確かに。賛否両論あるグループということもあり(笑)、誹謗中傷に近いコメントもたまにあったりするんですけど、そこもメイド喫茶の経験を踏まえて、ほったらかしにせずにコメントを拾って取り上げたりしています。放置したまま、リスナーさん同士が喧嘩になるのは見たくないですし。その辺りの「アカンところを見つけて伸ばしていく」ことに関しては、新喜劇の経験もあると思います。

ーー新喜劇の経験もメイド喫茶の経験も、全部が活きる場所になっているわけですね。

小寺:こんなに繋がるとは思わなかったです。今までは自分の中で点でしかなかったんですけど、『SHOWROOM』がそれを線にして繋げてくれました。

ーー側から見ると、小寺さんは『SHOWROOM』を始めてから一気に勢いづいてきたし、全国的に知名度も上がっていったように思えるんです。本人としてはどういう感覚なんでしょう。

小寺:でも、最初は200人とかでしたし、「吉本新喜劇」って看板を見て物珍しそうに見てくれる方ばっかりでしたから。アイドルの配信を見る人は多いけど、お笑い枠はあんまり見られるイメージもなかったですし。だって、他の芸人の配信とか見てたら、汚い部屋で窓際にパンツ干してる人とかいるんですよ。今でもたまに見つけるんですけど、そんな配信見たいと思います?(笑)

ーー確かにそれは……(笑)。その200人から徐々にリスナーを増やしていくにあたって、自分の中で試行錯誤したことは?

小寺:私自身は全くわからない手探りの状態から始めて、徐々にリスナーさんが教えてくれたんです。

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