『OCTOPATH TRAVELER』“冒険”ではなく“旅”に出る、90年代風RPG作品の魅力
スクウェア・エニックスが7月13日、Nintendo Switch用ソフト『OCTOPATH TRAVELER』(オクトパストラベラー)を発売した。最新ハードでのリリースとなった本作だが、グラフィックは情緒溢れる2Dドット絵がメインとなっており、新鮮なゲームを求める若いプレイヤーのみならず、ファミコン時代からドット絵ゲームをプレイして育ってきたオールドゲーマーの食指も動かす一品だ。本稿では、『OCTOPATH TRAVELER』のグラフィックや作品テーマ、及びゲームシステムを踏まえながら、その魅力をもたらす仕組みを紐解く。
90年代RPG作品を彷彿とさせる
『OCTOPATH TRAVELER 』は、スーパーファミコンのRPG作品『ロマンシングサガ』や『タクティクスオウガ』といった、今なお色あせない2DドットRPGの血を色濃く受け継いでいる。同じく90年代にスーパーファミコンで発売された『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズに馴染み深いプレイヤーなら、ドット絵のテイストや発売元も相まって、より一層親しめるだろう。
加えて、本作は「HD-2D」と呼ばれる新たな表現技法を採用しており、周囲をぼかし画面中央を印象づけるミニチュア加工のようなテクニックが施されている。何気ない会話劇や戦闘シーンに至るまで、立体的に浮かび上がるドット絵キャラクターたちから、平面的なドット絵以上の存在感を感じるプレイヤーが多いだろう。このように、古きよきドット絵の表現を上手く洗練したグラフィックデザインは、本作の魅力を形成する上で欠かせない要素の1つである。
冒険ではなく旅に出発する8人の主人公たち
一方でストーリー面を見てみると、『OCTOPATH TRAVELER』はタイトル名にもある通り、登場する主人公たちは“冒険”ではなく、あくまで“旅”を念頭に置いているのがポイントだ。というのも、プレイヤーの分身となる8人の主人公は性別や容姿が違うのはもちろん、それぞれが内面に秘めた複雑なバックボーンを持ち、個人的な事情で旅に出発するからである。
例えば主人公の一人である剣士「オベリク」は、自身が仕えていた国が滅び、再び自身が戦う意味を見出すため、謎の男を探し求めてハイランド地方を旅する。別パートの主人公となる踊子「プリムロゼ」は、歓楽街で踊子として生活を送りながら、実は父親の仇を探しながらサンランド地方を巡る。他の主人公も並々ならぬ過去や秘密に沿ってストーリーが展開されていく様子を見ると、本作は群像劇の手法を取っているようだ。
ここまでの情報を整理すると、『OCTOPATH TRAVELER』の主要人物8人は「トラベラー(旅行者)」であり、大魔王を討伐する勇者でもなければ世界の存亡を憂う女神でもない。「世界滅亡の危機を救う」といった王道RPGの大義名分に比べると、スケールが小さいように見えるかもしれないが、だからこそプレイヤーは、各主人公の置かれた境遇に思いを馳せ、感情移入して豊かな体験ができるだろう。バラエティに富んだキャラクター、そして歴史背景や地理設定が各地方ごとに練り込まれている「オルステラ大陸」、この両者が欠けずに合わさることで『OCTOPATH TRAVELER』は完成する。
旅を彩るフィールドコマンド&コマンド式バトル
『OCTOPATH TRAVELER』にはいくつかの特徴的なシステムが搭載されている。まず特筆すべきは、フィールド内で主人公キャラクターが発動できる「フィールドコマンド」だろう。先述のオベリクであれば、特有のコマンド「試合」でゲーム内のNPCと戦闘が行える。
プリムロゼなら「誘惑」によってNPCを自由に連れまわし、場合によっては戦闘に参加させることも可能だ。コマンドの性能はキャラクターの性格や職業が巧みに反映されているので、高い性能を持っていても違和感がない。またRPGの根幹を為す戦闘システムは、こちらも昔ながらのRPGファンにはお馴染みのコマンド選択方式を採用。自分・敵の順番に従って「たたかう」や「アビリティ」を選択して戦闘を進める。シンプルなコマンドバトルではなく、弱点をしっかり突いて敵を行動不能にさせる・BP(ブーストポイント)を使ってコマンド性能を強化する等のアクセントが加えられているので、RPG中級者や上級者も、やりがいを持てるだろう。
ナンバリングタイトルではなく、完全オリジナルタイトルとして制作された『OCTOPATH TRAVELER』。クラシックなアートワークに内包された人々の群像劇、そしてコマンドバトルから1歩踏み込んだ自由度の高い戦闘システムにそそされたなら、手に取ってみて損はないはずだ。
■龍田 優貴
ゲームの尻を追いかけまわすフリーライター。時代やテクノロジーと共に移り変わるゲームカルチャーに目が無い好事家。『アプリゲット』『財経新聞』などで執筆。
個人的なオールタイムベストゲームは「ファミコン探偵倶楽部」シリーズ。
Twitter:@yuki_365bit
■OCTOPATH TRAVELER(オクトパス トラベラー)
発売日:2018年7月13日(全世界同時発売)
価格:パッケージ版6,800円 +税ダウンロード版6,800円 +税
ジャンル:RPG
対応機種:Nintendo Switch
CERO:「C」15才以上対象
プレイ人数:1人
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