「ゲームをめぐるエコシステムを作るために」AbemaTV ウルトラゲームスチャンネル・山内隆裕Pインタビュー
4月に開局2周年を迎え、「ネット発のマスメディア」という大きな目標を向けて、放送の規模や視聴者数を着実に伸ばしているAbemaTV。その現在地から“インターネットテレビ”の未来を探る特集の第3弾は、オリジナルのゲーム番組を放送し、eスポーツシーンを支える存在になりつつある「ウルトラゲームスチャンネル」をピックアップ。同チャンネルでプロデューサーを務める山内隆裕氏へのインタビューをお届けする。チャンネル立ち上げの経緯から、ゲームをテーマとして扱うことの難しさややりがい、エモーションに訴える番組づくりの重要性、そしてゲーム業界の未来まで、自身も大のゲーム好きだと語る山内氏に、じっくり話を聞いた。(編集部)
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ゲーム番組の制作は簡単ではない
――「ウルトラゲームスチャンネル」はゲーム専門チャンネルで、かつほぼ全てがオリジナル番組という、チャレンジングな取り組みです。あらためて、立ち上げの経緯から教えてください。
山内:代表の藤田(晋)と話していて、以前から、世の中の動画コンテンツにおいて、ゲームを中心に見る層は一定数いる、と考えていました。実況動画やライブ配信も含め、ゲームにかかわる動画コンテンツは年々増えており、スマートフォンでのオンライン対戦、PvP(Player vs Player)を採用するライトなゲームも増加していくことが見込まれるなかで、大きな需要があるのではと。ビジネス的な意味でも、例えばテレビでゲームの広告を見る機会は多く、収益化のチャンスもあると考えました。
――チャンネル開設の時期が当初の予定より少し遅れた、という話も聞きました。どんなところに苦労したのでしょうか?
山内:もともとの構想としては、外部からパッケージとして調達するコンテンツと、内製のコンテンツの割合を半々で考えていたのですが、想定していたより、世の中にゲーム番組のようなコンテンツが少なく、冒頭にあったように、9割ほどオリジナルの番組を作らなければならなかったんです。
――オリジナルコンテンツの量産がテーマになったとき、どんなことから考えていきましたか。
山内:大きくは2つあり、ひとつは、特定の作品にフォーカスして、最新情報や有名プレイヤーの対戦を見せるなど、ゲームタイトルに寄り添った番組。もう一つは、帯番組として広く情報を伝えるものです。まだオープンから5ヶ月しか経っていませんが、やはり、決まった時間に毎週観に来てもらう、というのはなかなかハードルが高く、特定のタイトルとその周辺の情報が知りたい、というニーズの方が高いのではないか、という印象ですね。
――まさに、そのようにチューニングしている最中だと思いますが、現在までの手応えはどうですか?
山内:想定通り一定の視聴者がいることがわかりましたし、またeスポーツの流れも、この数年で一気に広まりそうだという実感が得られました。反面、申し上げたように、取り上げるタイトルや企画が重要なので、番組づくりは決して簡単ではない、と気を引き締めています。
――人気の高いタレントを起用しても、必ずしも視聴者があつまるわけではないと。
山内:そういうことです。それよりも、ゲームを好きな人が感情移入して観ることができる、“エモい”番組を作るのが重要で。『PUBG』や『シャドウバース』など、人気タイトルを取り上げるなら、オンライン対戦窓口を作ると、「自分が対戦したらどうなるだろう?」といういう感情移入が深くなり、継続的に見たくなる。また、『勝ったら100万円! 賞金首』という、挑戦者が各ゲームのトッププレイヤーと賞金をかけて戦う番組には、「VIPチャレンジャー」という枠を設け、因縁のあるマッチメイクの面白さで、さらに感情を動かすことを考えています。
――格闘技イベントの煽りのような、試合を見たくなる演出ですね。
山内:はい。マッチメイクの意味が分かれば、試合はより面白くなりますから、その点を視聴者にわかるように伝えていくのが大事だなと。また、そのゲームが対戦系か、RPGかなど、ジャンルによっても視聴者が求めるものは変わってくるので、そこに合わせてコンテンツを投下することを意識しています。
――『賞金首』はプロゲーマーがどんな存在なのか、ということがわかりやすく、「eスポーツ」という少し浮ついた印象もあるかもしれないムーブメントのなかで、実際にその中心にいるプレイヤーたちの熱量に驚く視聴者も多そうです。
山内:そうですね。彼らも昔からコミュニティーを作ってきて、ようやく社会の見方が変わってきて、自分たちがやってきたことが認められつつある、ということを強く感じていると思うんです。このチャンスを一生懸命に盛り上げようとしていますし、その熱量は確かに、すごいものがありますね。
スマホで爆発的に広がるゲームの可能性
――有名ゲーム実況者や“歌い手”も含め、ネット上で人気を広げて来たMCも多く起用されていて、彼らは一般的なタレントにも増して、ゲームの魅力を広く伝えてくれる存在とも思えます。現状では、視聴者にはコアなゲームファンが多いのでしょうか、あるいは、ライト層も増えているでしょうか。
山内:どちらとも言えない、という感じですが、やはりわざわざ番組を観に来てくれるという意味では、コアなファンが多いと思います。より一般に楽しさを広げていくために、何か「ゲーム」というところだけに閉じずにはみ出していく、フックになるようなものを見つけたいと考えています。
その点では、番組MCももちろん大切なのですが、最近はアニメとのコラボレーションIP(知的財産。版権モノ)ゲームも多く、うちにもアニメチャンネルがあるので、そういった相乗効果も含めて、ユーザーにアピールしていく、ということも重要だと思います。
――なるほど。それでは、今後のゲームシーンで、どんなジャンルが盛り上がっていくだろうと想定していますか。
山内:申し上げたIPゲームもそうですし、eスポーツとして行われているタイトルもそう。また、今後スマホの技術革新がさらに進んだり、通信の面でも5Gが出てきたりすることを考えると、さらに気軽に、幅広くゲームが楽しまれるようになる可能性が広がっていると思います。スマートフォンを持っている人は、ゲーム機を持っている人よりずっと多いわけで、SNSが爆発的に広がったようなことが、ゲームにおいてもでも期待できるのではないかと。
――スマホを通じて、ゲーム史を考えても未曾有の広がりが生じる可能性があると。また、ウルトラゲームスチャンネルで面白いのは、ユーザー発信の尖ったゲーム配信が行われている「OPENREC.tv」との連携です。
山内:そうですね。OPENREC.tvの人気番組として、『TOPANGA TV』(勝ちたがりTV)があり、いつも格闘ゲームファンで非常に盛り上がっています。MCとして出演しているときどさん、マゴさん、ボンちゃんさんを始め、トップ層の格ゲープレイヤーは、本当にキャラが濃くて面白い。
――毎週観ていますが、驚くほどタレント性が高い人が多いですよね。
山内:それをもっと広く知ってもらいたいですね。ゲームのことだけでなく、AbemaTVが連携することで、彼らの人間性もしっかり伝えられればと。eスポーツというシーンをもっと伸ばしていくためには、スターが生まれる必要があると思うんです。僕らも『RAGE』というeスポーツリーグを通じてそういう存在を作っていきたいと考えており、それをチャンスと捉えて一緒にがんばってくれるプレイヤーがもっと増えるといいなと思います。『シャドウバース』のようなカードゲームや、FPS系にも面白い人がいるので、サポートできればと。