アートのハッカソン「Art Hack Day 2018」で注目 「fictionera」の2人が語る、テクノロジー×アートの最前線

アートのハッカソン「Art Hack Day 2018」で注目 「fictionera」の2人が語る、テクノロジー×アートの最前線

 2014年の開催以来、のべ237名が参加するアートのハッカソン「Art Hack Day」。「アーティストが他分野の技術者や研究者と新たな表現方法を探求するイベント」として認知されつつある。

 今回は、今年開催の同イベントで際立った印象を残した、歌謡エレクトロユニット『Satellite Young』を主宰する草野絵美氏、現代美術家・会田誠氏の実子であり、高校生エンジニアの会田寅次郎氏らによる「fictionera」に注目。バックグラウンドが異なるメンバーが生み出すアート作品の開発秘話、そして、アートを拡張するテクノロジーの可能性について、二人に話を聞いた。

テクノロジーでデザインする“アートのハッカソン”とは?

左より 草野絵美氏、会田寅次郎氏

ーーまずは、「Art Hack Day」に参加された理由を聞かせてください。

草野絵美(以下、草野):高校生の頃からファッションスナップのカメラマンをしていたり、主宰する歌謡エレクトロユニット「Satellite Young」では作詞やMV制作を手がけたり、普段からアートに接する機会が多いんです。ただ、“フィジカルなアート”をつくった経験はなくて。

 過去に一度だけ企画したことはあるのですが、忙しさにかまけて作品を完成させることができなかったんです。「Art Hack Day」のように、制作期間が決められている環境下なら、完成までやり切れるのではないかと思ったことがきっかけになりました。

会田寅次郎(以下、会田):「Art Hack Day」の文脈とは少し異なりますが、幼い頃からアートに触れる環境で育ったので、自然とイベントを知りました。僕はプログラマーなのですが、親からの紹介もあって参加した形になります。

ーーお二人とも初めての参加だそうですが、制作活動を通じて苦労したことはありますか?

草野:「Art Hack Day」では、参加申し込みから選出されたアー ティストや技術者、そして研究者が「その場で結成したチーム」で、「短期間」でアート作品を制作します。

 バックグラウンドの違う人たちと作品を作るのは簡単なことではありません。ただ、それが「Art Hack Day」の醍醐味でもあるんです。それぞれの知見を集約すると、一人では作れない作品が生まれます。私はコンセプトメイキングが得意ですが、実際に作品を形にするのは苦手です。寅次郎くんを始め、さまざまな人の協力があって「Singing Dream」を作り上げることができました。

「Fictioner」は、生命の宿ったカラオケマシン「Singing Dream」を作成。近未来に歴史的資料して保管された80年代製のカラオケマシンに、生命が宿った世界を表現した

会田:そもそも「作品を作る」って非常に大変なんです。いわゆるハッカソンは100メートル走なんですけど、制作期間が長い「Art Hack Day」は、フルマラソンを走っているイメージ。草野さんが言っていたように、バックグラウンドも違えば、ベクトルの方向性も違うメンバーが揃います。僕にとっては初めての経験でしたね。

会田寅次郎が語る、テクノロジーとアートの境界線

ーー「Singing Dream」は草野さんがコンセプトメイキングを担当されたそうですが、どのようにして着想を得たのでしょうか?

草野:私はSF的な世界が好きなんです。「Satellite Young」も、いわばフィクション。80年代のイメージを、現代のテクノロジーで表現しています。そうした懐古趣味が好きなので、80年代製のカラオケマシンをメインテーマに据えたんです。

 寅次郎くんは、私の描いた世界観を、Googleの開発した人工知能「Deep Dream」で実現してくれました。

ーー会田さんはいつからプログラミングを始めたんですか?

会田:物心ついた頃にはプログラミングをしていました。母がパソコンを膝の上に置き、動画編集をしている姿が日常的だったので、パソコンに触れるのが早かったんです。気づいた頃にはプログラミングの解説書を古本屋で購入して読んでいました。以来、情報をインターネットで検索するようになり、のめり込んでいるうちに現在に至ります。

草野:寅次郎くんは技術をメインに扱っていますが、アート文脈でも活躍しているんです。今年度のメディア芸術祭では、アート部門で新人部門を受賞しています。ただ、「今後はアートではなく、技術にフォーカスしたい」と言うんです。

会田:新人賞をいただいた「I’m In The Computer Memory!」は、絵画の延長線上の作品として制作しました。「技術を絵筆のように使っている」というか…。

僕は、ビジョンに紐づく作品が好きなんです。それがアートとして捉えられることもあれば、技術として捉えられることもある。つまり、どちらも究極的には同じなんです。ただ、個人的には技術者として生きていきたいと思っています。

ーー「究極的には同じ」アートと技術で、あえて技術を専攻するのはなぜですか?

会田:技術によって、旧来の法律や制度がガラッと崩れることに興味があるんです。ブロックチェーン技術が誕生したように、新たなテクノロジーは社会の仕組みを陳腐化させます。そうした可能性を追求したいと思っているんです。

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