コーチェラ、トゥモローランドーーチケットを受け取った瞬間に始まる、海外フェスのイベント体験
Coachellaのチケットはサービス精神満載
Coachella Valley Music and Arts Festival(以下Coachella)は、売り上げが2017年で1億1460万ドル(約129億円)を達成し、世界で最も成功しているフェスであると言える。最も安いチケットが429ドル、発売60分で完売するなど、チケット価格の高さと入手が困難なことでも知られているが、このチケットの争奪戦を勝ち抜いた人は、開催1カ月前に届くチケットボックスの豪華さに驚かされるに違いない。そして中身を見ながら思わず笑顔になるだろう。
まずYouTuber、Elexiss ElleさんがアップロードしたCoachella 2017のチケットアンボックス動画を見てみよう。
届いた箱は、やがて来るフェス当日の多幸感を想起させるデザインで、外側が夕暮れの会場風景、そして箱内側は夜景がプリントされている。中身はチケットとなるリストバンドやシャトルバスのチケットの他、ステッカー、会場案内や出演者情報などが掲載されているガイドブックなどが同封されている。
ガイドブックにはフェスに持って行くと便利な持ち物リストもあり、来場者がそれを見ながら準備ができるように案内されている。それはきっと遠足の準備のようにワクワクする時間だろう。自宅にいながら、もうフェスは始まっているのだ。
ハードカバーの年間ダイアリーが同梱されていることも、このイベントの主催者が来場者にどのような体験を提供したいと考えているかを示唆している。各ページの左サイドにはアーティスト情報が掲載されており、ページをめくるごとに楽しかった思い出と次のフェスへの期待感をふくらませるだろう。
さらにcoachella beastと呼ばれるマスコットを模した組み立て式のペーパークラフトもある(親切にも公式Facebookの3DCG動画で解説されている)。3枚入っているが、何とそれぞれがリバーシブルなので、好きな方を表にして組み立てることができる。
それだけでは終わらない。動画の7:50以降を見てほしい。チケットが入っていた箱を、専用アプリを立ち上げたスマホカメラ越しに見ると、音楽とAR動画の再生が始まり、ボックスが小さなcoachellの会場に変わる。まさに手のひらサイズのパラダイス!
明らかにCoachellaの主催者は、フェス当日だけではなく、チケット到着からフェス当日を指折り数えて待つ時間、そしてさらに来年のフェス開催まで来場者たちが過ごす時間をデザインしている。参加者の生活や人生にCoachellaの楽しい体験を溶け込ませることこそが、彼らの販売戦略なのである。
Tomorrowlandのチケットは非日常へと誘うパスポート
毎年7月に開催されているTomorrowlandもまた、毎年40万枚のチケットが40分や1時間で完売する程の人気イベントだ。Tomorrowland 2017のチケットは、何と箱自体がオルゴールになっている。ベルギーで開催されるこのフェスのビジュアルイメージは、サーカス会場や古い書棚、古城のようなステージデザインとともに、ハリーポッターを想起させるような西洋的なファンタジーとクラフトマンシップが融合した、独特な世界観を表現しているという点で一貫している。オルゴールを再生して箱を開けると、古いタブロイド紙のようなデザインのガイドや、小引き出しの中にあるレザーブレスレット型のリストバンド(これがチケットだ)を手にすることができる。きっと毎年行っている人はチケットボックスをコレクションにしているはずだ。
ベルギー以外では、米国でTomorrowWorld(2013〜2015年)とブラジルでTomorrowland Brasil(2015〜2016年)が開催されてきたが、そのブランドイメージがぶれることはなかった。
Tomorrowland Brasil 2016のチケットは歯車がデザインされた箱に入っており、ファンタジー映画に出てきそうな鍵で正面の歯車を動かすことで扉を開ける。そう、箱はTomorrowlandという世界の断片でありミニチュアなのだ。Coachellaのチケットボックスとは異なり、中身はごくシンプルだが、箱という扉を開ける体験が、非日常に誘うことで、Tomorrowlandの体験が始まる。