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『さよならの朝に約束の花をかざろう』息をのむ背景の美しさーー美術監督・東地和生の手腕

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 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『心が叫びたがってるんだ。』といった人気作品の脚本や構成等で知られる岡田麿里が、初めて監督を務めたことで話題となっているP.A.WORKS制作映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』。人々の出会いと別れを描いた“泣ける”ストーリーはもちろん、息をのむような背景の美しさからも目が離せない名作だ。

 アニメ制作においては一般的に、動きのあるキャラクターなどのイラスト部分を「作画」と呼び、それ以外の背景部分は「美術」と呼ばれている。また、背景が作られるには「美術設定」と呼ばれる第一段階があり、まず物語の舞台となる建物などの設計図(設定画)が描かれてから、それをもとに美術監督が背景に色をつけていく。

 本作で美術監督を務めたのは、東地和生。名古屋芸術大学で油絵を専攻後、アニメーションの背景会社で『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』や『パプリカ』などの美術監督補佐を経て、『Angel Beats!』や『花咲くいろは』といったP.A.WORKS制作のアニメ作品でも数多く美術監督を担当してきた。光と影、そして空や海の眩しい青色の描写が特徴的な東地の背景美術は多くのファンの心を掴み、2017年には、『Earth Colors東地和生美術監督作品展』と題された背景美術の展覧会も開催されたほどだ。

 石川県の湯涌温泉を舞台にした『花咲くいろは』や、三重県熊野市がモデルとなっている『凪のあすから』など、綿密な取材をもとに地方の風景を郷愁たっぷりに描くことの多いP.A.WORKS×東地作品。だが、本作はファンタジーということで、冒頭の山辺のシーンから異国情緒溢れる風景で、これまでの作品とは異なる壮大さが感じられる。東地自身、ありのままの土地を描くよりも、「(その土地の)空気に触れて、あとは想像で描く…そのほうがリアルなんです」「妄想したものが入ってないとつまらない絵になる」と、過去のインタビューで語っているが、本作にもそうした“妄想”がたっぷりと織り込まれているのが伺える。

 同時に、背景美術について「全ては光と影である」とも語る東地。他作品でも太陽のキラキラとした光条や星が瞬く美しい夜空を多く描いてきたが、本作では特に、反射や明暗の使い分けが妙であった。今回も水場のシーンがしばしば登場するが、水面にくっきりと反射した光や風景からは、水の透明度の高さのみならず、純朴なキャラたちの心の透明感も読み取ることができる。また、陰鬱な場面で描かれがちな「夜の雨」のシーンでも、地面の水たまりに街灯がキラキラと反射することで、一転してワクワクするような幻想的な雰囲気が醸し出されている。

 明暗の使い方でいえば、結婚パレードからレイリアを助け出そうとするシーンでは、マキアを拒んだレイリアが建物の陰へと足を踏み入れ、光に照らされるマキアと陰に立つレイリア、ふたりの心情が視覚的にもわかりやすく対照的に描かれている。ラストシーンでも、暗い部屋の中でエリオルの顔に一筋の光が差し込むさまは、どこか宗教画を彷彿とさせるような神々しさも感じられた。

      

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