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ポリゴン・ピクチュアズ×コミックス・ウェーブ・フィルム 代表対談 テクノロジーで変化するアニメ界、海外市場に未来はあるか?

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  本特集の第一弾として、3DCGアニメーションの雄=ポリゴン・ピクチュアズの塩田周三代表と、新海誠監督作品を中心に、高品質の2Dアニメーションを送り出し続けているコミックス・ウェーブ・フィルムの川口典孝代表による対談を企画した。作品も制作体制も好対照に見える両社だが、テクノロジーによって業界の構造が変化していくなかで、ユーザーに作品を届け、マネタイズする上でのビジョンには、「体験」を重く見るという共通点があるようだ。アニメーション業界の現在を知り、未来を占う特別対談をお届けする。(編集部)

左、川口氏。右、塩田氏。

アニメ業界をリードする2社の、共通点と相違点

――2D、3DCGと主戦場は違いますが、同じくアニメーション業界で独自の立場を築いている2社の代表として、まずはお互いをどう捉えているか聞かせてください。

川口典孝(以下、川口):ポリゴン・ピクチュアズさんに対する僕のイメージは、“北米を果敢に攻めている日本唯一のアニメーション制作会社”というものです。アメリカにどっしりと構えて、しっかりとポジションを取られている。ハリウッドの人と話しても、「shuzoはしょっちゅうアメリカに来てくれている。なぜ、他の日本企業は来ないのか?」と言われたりするんですよね。僕ら2Dアニメの業界では、アメリカと共同作業をすることもほぼないし、受託で何かを作ることもない。でも、塩田さんはずっとそれをやってこられて、ノウハウと技術を蓄積されている。

 その上、最近では『GODZILLA』などオリジナルのアニメーション映画も制作されていて、勝手に親近感も持っていました(笑)。オフィスも、いわばアニメ制作の聖地である三鷹や吉祥寺ではなく港区にあって、聖地にどっぷりとつかっていないのも、うちと近いかもしれないですね。

塩田周三(以下、塩田):おっしゃるように、僕は製造業、川口さんは商社と、外側からアニメ業界に来たという共通項もありますね。ただ、僕は川口さんのように直球勝負の熱い賭け方は参考にしたくてもできないのかな、という気もしているんです。

 ポリゴン・ピクチュアズは「仕組み」を中心に動いていて、「集団力」という言葉を価値として打ち出しています。他方でコミックス・ウェーブ・フィルムさんは新海誠監督を中心に、アーティストセントリックな方向で着実にファンを開拓し、『君の名は。』で大ブレイクしてさらに飛躍するという、まったく違うアプローチをしている。そこに興味があって、ぜひお話ししたいと思っていたんです。

川口:いや、塩田さんは熱くアメリカ本土を攻めているじゃないですか。僕の場合は新海誠と出会ってしまっただけで、あれを見たら誰でも「担がなきゃいけない」という気になりますから。あの才能、人格にどんどん人が吸い寄せられて来て、うちのスタッフもみんな、新海が大好きでやっているんです。

塩田:そういう強力なクリエイティブを核にして集まっている会社は強いと思うし、目利きと賭ける力がなければ難しい。川口さんは熱心な営業をされているし、インディーズバンドが全国を回るみたいにして地道に、丁寧にファンと向き合ってこられていて、その成果が上がっているのがすごいなと思います。

 テクノロジーによる業界の変化、という意味では、ネットの動画配信があり、コンテンツを享受することが簡単になりましたが、うちとしては、そのなかでどうマネタイズするかを課題として捉えていて。体験経済への移行ということを考えても、ファンをよろこばせる体験を作ることの重要性は非常に感じますし、それをひとつ実践しているのが、コミックス・ウェーブ・フィルムさんだと思いますね。

移ろいやすくなった視聴者の関心をとどめるために


――ユーザーが「体験」を求めるようになっていくなかで、コミックス・ウェーブ・フィルムはそれに応えてきた、というお話ですが、川口さんはいかがですか?

川口:確かに、かつては新海と全国すべての上映館に舞台挨拶に行き、僕が司会をして、サイン会をしたりしていましたね(笑)。中国でも自主的にイベントを開催していたし、それが『君の名は。』で火がついて、現地で興行収入95億円のヒットになった。突然ブレイクしたわけではなく、そうなるように種まきをしてきた、ということは言えると思います。韓国でも30億円のヒットになって、政治がもめていようが、芸術やエンターテイメントはそれを超えるんだ、と思えて本当にうれしかったですね。

 ネット配信について言うと、ポリゴン・ピクチュアズさんはインディペンデントでありながら、Netflixのような巨大な企業とも対等に交渉されていて、そこがすごいと思っています。それによって、作家たちの意思が世界に直結して、通じやすくなっていくというか。これは、テクノロジーでアニメ業界が変わる、という意味ではいい例になるかと。

塩田:Netflixのようなサービスが出てくることにより、作品が届きやすくなった反面、コンテンツの総量が増え、また視聴形態も次々と別の作品に飛んでいくという形になっているので、関心の移ろいが非常に早くなっています。だから、関心を作品にとどめてもらうことだったり、あるいはライブやイベントに誘導するなど、われわれも事業を成立させるための方法をさらに考えなければいけないと思うんです。DVD/Blu-rayの販売モデルも、よほどの付加価値を提供しなければ非常に難しいですしね。

川口:おっしゃるように、サブスクリプションサービスによって人の関心が移るスピードは上がっていますし、その流れのなかで、ネタがめまぐるしく切り替わっていく『ポプテピピック』のような作品も出てきていて、これも非常に面白いと思っています。ただ一方で、量産できないもの、崇高な物語に美しい映像をまとわせた作品も求められていることは実感していて、しっかり助走をつけていい作品を出していく限りは、可能性はいくらでもあると考えているんです。例えば、ネット配信でこれまでリーチできなかった国の人々にも作品が届きやすくなりましたし、中国を見れば10億人規模の市場がある。僕としては、まずは多くの人に観てもらえるのがうれしいし、お金は後からついてくると思っています。

塩田:高画質や視聴の手軽さも含めて、「機能」は当たり前の世界になっていますから、エモーションがくすぐられるかどうかが勝負になっていて、それをどう設計していくか、ということを考えなければいけないと思っています。僕は貧乏性で、「お金は後からついてくる」とは思えないので、こうやっていろいろと考えてしまうのですが(笑)、川口さんを見ていると「頭で考え過ぎや。もっと体を動かさなあかんな」と思わされますね。

川口:そこはポリゴン・ピクチュアズさんの方が、会社の規模がうちより5倍くらい大きくて、抱えているスタッフさんが多いから、なかなか難しいですよね。2Dのアニメ業界は何かあればみんなで協力し合えるシステムになっていて、例えば、庵野秀明さんが代表を務めるカラーだって、そんなに大きな会社ではない。その点、ポリゴンさんはすべて内部で作れるようにしていて、失敗できない、という部分が強いでしょうから。

――明確な分業による「工場型プロダクション」というポリゴン・ピクチュアズのシステムは、経済メディアでも話題になっていますね。

塩田:実は新しいシステムではなく、発展の途上であるということの裏返しなんです。川口さんがおっしゃるように、一般的なアニメの世界はワークフローが確立されていて、練りに練られた振る舞いがあるから、会社が違ってもそれが共有されている。だから、いざとなったら協力し合えるという柔軟性があるんです。もっとも、それがすべての面でいいことなのかは別の話で、新しい製作技術やテクノロジーが取り入れてさらに合理化が進められないのか、という見方もできるとは思いますが。

 一方で、CGアニメーションにおいては、90分以上の映画が初めてできたのがたった20数年前の1995年で、特に日本では「量産する」というニーズがそもそもなく、CGアニメ不遇といえる時代が長く続いてきました。だから、われわれが作りたいものを、作りたいように作るためには、内部にすべて抱えるしかないんです。もう少しさまざまなテクノロジーが進化し、かつ業界全体としてCGアニメ制作に対する理解が進んできて、協業が可能になれば企業としてもう少しスマートになるかもしれない。クラウドがさらに進化して、リモートでも同じ生産性を発揮できるのであれば、そちらのほうが新しいですよね。

 考えてみれば、アニメ業界ももともとは、東映動画などの大企業がスタジオを構えて、ひとつ屋根の下で制作をしていました。われわれもそういう段階だということです。

川口:ただ、同じ場所で一気通貫で作る、ということのメリットもありますよね。

塩田:そうですね。やはり人がなすことですし、顔を見合わせながら、目の届く範囲で、何かあったら声をかけられる、ということは重要で。また、CGでアニメーションを作るのは、まだまだコストがかかるんですよね。だから、集中管理でテクノロジーを日々、進化させていかなければいけない。まだまだ稚拙な表現にしろ、生産性にしろ、改革すべきところが多いので、分散させているとまったく間に合わないんです。

      

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