『君の好きは無敵』最終回直前に描かれた愛の危うさ “好き”は本当に無敵だったのか

松本若菜と佐野勇斗が共演する『君の好きは無敵』(TBS系)が、9月15日に最終回を迎える。セミファイナルとなる第9話は、これまで疑うことなく受け入れてきた「好きは無敵」というタイトルを、改めて見つめ直す回となった。
好きなものがある人は強い。その気持ちは、周囲からどれだけ否定されようと、自分らしく生きていくための力になる。けれど、そもそもどれほど強く思えば「好き」と呼べるのか。そして、その好きは本当に“無敵”なのだろうか。

シニカルモルコの権利譲渡をめぐるプロポーズコンペで、大三島(本郷奏多)の策略にはめられた杏奈(松本若菜)と瀬尾(佐野勇斗)。大三島の悪事が生放送で明るみに出たことや、プールに落ちかけたモルコを瀬尾が身を挺して助けたことで擁護する声も上がったものの、2人への批判は収まらない。チュエラのぬいぐるみは返品が相次ぎ、万博アンバサダーへの就任にも暗雲が立ち込める。
炎上を自分一人に集約し、その自分が辞めることで会社を守ろうとした杏奈。しかし、瀬尾はもちろん、廣瀬(藤井隆)や佐々岡(小野花梨)も、彼女の退職を望まなかった。それどころか瀬尾は、「おコンと一緒じゃないと意味ないから」と万博アンバサダーを辞退。「俺のそばから離れないでほしい」と、改めて杏奈にプロポーズする。
ところが、会社の資金繰りはすでに危機的な状況に陥っていた。杏奈を会社に残すため、今度は廣瀬と佐々岡が自ら退職することを決意する。そんな仲間たちを取り戻そうと、杏奈が出資者として連れてきたのは、よりによって大三島だった。
瀬尾にとって大三島は、自分の子も同然のまんぷくもる子を独断でまったく違うキャラクターに書き換えた仇。当然、2人の交渉は一筋縄ではいかない。とりわけ印象的だったのは、瀬尾から「お前あれだろ、好きがないんだろ?」と言われた大三島が、「そんな奴、この世に一人もいない!」と声を荒らげる場面だ。

大三島にも、好きなものはあった。高校時代には芝居、大学時代にはゴスペル、社会人になってからはおでんに興味を持ったが、同じ好きを持つ人々の圧倒的な熱量についていけず、次第に好きだと言えなくなっていった。いつだって、好きレベル90以上の人たちが、自分の小さな好きを言えなくする。筆者も新たに“推し”ができるたび、ほかのファンとの熱量の差を目の当たりにし、「この程度でファンを名乗ってもいいのだろうか」と引け目を感じるので、大三島の訴えには思いがけず胸を突かれた。まさか、これまで単なる“悪役”だと思っていた大三島に、共感する日が来るとは。
やがて大三島は、数字という好きとは別の物差しで評価される世界にしがみついた。そこであれば、誇れるほど夢中になれるものがなくても自分の価値を証明できる。だからこそ、好きなことのためなら後先を考えず突き進む瀬尾を認められなかった。瀬尾を認めれば、再び好きなものを持たない空っぽな自分に戻ってしまうように感じたからだ。




















