『VIVANT』別班✕テントの共闘で物語が一気に加速か 乃木が“仲間”を選んだ意味

『VIVANT』17話、乃木が“仲間”を選んだ意味

「仲間を見殺しにするってことは、お前も殺害に加担しているのと一緒だぞ」

 『VIVANT』(TBS系)第17話が9月6日に放送された。冒頭5分の前話の完璧なダイジェストの続きは、死んだと思っていたリュウ・ミンシュエン(堺雅人)の野崎(阿部寛)に対する尋問シーンで始まる。

 乃木(堺雅人)が、野崎から東条(濱田岳)への入金額と言葉の意味から別班員5人の監禁場所を解読した同じ頃、リュウも野崎の暗号を読み解いた。瓜二つの乃木とリュウ。しかし、中身は対照的である。リュウは野崎がシンシーと公安の二重スパイであると疑い、拘束したドラム(富栄ドラム)に銃口を突き付ける。野崎の表情は変わらないように見えたが、引き金を引く間際に野崎は口を開いた。

 再会を喜ぶドラムは、野崎が裏切っていなかったことに安堵しつつ、自分たちは殺されるのかと尋ねる。野崎の答えは「奴らは俺らを殺せない」。ハン(宮下今日子)は、国際テロ組織「テント」に関する情報を収集しており、重要人物である野崎とドラムを始末するわけにいかない。

 野崎とドラムの絆について、ドラムに食事を食べさせる野崎を見ていると、野崎は飼い主のようであり、ドラムはまるで忠犬のようである。2人の関係は単純な上下関係や友情というより、ある種のスチュワードシップに近い。人間に対して冷徹で、愛国心にあふれた野崎がドラムを見捨てないという事実は、今作における人間性の所在を示すものといえる。

 そんな2人の絆を試すエピソードが描かれる。大食漢のドラムは野崎の分の食事を食べてしまうため、別々の独房に拘束される。ドラムには山盛りの食事が出されるが、看守は野崎の目の前でわざと皿を落とし、野崎は空腹のまま放置される。野崎は水も与えられずに憔悴。その様子を目にしたドラムは、自身の食事を野崎に与えるように求めるが、聞き入れられなかった。野崎に肉体面で負荷をかけ、ドラムには心理面でジレンマが生じる拷問といえる。

 黒須(松坂桃李)たち別班員5名の救出がどうなったかというと、野崎の潜入がバレたことでシンシーは警戒網を張る。黒須たちの監視警護に当たっていた兵士200人を別の村にある収容所に移動させる。しかし、これはフェイクであり、料理人の証言から黒須たちはシャキ城から動いていないと考えられた。だが、厳重な監視下に置かれた別班員の奪還は困難を極める。黒須を拉致した精鋭を相手に突入すれば、別班員の何人かは捕らえられ、機密情報が漏洩するだろう。司令部は奪還を諦め、5人を毒殺することを決定する。

 おそらく第2シーズン最大の決断となったのが第17話だった。乃木にとって規律は絶対であり、上層部の命令に従うことは任務以前の問題だ。だが、乃木に葛藤が生じる。それは、別人格Fとの対話で、内心の葛藤である。「規律を律することで組織は統率される。それを乱せば(中略)国家に危機が及ぶ」。骨の髄まで叩き込んだ原則を反復する乃木の思考は、訓練によって高められたミッション遂行の鉄の掟だ。そこに私情を挟む余地はない。

 けれどもFは異論を述べる。記事の冒頭に引用した台詞は乃木の翻意を促すものだ。別人格であるFは乃木の深層心理であり、社会化される以前の本能だ。本音ベースのFは直感に従って判断するが、乃木が抑圧してきた本心を代弁している。

 黒須を救うべきである。なぜなら黒須は乃木にとって「弟のような」存在だからだ。黒須を死なせることは、自分の一部を死なせることだ。

 こうした葛藤を、精神世界での別人格との対話、上司で同僚である長野(小日向文世)とのやり取り、そして別班司令の櫻井(キムラ緑子)との対峙を通じて段階的に描写することで、乃木の心理的な変遷と葛藤が解消していく様子をビジュアルで示しており、意図が明確に伝わる演出だった。野崎-ドラムの絆を先出しすることで、「仲間だから救う」という普遍的なテーマを補強する構成も効果的だった。確固たる意志を持つ個人が試練を乗り超える瞬間が、そこでは描かれていた。

 第2シーズンはここまで情報量に圧倒されていたが、ドラマとして一気に面白くなってきた。すべてはこのためだったと思わせるアクセルの踏み込みようである。別班員奪還作戦にはテントを率いる義兄弟のノコル(二宮和也)も加わり、乃木と仲間たちによる命がけのスペクタクルになるだろう。櫻井が発した「禍福は糾える縄の如し」のように、天運が乃木に味方するかは神のみぞ知る。

 この他に、核融合とテントのつながりや、シンシーに内通した公安捜査員の素性、第1シーズンで暗示されたジャミーン(本間さえ)の能力など、今後の展開につながるヒントが第17話では見られた。コーカサス地方を担当する黒いヴェールの現地別班員(レイヤマダ)と、中国語が話せてカンフーに長けた長野直属のエージェントのゲルンなど気になる存在も多い。まだ見逃している人、追いつくなら今ですよ。

■放送情報
日曜劇場『VIVANT』第2シーズン
TBS系にて、毎週日曜21:00〜21:54放送
出演:堺雅人、阿部寛、二階堂ふみ、竜星涼、山中崇、Barslkhagva Batbold、Tsaschikher Khatanzorig、富栄ドラム、林原めぐみ(声の出演)、内野謙太、花岡すみれ、本間さえ、二宮和也、井上順、林遣都、内村遥、井上肇、市川猿弥、市川笑三郎、平山祐介、珠城りょう、西山潤、宮下今日子、Tanapak Jongjaiphar、濱田岳、坂東彌十郎、小日向文世、キムラ緑子、松坂桃李
原作・演出・プロデュース:福澤克雄
プロデューサー:飯田和孝
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/VIVANT_tbs/
公式X(旧Twitter):@TBS_VIVANT
公式Instagram:tbs_vivant
公式TikTok:vivant_tbs

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